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若き覇王に、甘くときめく恋を

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若き覇王に、甘くときめく恋を

200 - 第五章 彼と共に育む、真愛の形 EP.3「温かに育む、家族の形」⑤

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2025年06月18日

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──貴仁さんをモデルにした香りなら、サンダルウッド(白檀)と、甘いバニラのセットは欠かせないよね?


作業デスクで、かつてのデートでのブレンドを思い出しながら、香料の調香チャートを作っていく。


後は……ハニーはちみつの香料をプラスして、締めにはムスクも……。


膨らむイメージに、わくわくしつつ「オリエンタル・プリンス」の構成を考えていると、あっという間に時間が過ぎた。


気づけばお昼休みになっていて、根を詰めた体を席でぐーっと伸ばしていると、


唐突に、「いっしょに昼めしでもどうだ?」と、父からSNSに呼び出しが入った。


急にどういう風の吹きまわしでと勘ぐる私を尻目に、


「うまい店を知っているんだ」


父が嬉々とした軽い足取りで、先を歩いて行く。


お店に着き、「……どうしたの? 突然に食事をだなんて。もしかして私の手がける香水が気になっているとか?」他に父が気を揉みそうなことも特には思いつかなくて、いぶかしげに尋ねると、


「え、あ、いや……違う。香水のことは、おまえを信頼しているからな。うん、だからそうではなく……まぁ別に、た、たまには食事くらいはいいだろう。ハハ」


などとごまかして、しどろもどろに答える父を、さすがに怪しくも感じる。


「……何よ、言いたいことがあるなら、ちゃんと言ってよ、お父さん」


そう詰め寄ると、父はまた「いや〜まぁ、たまにはおや水入らずも、いいだろうが」と、同じようにもくり返して、あからさまな苦笑いを浮かべた。


「もうー、お父さんてば!」


全く要領を得ない父に、しびれを切らして、パンッと両手でテーブルを叩くと、


「おっ、おう!」と、反射的に声を上げて、


「ああー……その、なんていうかだな……貴仁君とは、上手くやってるのか?」


いかにも苦しまぎれといった風で、そんな問いかけをひねり出してきた。


「……それが聞きたかったの? もちろん上手くは運んでるけど……」


怪訝さを拭えず、もやもやとした気持ちで答えた私に、


「そ、そうか。それならいいんだが……」


どうにも歯切れの悪い返事をして、グラスの水をゴクリと飲み込むと、


「……やぁその、結婚してもうどれくらい経ったのかと思ってだな」


またしても、ごく他愛のないことを訊いてきた。


「もう一年ぐらい経つかな」


「一年か、ならそろそろ……」


そこまで言いかけて、父は失言でもしたかのように大げさに咳払いをかまして、口を手で押さえた。


「そろそろって……?」


一体何のことだろうと聞き返すと、


「い、いや何でもないっ!」


相変わらずなオーバーアクションで手を振って、


「いや何、そういうことはかすようなものではないと言うし、あーっと、つまり二人が幸せなら、父さんもそれで幸せだからな!」


そう無理に話をまとめる父に、私の方は何が何だかまるでわからなくて、首を傾げるしかなかった。


「いいいい、わからんでいいから。私の話はこれだけだから!」


父が、食べ終えた食器をあたふたとせわしない様子で片付ける。


「これだけって、まだ何も話してない気がするんだけど」


ますます首を傾げる私に、


「では、吉報を待っているからなっ!」


父は満面の笑顔でそう口にすると、テーブルの伝票を手に、そそくさと行ってしまった。


「吉報って……何の?」


一人取り残されて、私の頭にはハテナマークが幾つも浮かんだ──。

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