テラーノベル
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葛葉視点
正直、軽く触れるだけのつもりだった。
キスなんて、勢いでやっちまったようなもんだ。
……なのに。
(やっべ)
ローレンが固まったまま動かねぇのを見て、心臓が一気にうるさくなる。
あー、これ絶対引かれたやつだ。
努力嫌いだけど、こういう空気に耐えるのはもっと嫌い。
「……ローレン?」
名前呼んだだけで、びくっと肩揺らすの可愛すぎだろ。
やめろ俺、三年だぞ。
「次は……俺から行くから」
その一言で、全部吹っ飛んだ。
(は? 何それ)
挑発?
それとも本気?
思わず笑っちまったけど、内心は完全に負けてた。
「言ったな?」
余裕ぶって言ったはいいけど、
ローレンが本気で来たらどうすんだよ俺。
それから数日、廊下ですれ違うたびに目が合う。
前みたいにすぐ逸らさねぇ。
むしろ、じっと見てくる。
(圧が強ぇんだよ、ローレン)
昼休み、ローレンがクラスメイトと話してるの見て、
なんか無性にイラっとした。
(……何で俺が)
俺、独占欲とかそういうの嫌いなタイプだと思ってた。
なのに。
放課後、我慢できずに呼び止める。
「ローレン」
「はい、くっさん」
当たり前みたいに名前呼ばれて、また胸が鳴る。
「この前のやつ」
「……うん」
「忘れたとか、言うなよ」
少し間があってから、ローレンは真っ直ぐ言った。
「忘れるわけないじゃん」
その瞬間、もうダメだった。
「……マジでさ」
頭を掻きながら、ぼそっと。
「俺、お前のこと好きだわ」
努力しない俺が、
初めてちゃんと口にした本音だった。
⸻
ローレン視点
あの日のキスは、短かった。
でも、頭の中にはずっと残っている。
(先輩の温度……)
葛葉先輩は、いつも軽い。
冗談ばっかりで、適当で、努力嫌いで。
なのに、あの時だけは逃げなかった。
数日後、先輩が俺を呼び止めた時、
正直、心臓が持たないかと思った。
「忘れたとか、言うなよ」
そんなの、無理に決まってる。
「忘れるわけないじゃん」
言った瞬間、先輩の表情が変わった。
銀色の髪の隙間から覗く目が、真剣で。
「俺、お前のこと好きだわ」
頭が真っ白になる。
分析も論理も、全部どっかに消えた。
「……先輩」
声が少し震える。
「……俺も、」
一歩、距離を詰める。
「だから」
目を逸らさずに言う。
「次は、俺からって言った……よね、」
葛葉先輩は一瞬驚いて、
それから、嬉しそうに笑った。
「生意気」
今度は俺から。
ゆっくり、確かめるみたいに。
触れるだけじゃない、少し長めのキス。
離れた後、先輩は耳まで赤くしていた。
「……お前、反則」
「先輩が言ったんでしょ」
「何を」
「逃げるなって」
放課後の校舎で、二人並んで笑う。
先輩と後輩じゃなくて。
ただの、
葛葉とローレンとして。
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