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『真なる聖女』コユキも『聖魔騎士』善悪の事など知りもしない、これから先だって知りようも無い純真無垢なサニーが言う。
「んでどうするのナガチカさん? アタシ達が鍵? になっちゃったのは判ったけどさぁ、扉が開かれたんだよね? 旅立ちだっけ? どっか行くの?」
「ええ、古き神々は天へ去ってしまいましたがお二方の様に新たな神々が誕生しているんです、ここ以外でもきっと…… 時は無為に流れ只時代を移ろわしているのでは無く、地上が失ったピースを産み出した…… まるで自然の自浄作用の様に、それが星の意思であるかの如くに…… であれば、私の様な矮小な者とて停滞に甘んじる訳には行かないでしょう? 広く世界を巡って自分の役目を果たすつもりです、理性を失ってしまったモンスターと戦い、石化を防ぐ為の魔法を人々に教え、いつか世界が答えに辿りつく様に覚えた知識を伝え続けます」
そっか…… 父自身はコンプレックス的な認識だったようだが、恐らく違っているのだろう。
父が停滞を選んでしまった真の理由は多分、疎外感若しくは喪失感だったのではないだろうか?
思えば魔神王であるルキフェルをその身に宿したコユキと善悪だけでなく、アスタロトやバアル、サタナキアと家族同然に過ごし、軍団長と呼ばれる強力な魔王たちと肩を並べて様々な場所に赴いていたのだ。
彼らを送り出した時の喪失感の大きさは如何程だったのだろうか、想像に難い、いや絶する。
その上、地上に残された仲間達も次々と父の元を去って行ったのである。
件(くだん)の偉大に過ぎる二人の大叔母が相次いで倒れた後だ……
指導者として父の感じた無力感を思うと胸が締め付けられる思いだ、まあ、骨しかないんだけどね。
あまり考えたくは無いが、謎の病に罹(かか)った私を連れて母とカーリー、オンドレとバックルが村を出た事も一因、いや決定的な理由だったと認めざるを得ない事実だ……
申し訳ない心持は嘘ではないが、私観察者自身、あの際の肉体崩壊の原因には未だ辿りつけてはいないのである、言い訳がましく聞こえるかもしれないが、自分独りの探究心を満足させる程の時間的余裕はここ、数千年間持たずに生き続けて来るしかなかったのだ…… 父よ済まぬ、無力で愚昧(ぐまい)な息子を許して欲しい!
そんな私の謝罪は、いつも通り届く事は無く、父は呆気に取られた表情を浮かべているナッキとサニーに向けて言葉を続ける。
「村に帰ったら仲間達、いいえ家族たちに正直に気持ちを伝えて、その結果がどうなろうと私は旅立ちます! 果たしてどれ程の家族達が付いて来てくれるのか、それともたった一人で旅立つ事になるのか? どうなろうが私自身の決定は覆りませんよ? もう決めてしまったんですからね、かつて共に過ごした皆の様に、私も闘魂とガッツで自分の道を歩き切って見せます! 晴れ晴れとした気分なんですよぉ!」