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講義が正式に終わり、我先に講義室から出る人、講義室に残り談笑する人様々だった。
咄嗟に妃馬さんのほうを見る。
するとまだ席に座っており、近くに座っている友達と談笑していた。
僕はスマホの電源をつけ、LIMEのアプリを開き、妃馬さんにメッセージを送る。
「妃馬さんこの後はなにしてますか?」
その後にフクロウが「?」を浮かべているスタンプを送った。
思い切ったことを聞いてしまったと思った。「この後なにしてますか?」なんて
暗に「この後一緒にどこか行きませんか?」と言っているようなものだ。
送る前も「この文を送るのか」と悩んだが、送った後も「送ってしまった」と悩んだ。
なんとなく妃馬さんのほうを見ることができなかった。
そんな目まぐるしく様々な感覚が体内を駆け巡る僕の横で
講義室に入ってきて座ってから僕と会話をするかサティスフィーで
アリオギャラクシーをし、眉間に皺を寄せたり体ごと動いたりしていた匠が
相も変わらずサティスフィーをカチカチさせている。
「匠この後は?」
「んー。帰る」
「そっか」
「うん」
冷め切った夫婦のような会話をしているとスマホの画面が点いた。
「キタ!」という嬉しさと返信の内容への不安で鼓動が速くなり、心臓が高鳴った。
鼻から深呼吸を数回して意を決してスマホの電源を入れ
LIMEのアプリを開き、妃馬さんとのトーク画面を開いた。メッセージを見る。
「この後はマエダ電気に行ってゲーム見て、あれば買って、それで帰ります」
その後に猫が「?」を浮かべているスタンプが送られていた。
僕は今一度鼻からゆっくりと深呼吸をし、高鳴る鼓動を抑える。そして返事を打ち込む。
「妃馬さんがよければですけど、この後お茶でもどうですか?」
そう打ち込み、もう一度鼻から深呼吸をする。そして意を決して送信マークを押す。
そのメッセージの後にフクロウが小指を立て
ティーカップで紅茶を飲んでいるスタンプを送った。
スマホをテーブルに置き、そり返り天井を見る。
「ふぅ〜」
という声なのか、息が漏れた音なのかわからない音を出す匠。顔を匠のほうへ向け
「クリア?」
と聞くと
「うん。まぁ比較的楽なステージだった」
そう言ってサティスフィーをバッグへしまう匠。
「怜夢は?この後どうすんの?」
ほんの少し考えて
「あぁ〜ちょっと本屋に寄っておもしろい本ないか見て帰る」
と嘘をついた。
「マンガ?」
「まぁ、マンガもなんかおもしろいのがあればって感じだけど、基本的には小説だな」
「怜夢って昔から、マンガより小説だよね。なんで?」
「んん〜。想像できるからかな?」
「文を頭の中で映像化するって感じ?」
「そうそう。てか匠もマンガ描いてるんだからある程度はわかるだろ」
「まぁわかるけどオレは勉強も兼ねてマンガなんよ」
「たしかにな。マンガ好きが高じてマンガ家になったら
一般人とはレベルの違うマンガ好きになれるよな」
「そういう側面もあるね。ほら、オレまだ「ヲタク」になって2年?くらい?
まだまだ新人も新人でさ。なんなら「ヲタク」って言っていいのか?ってレベルだからこそ
「ヲタク界」の諸先輩方に認めてもらうためにもマンガが大好きで
マンガ家になりました。って言えるように頑張ってる面もある」
「今家にマンガ何冊あんの?」
「ん〜…数えたことないけど1万冊とか?」
「1万!?」
「わかんないけどたぶんそんくらい」
「「オタク」って名乗ったら失礼って言った?」
「うん」
「立派なオタクだろ」
そんな匠のマンガの数に驚いているとスマホの画面が光る。
また僕の胸の鼓動が高鳴り始め、それを落ち着かせるためまた鼻から深呼吸をする。
スマホを手に取りLIMEのアプリを開き、妃馬さんとのトーク画面を開く。安心した。
「はい!ぜひ!じゃあ、私どこかで待ってましょうか?」
その後に猫が「?」を浮かべてるスタンプが送られていた。
僕はそり返り天井に向かって口から息を吐く。
「どしたん?」
その匠の言葉に
「いや、今、今世紀最大の安心がオレを包んだ」
「なんそれ」
「あぁ〜良かったぁ〜」
心に思ったことがそのまま口から出た。
「でもやっぱ怜夢小説感あるね」
「なにそれ」
「いやさっきの「今世紀最大の安心がオレを包んだ」とかなんとなく小説っぽい気がした」
「どこがだよ」
笑いながら言う。
「んん~言い回しとか?」
「ふ〜ん」
「じゃ、オレ帰るわ」
そう言ってトートバッグを持ち立ち上がる匠。
「んじゃまたLIMEするわ」
「あいよ〜」
そう言って匠はトートバッグからイヤホンを取り出し
スマホに挿して、恐らく音楽を聴きながら講義室を出ていった。
僕はチラッっと妃馬さんのほうを見る。
妃馬さんはまだ複数の友達と座ったまま談笑していた。
僕は妃馬さんのメッセージに返信をする。
「あ、いえ、僕が先行って待ってます。駅の改札前で待ってますね」
その後にフクロウが「よろしく」とピースサインの人差し指と中指をくっくけて
こめかみから少し前に出す感じのポーズのスタンプを送った。
僕はバッグからイヤホンを取り出し、スマホに挿して耳に入れる。
スマホで音楽アプリを起動し「お気に入り」のプレイリストをシャッフル再生する。
耳に聞こえてきたのは「Crystal Peanuts」さんの曲だった。
この緻密に考えられた韻、ストーリー、歌詞のラップが好きで最近よく聞いている。
歌ってみたいが歌えない曲のオンパレードだ。
僕は妃馬さんに思い切ってお茶に誘ってOKが出て気分が良く
さらにそこに「Crystal Peanuts」さんの曲が耳から脳に響きさらに気分が良くなり
すごく気分の良い状態で立ち上がり講義室を後にした。