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30 - 第30話

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2024年04月03日

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自分の意思で新しく何かをやってみようと思って、実際にやるのは初めてかもしれない。

失敗したら、不味かったら。そんなマイナスイメージが頭の中を占める。

呼吸が浅くなる。

いつぶりの緊張か。

「月陽、大丈夫。上手くいくから」

不安で押しつぶされそうな弱気な私を安心させる。

ありがたい。

「よし、じゃあ、まず珈琲の淹れるやり方の説明をするね。その後実際にやってみよう」

月陽は言葉もなく小刻みに頷く。

「サーバーにドリッパーをセットしてろ紙を載せる」

ドリッパーと、ろ紙が密着しない。大丈夫なのか。

「ろ紙は濡らす人も居るけど対して変わんないからそのまんまちゃんと20g測ってろ紙に入れる」

ここまではできた。

というか何も難しいことは無い。セットしただけ。

「粉は慣らしておく。ドリッパーを持って軽く何回か横を手に当てる感じで慣らして」

やってみる。なるほど力はいらない。

「そう、そしたらサーバーの上に戻す。で、こっからが大事で、お湯は3回に分けて注ぐのね」

月陽は黙って頷く。

「最初に2杯取りの時、今回だね。は、蒸らしと言って珈琲の香りを出す工程で、30g。全体にお湯が当たるようにする。コツとしては真ん中スタートで渦を描くようにする。これが一投目。で、メモリをゼロにする」

「失敗しないかな」

「上手く出来なくたって3回もやれば出来るから、そう悲観しないの」

夜桜は月陽の悪い癖のネガティブ思考に対しても優しく、それでいて確実に解消できると保証する。

「二投目は230g。なるべく真ん中に泡で円を作るよう心がける。例えここで、泡が崩れても慌てないて、ゆっくりのの字にお湯を注ぐ。三投目は330gになるように注ぐ。以上」

「終わり?」

「うん。これだけ。数字に沿ってやれば上手くいくからやってみよう」

大きく深呼吸する。

ちょうど夜桜のレクチャーが終わったタイミングでケトルがカチッと鳴り、お湯が湧いたことを知らせる。

注ぎ口が細い珈琲を淹れる専用のポットにお湯を入れる。

さぁ、淹れようか。

このドキドキは高揚感から来るものだ。

私は今、楽しいと感じている。

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