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「豆は3種類持ってきた。1つはグァテマラ。次にエチオピア、これは月陽が飲んだやつね。最後に珈琲豆の王様パナマのエスメラルダ農園ゲイシャ種。とは言ってもグレード的には2番手だけど」
そういって、夜桜が小袋を3つ机に置く。
ペラペラ喋られてもピンと来ない。
「最後のは聞いた事ないけど王様なの?て言うか芸者?」
正直珈琲について全然詳しくないから、国名言われてもだから何位しか思わない。というか思えない。
「ポケモンで言うとレッドポジションかな。ちなみに芸者さんとは関係ない」
「ポケモンはごめん、分かんない」
夜桜は誤魔化すように言う。顔は真っ赤になっている。
「……ゲイシャの良さは飲んで確かめて。その為に無理言って持ってきたんだから」
「無理言って……」
月陽は誰かが迷惑を蒙ったのではと気が重くなる。
それを察した夜桜は慌てたように手を体の前で振る。
「ああ、もうそこを気にしないで!」
月陽が気に病む前に珈琲で釣ることにする夜桜。必死だった。
「とりあえず練習も兼ねて最初はグァテマラから行こう。あとの二つはとりあえず冷凍庫入れていい?」
「あ、うん。いいけどなんで冷凍庫?」
月陽が食い付いてきたことに安堵した夜桜が理由をドヤ顔で説明する。
「ふっふっふー、コレには訳ありでね、湿気を吸って酸化させないめなの。豆は鮮度が大事でね、放っておくと酸化して酸っぱくなっちゃうの」
「珈琲が酸っぱく?珈琲は苦いじゃない」
月陽の疑問は至極当然のように聞こえる。
だが、夜桜は異を唱える。
「いい珈琲ってのは苦味だけじゃない。そこに甘さや、香り、フローラルな酸味とか色々あるのよ。で、そーゆー珈琲程酸味した時の酸っぱさが目立つから、その予防しなきゃなの」
目からウロコだった。
そういえばあの時のんだ珈琲はすごく飲みやすくて何だか珈琲と言うよりは紅茶に近かったように思える。
「早速珈琲入れてみよう。勿論、私が教えるから」
空気が変わった。
穏やかにでも真剣さが滲む。
夜桜は珈琲に真摯に向き合っているんだ。
「珈琲1杯につきだいたい10gから14g位。2杯だと20g前後。2杯で淹れよう」
「わ、分かった」
測りの上に手動ミルを置いて、上部を開ける。
そこに豆を20g入れる。
「ミルの粗さは調整してあるから、とってを回してガリガリ削っちゃって」
「い、意外と大変」
安定しないからグラグラ揺れる。力が入りづらい何よりやりにくい。
「もっと生活に馴染んだ時電動ミルを買えばいいよ。3万くらいするけど」
サラッと言ってくれるけど豆を挽くだけに3万もお金はかけられない。
珈琲豆を挽くと部屋いっぱいに珈琲の香りが広がる。
珈琲豆を挽いただけ。それだけで簡素な部屋をカフェの様に変えてくれる。
「あ、お湯用意してなかったね。ケトルって何処だっけ」
「それならって、なんでケトルあるの知ってるの」
「部屋を隅々まで見てたから?」
(やっぱ、変態だ)