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依頼ややるべきことを終わらせてついに約束の2日後、王都で行われている建国祭を見に行く日がやってきた。


少しでも多くの時間を観光などに使えるよう俺たちは朝早くにオリブの街から少し離れた森の中へとやってきていた。



「忘れ物はないか?」


「はい!大丈夫です!!」



元気な笑顔で返事をするルナはまるで遠足が待ちきれない子供のように俺が異空間から取り出した魔道車に乗り込んだ。


彼女に続いて俺も運転席に乗り、魔道車を起動させる。朝日に照らされた森に溶け込むように魔道車の透明化機能が作動し、ゆっくりと上昇していく。


そして周囲の木々よりも高い位置まで上昇し、その場で一時停止をする。



「では出発する」


「はい!」



ルナの返事を確認した俺はすぐに魔道車を前方へと発信させた。






=====================






オリブの街から王都までは早馬を乗り継いでも1週間ほどはかかる距離なのだが、俺の魔道車ならば数時間あれば王都近くの森まで到着することが出来る。


森からは1時間ほど歩けば王都に到着するため、予定では今日のお昼頃には王都につくつもりである。



「私、王都に行くの久しぶりです!前に行ったときは依頼で行っただけなのでそこまでちゃんと観光できなかったので今回は全力で見て回りたいです!!」


「あまり全力出しすぎて疲れ果てないようにな。だがおそらく王都は全力を出しても一日では回れないほどの広さがあると思うが」


「た、確かにそうですよね」



最初はそんな穏やかな会話を二人でしていたのだが、次第に朝早く起きたことで少し眠かったのかルナがうとうとし始めた。



「眠たいなら寝ててもいいぞ。王都についたら起こすから心配するな」


「で、でもオルタナさんがずっと操作してくださってる隣で寝るだなんて…」


「操作してると言っても今はほとんど何もしてないけどな。もう王都の位置は確認済みだし、そこに向かって一直線で進んでいるだけだから特に俺が操作し続けなければいけない訳でもない。だから安心して寝ても大丈夫だ」


「そ、そうなんですか…ではお言葉に甘えて」



そういってルナは座席の背もたれを倒して横になってぐっすりと眠り始めた。ルナには言いそびれたが、この身体では食事はもちろん睡眠も特に必要はないからずっと操作し続ける必要があったとしても大丈夫なのだ。


それに今この魔道車は魔道衛星と連携して目的地を王都近辺の森に設定しており、そこまで自動で進んでくれるようにしている。だから実際のところ、俺もルナと同じように寝ていても特に問題はない。


だがこの身体では寝ることは出来ないし、それにこの自動操縦機能も試作段階であるので少し見守っておきたい気持ちがある。



俺は幸せそうにぐっすりと寝息を立てて寝ているルナの隣で少しだけ背もたれを倒し、久しぶりの何もしないボーっとする時間を過ごすことにした。






そうしてそれから数時間後、俺たちはついに王都近辺の森に到着した。想定よりも少し早く到着でき、まだお昼まで少し時間がありそうだった。



「さあルナ、着いたぞ」


「…ん、っと…あ、オルタナさん。おはようございます」


「ああ、おはよう」



ルナは大きなあくびをしながらゆっくりと起き上がって体を伸ばす。そしてそのまま魔道車のドアを開けて外へと出て来た。



「やっぱりいつ乗ってもすごい快適ですね、この魔道具」


「そうだな、今の文明レベル的には少しオーバーテクノロジー気味ではあるがな」



俺はそう言いながら魔道車をすぐに異空間へと収納する。やはりこの魔道具は世に出すには少し便利すぎるので他に誰かに知られるわけにはいかない。



「では行こうか」


「はい!」



そうして俺たちは森の中を進み、目的地である王都へと向かっていった。






=====================






「商人の方など大量の荷物をお持ちの方はこちらへ!観光などのそれ以外の方はこちらへお並びください!!」




およそ1時間ほど歩いてようやく王都の門前に到着すると、そこには長蛇の列が2つ伸びていた。


そしてその列を取り仕切るように王都の警備兵と思われる人物たちが一定間隔で立っており、人々の誘導を行なっていた。



「うわぁ…すごい人の数ですね」


「まだこんなに並んでいるのか。確かにすごいな…」



俺たちは想定以上に並んでいる状況に少し驚きながらも周りと同じように列の最後尾へと並んだ。



「これ、今日中に入れるでしょうか…?」


「もう一つの方の列ならともかく、こちらの列は特に大掛かりな荷物の確認とかはないからすぐに入れると思うが…」



準備期間も終わってすでに建国祭は始まっているこの時期ならもう少し王都へと入る列も少なくなっているだろうと思っていたのだが、それは全くの見当違いだったようだ。


正直遅くてもお昼過ぎごろには入れるだろうと考えていたのだが、少し計画を練り直さないといけないかもしれない。



そうして列に並び始めて数十分、少しは前に進んだ実感はあるが依然として王都に入れるにはまだまだ時間がかかりそうであった。


そんな時、並んでいる横を定期的に見回っている警備兵が俺たちの元へと近寄ってきた。



「君たちは冒険者か?」


「ああ、そうだが?」


「何の仕事で王都に?」


「いや、俺たちは仕事ではなくただの観光だ」


「観光?」



するとその警備兵は訝しげな表情で俺たちのことをジロジロと見始めた。



「お前たち、身分を証明できるもの…冒険者なら冒険者カードを確認させてくれ」


「……了解した」



おいおい、冒険者が観光したっていいだろう。


どうやら不審に思われているようだが面倒ごとは起こしたくないのでここは素直に従うとしよう。



俺とルナはすぐに冒険者カードを取り出して警備兵に手渡した。それを受け取った警備兵はすぐにカードを顔に近づけてじっくりと確認し始めた。



「ルナ、Aランク冒険者…特に問題はなさそうだな。そしてこっちは…オルタナ、SSラン……SSランク?!?!」



俺の冒険者カードを見た警備兵が突然大きな声を上げた。その声に驚いた周囲の人たちが何だ何だと一斉に俺たちの方へと視線を向ける。



「しょ、少々お待ちください!!!」


「ちょっと待…」



俺が何かを言うよりも先に警備兵は冒険者カード俺たちに返してから慌てふためいてどこかへと走っていった。


突然の展開に俺とルナは顔を見合わせてぽかーんとするしかなかった。




そして例の警備兵がどこかへと走っていってから数分後、その彼が仲間の警備兵を連れて戻ってきた。



「すみません、お手数ですがもう一度冒険者カードを確認できますでしょうか?」


「ああ、別に構わないが…」



先ほどとはまるで違う言葉遣いの彼にもう一度冒険者カードを手渡すと、何やら別の警備兵と一緒に食い入るように見始めた。



「ほ、ほら本物だろ?格好だって噂と一緒だし…」


「いや…噂でしか聞いたことないが、あのSSランク冒険者が観光で王都になんか来ると思うか?」


「いや、確かにそうだが…」



すると彼らは俺の冒険者カードを見ながら小さな声で話し始めた。


ルナや周りの人たちには聞こえないくらいの小さな声で話していたが、残念ながら今の俺には丸聞こえなんだよな。


SSランクだろうと王都に観光に来たっていいだろうが。どんな噂を聞いたか知らないが噂だけで人を判断しないで欲しいものだ。



「…すみませんがご同行願えますか?」


「一応聞くが、何のために?」


「現在、王都では建国祭が行われている影響で警備レベルを最高まで引き上げています。そのため少しのトラブルも見過ごすわけにはいかないのです。どうかご協力を…」


「トラブルって…まあいい。手短に済ませてくれよ」


「ご協力感謝します!ではこちらへ」



俺は彼らに言いたいことは沢山あったが、ここで抵抗して余計な手間がかかる方が面倒だと判断したため素直に指示に従うことにした。



そして俺とルナは王都の巨大な門の近くにある警備兵の駐在所へと連れて行かれた。


するとそこの警備兵隊を指揮する隊長格の人物が出てきて再び確認が行われた。


彼らが特別な魔道具を使うと俺たちの冒険者カードが本物であると分かり、ようやく俺たちの身の潔白を分かってもらえた。



「「「この度は誠に申し訳ありませんでした!!」」」



俺たちを疑った警備兵たちとその上司である警備兵隊長が目の前で全力で頭を下げて謝罪の意を示している。


何もしておらず、しっかりと身分証まで提示した相手を疑ってそこそこの時間拘束したのだから彼らも冷や汗ものだろう。



「我々が至らぬばかりにとんだご迷惑をお掛けしました。私たちが出来ることであればなんでもいたしますので、どうかこのことはご内密に…」


「ああ、分かった。君たちも建国祭ということもあって過敏になっていたのだろうし、職務を全うしていたということで今回は何も言わないでおこう。俺たちはすぐにでも王都に入らせてくれればそれでいい」


「寛大なお心、感謝いたします!直ちに入れるよう手続きいたしますので少々お待ちください!!」



すると警備兵隊長はすぐに王都に入れるよう手続きを始めた。




そうしてその数分後、俺たちはようやく王都へと入ることが出来た。


トラブルはあったがとりあえず王都には入れたので気を取り直して俺とルナはまず賑わっている広場の方へと向かって歩いて行った。



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