テラーノベル
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月が昇り、街は人工的な光で染まって寝静まる時間。
そんな街にある、1部屋。
ダブルベットには、ヴィヴィと、その恋人のぺこらが寝息をたてている。
しかし、ヴィヴィはなにかの物音で目を覚ましてしまった。
「……~~…」
「…ん…?ぺこら、せんぱい………?」
どうやらヴィヴィを起こした音は、隣で寝ているぺこら先輩の声のようだった。
思わず目を擦り、声をかけてみても返事はなく、一人でごりょごりょと喋っている。
「……寝言、?」
顔を覗き込んでも琥珀色の瞳は見えない。
「…ぃで…~…っ」
ぺこら先輩が寝言を言うなんて珍しい。というか初めて聞いた気がする。
何を言っているのか知りたくなって、真剣に耳を傾けてみるが全くききとれない。
でもそんな新しいぺこら先輩も可愛いなと思う。
寝顔をみるのも、もう慣れてはいるけど。そんなことを思いながら頬に手を伸ばせば、少し震えていて汗をかいてるのがわかった。
……暑かった?
「ぅ…ぃかな、いで……」
そして、はっきりと聞こえた寝言。
思わず体を起こして、窓からさす月明かりでぺこら先輩の顔を照らす。
ヴィヴィが影になってよく見えなかったぺこら先輩の寝顔がハッキリと見えるようになり、ヴィヴィは慌ててぺこらの名を呼ぶ
「…っ、ぺこらせんぱい!ぺこら先輩!」
肩を叩いて、寝起きとは思えないハッキリとした声でぺこらの名を繰り返す。
考えるより先に行動をしていた。
汗をかいて、苦しそうな顔をして、震えて、いかないで と零すぺこら先輩を、とりあえず起こさなきゃという気持ちで。
「…ん…っ…………ヴィヴィ…?」
薄い瞼から琥珀色の瞳が姿を現す。
そして何食わぬ顔でヴィヴィの名を呼ぶぺこら先輩に思わず抱きつく。
「ゎっ、なに…?てか暑…」
「びっくりしたぁ…ぺこら先輩!…ぺこら先輩ぃ……ヴィヴィはここに居ますからね…」
「…はぁ、? なにいって…」
「ぺこら先輩、汗かいて震えてて…顔みたら苦しそうにいかないでって言ってたからあ…泣」
「…そなの?」
「ほんとにびっくりしたんですからぁ!!!」
「…よくわかんねぇけど……あつい……」
ぺこらは、ヴィヴィのハグを受けいれて優しく何回かとんとんと背中を叩いたあと、ヴィヴィを離す。
その時みたぺこら先輩の顔はいつも通りで、再び安堵する。
「…窓あけていい?」
そう言って、ぺこら先輩は身体を起こそうと動く。布団が擦れる音に、ヴィヴィもつられて体を起こそうとする。
その瞬間。
ぺこら先輩の手が、ぎゅっとヴィヴィの服を掴んだ。
「……ヴィヴィ」
低くて、寝起きの声。問いかけるみたいで、でも答えなんて最初から決まっているみたいな声。
「ぺこら先輩?」
名前を呼ばれて振り返る。まだ眠そうな瞳の中にハッキリとヴィヴィを捉えるような意志を感じた。そのまま目を逸らせないまま、気づけば掴まれた指先に、はっきりと力がこもっていた。
離さない、というより、失くしたくない、という様な力が。
「……やっぱ、窓いい」
ぺこら先輩はそう言って、起き上がるのをやめる。そして、ヴィヴィを引き寄せ自身の体をヴィヴィへ擦り付ける。
「……はい」
小さく答えて、ヴィヴィは珍しく甘えるようなぺこら先輩へそっと腕を回す。どこへもいかないように。
布団の中で、体温を分け合う。
さっきまでの不安なんて嘘みたいにぺこら先輩の呼吸は、すぐに規則正しくなっていった。
「ぺこら先輩。だいすきです」
囁くように言って、ヴィヴィも目を閉じる。
返事は、ない。でも。
ヴィヴィの腕の中で、ぺこらは無意識に指を絡めていた。
夢の中で、失くしたくない温度を、無意識に引き寄せているみたいに。
その手をヴィヴィも優しく握り返す。
どこにもいかないと、ここに居ると、伝えるみたいに。
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