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――次の日。

昼前のキッチンに雅がエプロンをつけて立っている。静かなリビングダイニングに、トントンと包丁で玉ねぎを切る軽快な音がした後、フライパンでぐつぐつと煮る音がした。

そしてしばらくたった後、カレーとトマトのいい香りが漂ってくる。


🍬「運ぶの手伝って!」


唐突に雅の声が響いて、ソファに座っていた阿英が大袈裟なほどに転げ落ちる。


🍬「何してんの、早く運んでよあえちゃん」

🧸「はいはい、いったぁ……」


阿英がキッチンに向かえば、そこには大ぶりのエビが入ったカレーとこれまた綺麗なオレンジ色をしたエビの入った生春巻きが綺麗に並べて置かれていた。

トマトの甘い香りとカレーの香りがキッチン全体に充満していた。


🧸「また綺麗なもん作ってる……」

🍬「でっしょ!やっぱりカレーが正義ってわけよ!」


ふふんと胸を張って得意げに笑う雅に、阿英はまた呆れたような声を出すと、お盆にお皿を乗るだけ乗せてダイニングまで運んで行った。

赤いカレーにパセリの緑がよく映えるカレーに、ライスペーパーに包まれたエビとパプリカの赤にレタスの緑、綺麗な色のご飯が並べられる。


🍄「ぬこちゃんらしい料理やなぁ……w」

⚔️「メニューは?」

🍬「エビとトマトの炒めカレーと素麺生春巻き!」

🦔「はぁ〜、すごい綺麗……さすがぬこちゃん」

🌼「わ、めっちゃトマトの匂い」


みんなに褒められれば褒められるほどどんどん得意げになっていく雅。そしてみんなで席についた後、いただきますと声を揃えた。

プリッとしたエビの食感と、ピリッとしたカレーの辛味、そしてトマトの甘味と酸味がいい感じに飽和して口いっぱいに旨みが広がる。


🍄「うんまぁw」

🧸「ほんま、料理うまいん腹たつな」

🍬「なんてこと言うの……素直に褒めてくれりゃいいのにさぁ」

🌼「はは、ぬこちゃんは絶対モテるねぇ」

🍬「喧嘩か?」

🐸「静かに食べてよもー…w」


いつものような騒がしい食卓と美味しいご飯。今日も雅は何度かおかわりをして、洗い物を済ましたのちにみんなで集まって点数をつける。

昨日つけた泰の料理への点数を書いた紙を出してきて、点数集計が始まった。


🌼「じゃあ、ぬこちゃんの料理への点数発表しまーす」

🍬「えっ、僕からー?!」

🧸「ぬこちゃんからやろ」

🍬「まぁ、僕が勝ったも同然でしょ!」


みんなから紙を集めて蘭華が読み上げていく。


🌼「8点、8点、7点、9点、9点、10点、8点、10点、6点、7点。合計83点!」

🦔「高い高い高い高い!」

🍬「誰がなんと言おうと6点つけたん泰さんやろ」

🦔「別におかしい点数つけてないでしょ!」


ぎゃいぎゃい騒ぐ雅に呆れながら、翔狗は泰の料理の点数が書かれた紙を開いて読み上げ始める。


🏋️「はい、次泰のいくよ」

🦂「はーい」

🏋️「10点、10点、7点、10点、7点、9点、8点、7点、7点、8点。合計……え、83点!」

🦔「はぁ?!」

🍬「そんなことある?!」

❄️「満点でもないのに……w」


83点と83点。内訳はもちろん違うが、合計点数は全く同じ。どう勝敗をつけようかとみんなでうんうんと唸る。

ふと希那が思いついたように声を上げる。


❄️「あ、平均点勝負にしたら?」

🧸「一緒やろがい」

❄️「あ、そうだわ一緒だわ。」

🍬「やーいばーかばーか」

❄️「ん?なんか言ったかばかちゃん、あ間違えたえぬちゃん」


有兎家一頭の悪い雅にそう言われれば流石の希那も黙っていない。ニコッと笑いながら茶化してくる雅の方を向いてばかという言葉を返す。

キャンッと犬のように鳴いた雅はそのまま文悟の後ろに隠れる。


🍬「わーんきな兄がいじめるー(棒)」

🦩「あー!ひどい!よくないよぉ!」

❄️「あれ?おれが悪いみたいになってる?」

🐸「喧嘩すんな喧嘩。」

🍬「えーんえーん」

🦩「あーあぬこみやくん泣いちゃったで」

❄️「どう聞いても嘘泣き。」


そんな喧嘩を聞きながら瑠羽斗が口を開いた。


⚔️「じゃあ被ってる数字を一個として平均求めれば?」

🍬「てことは、僕の点数は8点、7点、9点、10点、6点で、んーっと……」

🧸「平均できひんまじ?」

❄️「やっぱりばかか。」

🍬「ぐぬ」

🦩「これ禁止ね」

🍬「あっ!」


計算に詰まった雅が電卓を使おうとスマホに手を伸ばすとそのスマホをひょいと文悟が攫う。

さっき自分の味方になってくれた文悟に裏切られた雅は目に涙を浮かべながらコピー用紙を引っ張ってきて筆算を始めた。


🦩「ちょ、泣かないでよぬこみやくん…w」

🐸「この子嘘泣き上手くなったな……」

🍄「俳優になれそう」

🍬「できた!はち!!」

🦔「おれのは?」

🍬「んぇーっと、10点、7点、9点、8点だから……うっ、8.5…0.5点負けてるんですけど!」


泰の点数を計算したあと、苦虫を10匹くらい噛み潰したような顔をして点数を報告する。

千流はその顔を見て、泣いたり悔しんだりと表情豊かだなぁと考えた。


🦔「じゃあ、おれの勝ちってことで!」

🌼「まぁ泰さんのほうが10点多いし、6点いないしね」

🍬「僕の方の6点泰さんなんですけど!」

🐸「あ、今度は怒った」


茶化したように言う千流をキッと睨んだ後、雅は不貞腐れたようにソファに寝転んだ。元々ソファに座っていた菜瑚芽と瑠羽斗の上に。


🍄「ねぇ重い」

⚔️「ここに寝転ぶなって」

🍬「ぷぃ〜」

🦩「俺ぬこみやくんに10点入れたで」

🍬「……後一人は」


その後一人は名乗り出てこなかった。紙を一枚ずつ確認していた陽桜が少し笑った後、瑠羽斗のもとに歩いてきた。

そして紙を瑠羽斗に見せると、瑠羽斗も少し吹き出した。


🦂「あ、やっぱり?」

⚔️「なめこくん…w」

🍄「……俺のちゃうよ」

🍬「えっ!なめちゃんっ!いったぁ!」

🍄「俺の方が痛いんやけど!」


菜瑚芽の顎と雅の頭がぶつかって、お互いがぶつけたところを抑える。


🍬「なめちゃん10点だった?」

🍄「まぁ、美味しかったし……」

🍬「泰さんのは何点?」

🍄「んー?確か7点。」

🍬「ふふん!」


得意げな顔をして泰の顔を見る雅に泰は苦笑する。勝負的には泰が勝ったものの、なんだか負けたような空気を感じる。結局うちの子供達はみんな仲が良くて、この絆に入る隙はどこにもないのだと言われている気持ちになってくる。他のどの兄弟たちより、有兎家の兄弟たちは仲がいいんだと泰は誰かも知らない人に向かって得意げな顔をした。

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