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ストーリー…学パロ
晴人+桃香×鼓一朗
イジメあります
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【学園BLシリーズ 第1話】
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教室の中はざわざわしていた。
昼下がりの窓から差し込む日差しが、少し熱く感じられる。
「うわ、見て見て、また鼓一朗の靴ばら撒かれてる!」
クスクス笑う声。
「人気者はつらいな~」
「は?」
誰かがそう言うと、同時に桃香がキレる合図の声もした。周りの数人がスマホを取り出した。
鼓一朗は、明るくて目立つタイプだ。
だからこそ、妬みも多い。嫉妬もある。
その中心に彼がいる。
「ああ……またか」
鼓一朗は笑顔を作った。だが、その笑顔の裏には疲れが滲んでいた。
「なにしてんの?」
教室の奥から響いたその声に、ざわめきは一瞬で凍りつく。
振り返ると、桃香が立っていた。
肩を震わせ、まるで今にも爆発しそうな勢いで怒っている。
「大丈夫だよ、ほんのしたイタズラだし…」
「大丈夫じゃない!それを“いじめ”って言うんだよ!」
桃香の声は震え、しかし凛としていた。
「なんでそんなことをするの?なんの得があるの?人をイジメてさ」
周りの生徒が顔を背け、居心地悪そうにする。
鼓一朗は桃香の隣で、震える手を握られていた。
その手の温もりが少しだけ、彼を救っていた。
あまりの桃香の声の大きさに隣のクラスの晴人が来た
そこへ、晴人が静かに近づく。
「桃香……落ち着け」
晴人は優しく言った。
「俺も昔、いじめられてた。あいつらと同じように」
「え?」
目を閉じ、過去の傷を思い出すように。
「だから……だから、今は俺たちがそばにいる」
鼓一朗の靴を拾い、丁寧に汚れを拭うと晴人。
その動作は自然で、でも確かな温かさがあった。
「あのね、人は傷つけらたことは一生覚えてるの!人をイジメて、笑って、忘れて、なんでお前達がさ」
桃香は目に涙を浮かべていた。
彼女はただ感情に任せて怒りを爆発させ、時に泣くこともある。
けれど、それは誰よりも真剣な愛情の証だった。
「こいちゃん、泣いていい。泣けないくらい頑張ってきたんだからさ」
鼓一朗はゆっくりと、しかし確かにその言葉に心を解かされていった。
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放課後、空っぽになった教室。
鼓一朗は保健室に行かされ、残ったのは晴人と桃香。
机の上には、鼓一朗の汚れた上履きと、拾い集められたプリント類。
桃香はそれを見ていた。
「……っ、はあああああ!!!」
大きな声が教室に響く。
「なんでっ、なんで、あんなのが許されてんの!?……クソふざけんな……!」
机を叩いた手が痛そうに震える。
けど、桃香は止まらなかった。
「笑ってたよ、周り……なんであんなに、無関心なんだよ……!」
頬に涙が伝う。
「こいちが……どれだけ……頑張ってんのか、知らないくせに……!」
バン、とまた机を叩いた音と同時に、涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。
その肩に、そっと手を置いたのは、晴人だった。
「……泣いていいよ」
その一言で、堰が切れたように、桃香は泣きながら言葉を吐き出した。
「わかってるよ……わたしが怒鳴ったって、変わらないかもしれないし、…悪化するかもしれないのに……っ、悔しくて、情けない……!」
晴人は黙ってその背をさすった。
彼女が怒りに任せて泣く姿は、まるで自分の過去を見ているようだった。
「情けなくなんかないよ」
晴人の声は、静かで優しかった。
「泣いたっていい。泣いたって……守りたかったんだろ?」
桃香は顔を伏せ、ぎゅっと唇を噛んだ。
その後、夕焼けの中を3人で歩く帰り道。
鼓一朗は、何も言わずに2人の少し後ろを歩いていた。
空気は落ち着いているのに、桃香だけがどこかぎこちない。
「……さっきは、ごめん」
ぽつりと呟いた。
「怒って、泣いて……なんか、自分でも、情けなかった…
そして、そんなこと1回もなかったのにあったように言って、気分悪かったよね」
桃香は無理矢理あげた口角で言った
晴人が歩を緩めて、桃香と並ぶ。
「俺は……カッコよかったと思ったよ」
「え?」
「俺にはできなかったから。あんなふうに、怒って泣くこと。怖かったからさ」
晴人は少しだけ笑った。
「桃香のそういうとこ、救われてるやつ、絶対いるよ。……鼓一朗とか、さ」
後ろを歩いていた鼓一朗が、少し照れくさそうに笑った。
「俺、今日ちょっと泣きそうになった。でも……止めてくれて、ありがとな」
桃香の頬が少し赤くなる。
「ありがと、これからも救えるように頑張るよ」
「「うん!」」
3人の笑い声が、夕焼けの坂道に溶けていく。