テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
yuka @猫耳メイド
1,843
#あべさく
めかぶぷりん
8,223
29
雪月❄️
365
画面に映る、鎖で繋がれた阿部と、そこに佇む男。
『はじめまして、と言うべきか。この瞬間を、待ちわびていたよ』
💚『……誰……?』
『ああ、名乗らず失礼した。《久世朔哉-くぜ さくや-》。君を招待しに来た』
🩷「招待って……阿部ちゃんから離れろよ!」
💚『ずっと、俺を狙ってたのも、あなたが』
『ここまできたら隠す必要もないだろう』
💚『俺を電脳空間で捕らえたって意味ないのに』
🖤「こっちの声、聞こえてないんだ」
💜「見せつけるために、わざと?」
💙「くそっ。電脳空間でやられたら、俺らにはどうすることもできねえ」
🩷「異能封じは!? 前、西矢さんに付けられたら、電脳空間から強制的に戻されたって言ってた」
💜「手元になんかないよ。借りるのに時間が……」
その時だった。
コントロールルームの椅子に座っていた阿部の体が、フッと消えたのは。
🖤「阿部ちゃん!?」
💜「っ、転移能力者……!」
『ああ。どうやら、君の体も来たようだ。これで正式に迎えられる』
💚『っ?! みんなに何かしたの?!』
動こうとして、ジャラ、と鎖が鳴った。
『いいえ、何も。それにしても、捕らえられて体も奪われたというのに、心配するのは仲間のことか』
💚『悪い? 大切な人の身を案じるのは当然だよ』
🩷「阿部ちゃん……」
『それには同意する。誰しも大切な存在があり、その為なら命を、人生を懸けることも惜しくはない……君には、私の大切な人のための礎となってもらおう』
そこまで言って、久世は阿部よりも奥に視線を向ける。
目が、合ったような気がした。
『この機を作ってくれたこと、感謝する。最高の絶望と共に、これからを過ごすといい』
ブツリと、そこで映像が途切れた。
🩷「阿部ちゃん! 阿部ちゃん!?」
画面に向かって叫ぶ佐久間。
ダンッと、渡辺が強く机を叩く。
💜「また、連れてかれた……これじゃ、ファントムの時と同じだ。何も変わってない」
そこでコントロールルームの扉が開く。
💛「凄い音したけど、なんかあった……んだな。阿部は……」
口を開く気にはなれなかった。言葉にするのは苦しい。それでも、目黒が説明する。今あったことを。見たものを。
入って来た岩本達からも、言葉はなかった。
🧡「阿部ちゃん、やっと戻ったとこやのに、こんなん、酷すぎる……」
🤍「相手が悪すぎるよ。読み合いにすらならない」
💙「俺らにはどうにもできないってことかよ?!」
🤍「考えてもみなよ。阿部ちゃんだって想定できてない。それを、僕らが事前に対策するなんて無理だよ。胸から鎖が出たってことは、仕込まれたのは多分、CLOSEの封印を解く為の鍵だ。僕が入れた魔術式とは別に、阿部ちゃんの体に刻まれるようなものを入れられてたんだよ。だから鍵を持ち帰ったんだ。僕が調べたら分かるから」
🩷「じゃあ、あの時点で計画されてたって、こと?」
🤍「そうなるね。あの大学生が鍵を使った時点で、もうこの状況になることは確定してたんだよ。僕が鍵を作ったから、阿部ちゃんが攫われた」
🖤「ラウール、それは」
🤍「そういうことでしょ! 僕が不用意に作ったからこうなったんだ」
💛「お前ら! 全員、一回、頭冷やせ。ふっか、舘さん。今後のこと話す。久世朔哉って名乗ったんだろ。なら、そっから調べるしかない」
暗い顔のメンバーを残し、岩本、深澤、宮舘の三人はコントロールルームから出て行った。
出てすぐに、深澤が頭を下げる。
💜「照……ごめん、照だって混乱してるのに」
💛「……気持ちは分かる。俺だって、どうしたらいいか分かんねえ。どうしようもない気持ちをぶつけたくなるのも分かる。自分を責めたくもなる。でも、ここで止まってられないだろ」
❤️「だね。全く手がかりのなかったファントムの時とは違う。ただ、名乗ったのをわざと見せたなら、一筋縄じゃいかないよ」
💛「けど、居場所が分かれば対策も立てられる。前と同じにはしない」
💜「それに、ずっと見えなかった敵が自分から出てきた。ここさえ乗り切れば、危険はなくなる。後悔は、終わった後ですればいい。最高の絶望? そんなもん、してやんねーよ」
「この機を作ってくれたこと、感謝する。最高の絶望と共に、これからを過ごすといい」
久世と名乗った男がどこを見て話しているのかと思ったが、その言葉を聞いて、阿部はハッとした。
💚「今の、みんなに見せたの……? 何で……違う。そもそも、なんでここにいるの……ここに入って来れる人なんて、いない筈なのに……」
「君は、夕星、という男を知っているだろう?」
💚「……!」
「彼の異能は電磁波を操ることでね。音声データに電磁波を乗せ、特定の対象へ送り込むことができる。以前、君に行ったのと同じようにね。彼に、私と君を繋いでもらっただけだよ」
💚「じゃあ、あの事件も、あなたが……?」
「いいや。こちらの意向で使わせているだけだ。なかなかに話が通じなくてね、異能だけ借りている」
💚「……でも、どうやって? 俺は今回、声は聴いてない」
「仕込ませてもらったよ。封印を介して、君が電脳空間に入った瞬間、ネットワークを通じてこちらから繋がれるように、ね。その鎖と共に」
阿部が腕を引こうとすると、ジャラ、とまた鎖が鳴った。
「無駄だ。衣吹の異能、《固定》によって鎖は繋がれている。解けるのは衣吹だけだ」
💚「……あの鍵を持ってったの、衣吹っていうんだ。変身と固定……一つが固定なら、変身じゃなくて、変容かな」
「この状況でも情報を得ようとするその心意気は買っている……さて、あちらも準備が整った頃合いだろう」
パチンと久世が指を鳴らした次の瞬間、阿部の視界に映ったのは、白く広い空間と大学生の男の顔だった。
💚「っ?!」
至近距離すぎて思わず身を引こうとして、ジャラ、と鳴った鎖の音に自分の手を見る。
幾重にも巻きつけられた鎖が、体の前で両手首を一纏めにして固定している。更に鎖の先は、自分が座っているらしいベッドのフレームに巻き付いていた。
「おー、ホントに目の色、変わるんだ。こうして見るとふっしぎー」
💚「……衣吹」
「せいかーい。あれ、どこで知ったの? オレの名前」
💚「久世が言ってたよ。固定の異能持ちって。それと、変容」
「え、そこまで喋ったの? 意外とお喋りなんだな。そんな感じには見えなかったけど」
衣吹を睨みつけながら、阿部は首に手を添わせる。首輪型の異能封じがつけられているが、両手が使えるなら外せるかもしれない。
「あー、ダメダメ。その首輪、ちゃんと後ろで鍵かけてっから。手が使えても外せないよ。残念だったねー」
💚「そのくらい予想してるよ」
「ふーん。でもやるんだ?」
💚「やってみない理由、ないと思うけど」
「そりゃそうだ。へぇー。なーんか、思ってたのと違って面白そうかも!」
遊ばれているような物言いに、阿部はあからさまに眉を顰める。
「ま、お楽しみはこれからだ。阿部亮平。せいぜい、いい声で泣けよ」
阿部はその言葉に、目を見開いた。
岩本達が出て行って、コントロールルームに残されたのは、目黒、ラウール、渡辺、向井、佐久間の五人。
誰も何も話さない。ただ、黙って俯いているだけ。
最初に口を開いたのは、佐久間だった。
🩷「ファントムん時の深澤のこと、責める資格なんかなかった」
その言葉が重くのしかかったのは、他の四人。
🩷「むしろ、なーんもできなかったじゃん、俺ら。なんも、させてももらえなかった」
🤍「相手、ホント、厭らしいくらい先を読んでる。僕なんかじゃ足元にも及ばない……」
出てくる言葉は後ろ向きのものばかりだ。目の前で失ったことが、相当、心に暗い影を落としている。
🖤「……でも、情報ならある。まだ言えてなかったけど、夏音から聞いた話。夢幻ノ杜に、俺らの他に誰かいたらしいんだ」
🤍「えっ?」
🖤「夏音はその誰かのこと、花のマークがついた銀色のピンをつけた男だったって言ってた。あの久世って奴にも、銀色のネクタイピンがついてた」
🩷「じゃあ、そいつが?!」
🖤「その男、夢幻ノ杜で二体の人形を夏音からもらってる。マテリア鑑定のマロウと、想像増大のフェデレート」
💙「……花のマークのネクタイピン……」
🧡「しょっぴー?」
💙「俺の誘拐の時に、そいつもいた。紅歪の親玉……そいつだ」
🤍「繋がった……今がどうこうじゃない。もう、そんな段階、とっくの昔に終わってる。全部なんだよ。これまでのぜーんぶが、久世のシナリオ。誰がどうとか、守る守らないの話じゃ、とっくになかったんだ……覚悟を決めるって、こういうことなんだね。もう、後ろを向くのは終わりにしなきゃ」
ゴシゴシと、腕で目を擦るラウール。
それを見て、佐久間はぐっと上を向き、向井は頬をパンッと叩き、渡辺が拳に力を込める。目黒はラウールの背中をバシンッと叩いた。
🤍「いった。ちょ、なに?」
🖤「気合い入れたんだよ。今、ラウールの頭脳は必要なんだから、頼んだぞ」
🤍「みんなへの説明、理解できなくても知らないからね! 阿部ちゃんほど優しくないから、僕は!」
🖤「そこは、まあ、頑張る」
コントロールルームのドアが開いて、宮舘が顔を覗かせた。
❤️「もう大丈夫そうだね。みんな集まって。阿部の居場所、分かりそう」
🧡「うぇっ? はやっ!」
🤍「場所教えて!」
顔を見合わせ、コントロールルームから慌てて出て行った。
コメント
1件