叫び声を辿っていくと
一角獣の黄色い麒麟が、白色の麒麟に殴られていた。
それも鉄パイプだ。
「辞めてください!俺が悪かったから!」
黄色い麒麟が言うと
白い麒麟が鉄パイプを振るった。
「黙れ!お前なんて必要ねぇんだよ!」
「ゔっ…」
黄色い麒麟は頭を抱えて倒れた。脳震盪だ。
「おい。おい!大丈夫か?!」
思わずグルが駆け寄ると
白い麒麟が青ざめた。
「み…見られたのかよ…?!」
「お前…人の心は
ガラス細工のように美しく、繊細なのだ。」
「それを壊すなんて、神のやることではないだろう?」
黄色い麒麟を撫でながらグルは言った。
白い麒麟が走って逃げる。
「意識はあるか?」
「…う…」
「あるな。大丈夫みたいだ。」
「…あぁ…ごめんなさいごめんなさい。」
「申し訳ございません。なんて見苦しい。」
怯えるようにグルから離れると
黄色い麒麟はキョロキョロと周りを見回した。
「俺、帰ります。ごめんなさい…」
「ちょっと待てよ。帰れると思ったか?」
「殴るんですか…?腹?腰?頭?」
「いや、手当てを…」
「え…医者ですか?」
「そうだが。」
「失礼ですがお名前は?」
「グル・グリンだ。聞いたことあるだろう?」
「あっ有名ですね。魔界の医者かぁ…」
「って…そういえば、申し遅れました。
俺はクルル=クルルです。破壊神の息子でして…」
「心優しい麒麟の姿で生活しています。」
「ほうほう。成る程な。お前を虐めてた麒麟は?」
「ヴァルスのことですか?弟ですよ。」
「弟に虐められたのか。可哀想にな。」
「先生こそ見苦しいところ見せて申し訳ないです。」
「手当なんて良いので…」
「遠慮するな。ほら、ガーゼ当てるから。」
グルはそう言うとピンセットでガーゼを掴み
血を吸い取った。包帯で応急措置をする。
「痛いだろうが大丈夫だ。
けどな、家には帰らんほうが良い。」
「お前にとって苦だろう。」
「苦しくても弟ですからね…。」
「苦しいなら逃げれば良い。」
「逃げ場なんてありませんよ。」
「ないなら作れば良い。」
「そんな気力もありません。」
「……天界なのに地獄みたいだな。」
「ここは善人しか居ない地獄ですよ。」
「お前の弟は極悪人だがな。」
「否定できませんね。」
「ほう。今確か逃げる場所がないって言ってたな?」
「ありませんよ。死ぬ以外。」
「絶対に死んではならぬ。
逃げ場所なら俺の家があるだろう?」
「迷惑ですよ。」
「お前が死ぬよりマシだ。
それに…まだ甘えて良い歳だぞ。」
「…良いんですか?」
クルルが目に涙を浮かべると
グルは笑って言った。
「良いぞ。」
「ありがとうございます!」
クルルは涙を流して喜んだ。
一方グルはクルルの孤独さを感じて
自分と重ね合わせていた。
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