TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

暁は農作物を主力としながらも新たに畜産物。肉や乳、毛皮、羊毛などの販売にも手を出しつつあった。

凡そ一年前に牛、山羊、羊、豚、鶏をシェルドハーフェン北部にある町の牧場から一定数を番で購入。酪農や畜産の知識を持つ猟兵のエルフ達を中心として『大樹』の影響下にある牧草を使って飼育を開始。専用に『大樹』の北西にある区画を牧場として用意した。

『大樹』が植物に大きな影響を与えることは分かっていたが、動物に対する影響は未知数だったためその試験の意味も込められていた。

その結果はすぐに現れた。先ず食べられた牧草は数日の内に青々と生い茂り、最初はエサの不足に悩まされることもなかった。

次に牧草を食べる家畜達は恐ろしい勢いで急成長を遂げる。子供が一月もしない内に大人となるのだ。

これには流石のシャーリィも目を丸くし、エルフ数人が驚きのあまり倒れると言う事件が発生した。

もちろん急成長は大量のエネルギーを消費するため、食べる量も通常より遥かに多く、最終的には牧草を増やすために急遽牧場の大幅な拡張が行われるに至った。更に農園にも飼料用の作物を栽培する羽目となる。

繁殖力も非常に旺盛で次々と子供が生まれて牛舎などの建設に追われる等最初の数ヵ月は苦労の連続の日々であったが、その苦労に見合う成果は直ぐに現れた。

これらの家畜の肉は帝国で流通しているどの肉よりも柔らかく、味も上質で試食した皆から大絶賛されたのである。

尚、試食に参加したレイミは「日本の味だ……」と感涙してシャーリィを右往左往させる珍事も発生した。

肉と同じく乳もまた味も良くそれを用いて作ったチーズも大変好評だった。

また羊の毛も柔らかく頑丈で暖かいもので、なにより供給量の増加は被服担当のエーリカ達を喜ばせた。これから暑くなるので冬服は必要ないが、冬に備えて政策を進めていくとのこと。

またこれはレイミからの要望で鶏も飼育していた。

「卵を食べるのです」

「は?卵ですか?」

「はい、お姉さま。鶏の卵は栄養が豊富に含まれています」

「では試してみましょうか」

「あっ、でも細菌が心配なので生ではダメですよ?」

「ふむふむ」

レイミのおねだりをあっさり受け入れたシャーリィは、鶏を育てつつ卵を食べてみることに。

帝国には鶏肉を食べる文化はあるものの、卵を食べる文化はなく一同を驚かせた。

「では、簡単な料理を振る舞わせてください。料理と言うのも|烏滸がましい《おこがましい》ものですが」

「本気か!?」

「レイミの手料理?例え毒であろうと完食する自信があります」

レイミが作ったのは所謂目玉焼きであった。殺菌のため完熟となったが、それに塩を振り掛けて完成。

皆が怯む中、シャーリィは迷わず食べて。

「美味しい」

斯くして黄昏に卵料理が登場。

「殺菌さえ出来るなら、もう少しレパートリーを増やせるのですが」

「研究しましょう」

シャーリィは生卵の殺菌についてサリアに相談。予想外の相談にサリアは笑い転げた後面白そうだと快諾。現在研究が進められている。

「マヨネーズが出来れば、一気に料理の質を向上させることが出来ます」

「マヨネーズとやらがなにか分かりませんが、そのためには生卵が必要なのですね?サリアさんに催告しますね」

転生者であるレイミは、姉の力を借りて日本で親しんだ料理の再現を目論む。

「白米も欲しいですね」

「ライスですか?輸入できるか調べてみましょう」

そんな感じて食の研究開発が始まったのが二ヶ月前。サリアは専用の魔法薬を製造。レシピをシャーリィに引き渡した。

「楽しかったわ。このレシピは貴女にあげる。私が持ってても意味はないし、誰でも作れるようなものだから」

「助かります、サリアさん」

斯くして生卵の確保に成功したレイミは、直ぐ様前世の記憶を頼りにマヨネーズを試作。黄昏では調味料として一気に普及し、主要交易品となった。

「なんだこれ!?何に付けても美味いぞ!?」

「料理の革命ね。これは売れるわよ」

「流石です、レイミ」

「喜んでいただけたなら幸いです」

前世の味を追求しつつ、しっかりと利益を姉に提供するレイミ。

「次は醤油が欲しいわね。やっぱり大豆から作るのかしら?」

味の再現のためにレイミは妥協しない。前世の知識もうろ覚えではあるが、大豆を元に試行錯誤を繰り返した結果、醤油に近い調味料を産み出すことに成功する。また副産物として豆腐の開発にも成功。これらは日本の味には今一歩及ばないものの、概ね好評を得ることとなる。

「まあ、私は調理師ではないしこれが限界かしら?お米も手に入ったし、次はっと」

レイミは卵を入手したことからある料理の再現を目論む。

スタンピードによって大量のアーマードボアの肉が手に入ったのである。表皮付近の肉はゴム質で食べられたものではないが、少し深い場所には柔らかい肉質の部位が存在する。要は豚肉である。

「ソースの作り方は流石に分からないから、これしかないわね」

小麦粉と卵をまぶした豚肉を油で揚げ、炊き立ての白米に乗せる。いわゆるカツ丼である。

「美味しい」

「うっま!?これがアーマードボアの肉かよ!?」

試食を担当したシャーリィとルイスが絶賛。

特にリナを中心にエルフ達が虜になった。

「アーマードボアだけじゃないわ!豚系の魔物を狩りまくるわよ!」

「おおーっっ!!」

狩りが活発となり、大規模な養豚場がエルフ達主導で建設されるに至った。

「美味しい食事は、人々の生活を豊かにする。衣食足りて礼節を知る。住民の品性の向上が図れますよ」

「ふむふむ、良い言葉です。食の改善についてはレイミに一任することにします」

「はい、お姉さま」

お姉さまは食に関してあまり関心がありません。食べられればそれで良いと言う感じで、お屋敷に居た頃も贅沢な食事とは無縁でした。

いえ、そもそもお母様が貴族の無駄に豪勢な食事を嫌っていましたね。豪快な焼き肉は美味しい。

お姉さまの許可も頂けましたから、少しずつ日本の味を再現するために頑張ってみましょうか。

私欲ではありますが、ちゃんとお姉さまと利益を分かち合えるのですから。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

4

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚