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「…ん。」
窓から朝日が見える。
まだ慣れていないベッドの上に見慣れた服が置かれている。ラグナがきれいに洗ってくれたようだ。きれいになった服に裾を通しながら昨日の事について考える。
「ラグナについて行くか、帰るか。」
…もう結論はついてる。母を殺し、自分に兵をけしかけた父、リュミエル王の元には戻れない。命を掛け自分を逃がしてくれた母の勇気に背くことは出来ない。そう決意した僕は廊下へ続くドアに手を触r
ドゴァァン
なにごと!?家が一つくらい潰れた音がしたけど!?
唖然としているとドアが開き見慣れた巨体が近づいてきた。
「おはよう〜!清々しいいい朝だな!」
「…!おはようございますラグナさん。」
「さてネルフ。準備しろ、今日は街行くぞ街。」
「は、はい。」
「なんだどうしたそんな世界の終わりを迎えたような顔をして。」
「いや。さっきの轟音は何なんだろうなと思って。」
「あぁ。街行くための準備。」
「準備!?」
なにをしに街に行くんだ?戦争か?
「さて今回は馬車呼んでるからな急いでくれよ。」
「わかりました。」
といっても私物なんてほとんどないけどね。
「ほれ朝飯、今日は馬車の中で食べるぞ。」
わーいごはん〜
「おっともう馬車来てる。ネルフ〜早く来いよ。」
「は〜い。」
外に出るとそこには小さな馬車があった。
「…意外と小さい。」
「黙んなさい。あんたの所ととここじゃ馬車も違うの。あとあのおやじさん拗ねると面倒くさいから。」
「全部聞こえとるぞ馬鹿者。」
馬車に乗っていた白髪混じりの男性が口を開いた。
「ヒイ。」
ラグナが萎縮している…。
「久しいのラグナ。」
「タンドルフさんもお元気そうで。」
「ああ。元気も元気よ、お前さんが思っとるほど耳が聞こえないわけじゃないしな。」
そう言うとハッハッハとおやじさんは笑い出した。
「ははは…」
やめてラグナ!そんな目でこっちを見ないで!
「して、そっちの失礼なちっこいのは?」
「その件については本当にすんませんでした。」
「別にいいよ。そんな気にしてないし。」
「こいつはネルフ。迷い子です。」
「魔無しか?」
「いや。魔法を使っているのをこの目で見ました。」
「それは珍しい。魔力至上主義なこの国で魔力を持った迷い子はほとんど見かけんな。」
「そうですね。」
…。
「…さてこれ以上はその子が可哀想だ。俺の仕事は客を指定の位置まで送り届けること。さあ乗った乗った!」
僕達は馬車に乗り込んだ。意外と乗り心地はいいかもしれない。
「さあ出発するぞ。ハイヤッ!」
おぉ早い早い。
「さて街に着く前に朝飯食べちゃおうか。」
待ってました!
「今日の献立は。梅のおにぎりと塩焼きバスおにぎり。あとお茶です。」
「なんか少なくないですか?」
「食いしん坊すぎない?ほら出先で手軽に食べられるようにと。…あと少ないって言う前に開けてみてよ。」
カパッ
「でかっ!」
「でしょ。」
大体僕の両手くらいある…。
「おおがっつくながっつくな。お茶も飲んで。喉詰まらすぞ。」
「酸っぱ!」
「梅だからな。」
「しょっぱ!」
「塩焼きだからな。」
味が濃いけどこの穀物とよく合うな。ラグナによるとこれも東の食べものらしい。今度行ってみたいな。ランブドラ。
「…なぁネルフ。」
「?」
「あの…昨日の話。決めたか?」
「…ラグナさん。」
「?」
「これからお世話になります。」
「そうか!これから忙しくなるな!」
そういうラグナは嬉しそうにおにぎりにかぶりついた。
「グフッ!?」
「ラグナさん!?お茶飲んでお茶!」
「…騒がしいの…。」
そうしてるうちに段々と辺りが整備されている場所につき前には大きな壁が見えてきた。
「おいお前らぁ!見えてきたぞ!ここらへんじゃ一番の街!魔無しの街ランデルだ!」
「いや〜久しぶりに行くな〜。」
「ラグナさんは何度か来たことあるんですよね?」
「まあな…来たことあるというか…。」
なんか含みのある言い方だな。
「さて、俺がお供できるのはここまでだ。」
「ありがとうタンドルフさん。」
「お前さんはまた街長のとこか?」
「それもあるけどこいつの生活用品を買わないと。」
「そうか、まさかお前さんが子供を拾うとは…そいつも運が無いの。」
タンドルフさん?何でそんな僕を憐れむんです?
「さて俺も次の客の所にいかねぇとな。気をつけていけよ。」
「うん、タンドルフさんもお元気で。」
そうして僕達は小さな馬車を見送った。
「ところでラグナさん、街長に呼ばれたってなんのことです?」
「あぁ、内容は聞かされてないけど多分なんかの頼み事だろ。無視したかったけど反感買って家を燃やされたりでもしたりされたら困るし…。」
呼んで来なくてムカつくのはわかるけどそこまでやる?バイオレンスすぎない?
ほどなくすると僕らの受付の番がやってきた。
「はい、身分を確認きるものの提示をお願いし…ラグナさん!?」
「おうミヤティス久しぶり。」
「ほんとですよ!!もう1年半ぶりくらいじゃないですか?…ところでそこの子は?」
「ネルフ、迷い子。」
「あぁ。最近増えましたもんね。では街に入るための許可書を発行しますね。手数料として10キアルいただきます。」
「ほい。」
「確認しました。では許可書をどうぞ。」
「ありがとう。」
「あ、そうだ街のみんなにも会ってあげてください。喜びますよ。」
「気が向いたらね。」
会話を終え中に入るときれいな住宅街が広がっていた。
「わぁ。」
「立派になったもんだなこの街も。」
街の成長に感動しているラグナを横目に僕は近くにあったいい匂いのするお店に釘付けだった。
「!ラグナさんあの店なんです?」
「おぉ焼きそばの屋台か。お昼の時用に買うか。」
「いらっしゃい!」
「焼きそば二つ。」
「あいよ!マヨは?」
「かけて。」
「はいよ!合計12キアルだよ!」
「はい。」
「まいど!」
なんて美味しそうな匂いなんだ。
「…今食うなよ?」
「わかってます!」
「後でパンかなんか買ってあげるから…。」
そう言いながらラグナは財布を確認していた。
「のこり35キアル…後でバスの鱗でも売るか。」
「…キアルってなんですか?」
「ん?そうか。お前のとこじゃ馴染みないか。この地方の通貨だよ。丸パン一つ3キアル。」
「ラグナさんあれはなんです!?」
「聞いてねえな。」
ため息まじりにラグナが答えた。
「これは噴水っぽいな。…はぁ、あの街長またこんな意味わからんもん建てやがって。」
そう言い放ったあとラグナは何かに気がついた。
「…あ。やべ!約束の時間過ぎてる!行くぞネルフ!街長時間にうるさいんだよ!」
そう言ってラグナは僕の手を握り走り出した。
正直腕が痛い。
「ついた…本当に遠いなここ…。」
「明日は筋肉痛ですね…。」
たどり着いたのは街の中でもひときわ大きな建物。
「初めてこの建物が目立つデカさしてて良かったと思ったぜ。」
「ここが…。」
「うん、街役場。」
街を管理するための建物…そりゃこんな大きいわけだ…。
「別名街長の別荘。」
「街長の別荘!?」
「ほとんど機能してないよこの街役場。」
大丈夫か?この街。
ガチャ
「いらっしゃいませ。ラグナ様ですね。お待ちしておりました。」
「あれ?ちゃんと人はいるんですね。」
「そりゃ街役場だからかな。」
さっきあなたほとんど機能してないとか言ってましたけどね。
「二階にて街長がお待ちです。」
「了解。」
二階に上がるとそこには髭を生やした厳つい男性がいた。
「20分遅刻だ。」
「スンマセンデシタ。」
「本来ならこの場で極刑だが…私とお前の仲だ。今回だけだぞ。」
「アリガトウゴザイマス。」
ラグナの目が死んでいる…。
「…本題に入る前にそこのちっこいやつのことを説明してもらおう。」
「迷い子です。」
「視た感じ魔力はあるようだが?珍しいこともあるもんなんだな。」
あれ?もしかしてこの人は…。
「ご明察。この人は魔無しじゃない。」
ナチュラルに心を読まないでほしいな…。
「先ずは此方から名乗るべきだったな…失礼した。私の名前はサイノス。ここランデルの街長をやっている。以後よろしく頼む。」
「この人は昔におきたサジェスとリュミエルの戦争の生き残りなんだよ。」
元軍人か。いや、昔のことだから今はもう王家と繋がりはないのかな。
「さて。自己紹介も終わったところで本題に移ろう。」
「嫌だ。」
「まだ何も言っていないだろう…。今回お前に頼みたいのは大型のろ過装置の設置だ。この街もかなり人が増えてきてな、お前が提案した従来の熱で煮沸するやり方では限界が来る。 」
「嫌だね。この街ももうかなり成長した。もう俺無しで解決できるはずじゃない?」
「いや。我々はまだ物の使い方を模索できても一から作ることは出来ない。今回もお前の力が必要だ。」
「今回も?」
「ん?ああラグナに街の整備を頼むのは今回が初では無い。というかこの街の成長はほとんどラグナの功績だ。飲水の確保や効率的な畑の拡大、戦う術を持たない魔無し達を守るための壁の建設。そもそも捨てられた魔無し達が形成していた小さな集落を繋げ街にしたのもラグナだならな。 」
へえ。そもそもこの街を作った張本人がラグナなのか。だから来たことあるか?って聞いたときにははぐらかしてたんだな。ラグナ凄いなと思い本人の方に振り向くと。ラグナは耳を赤くし恥ずかしそうにしていた。
「もういいだろそんな昔のことは…。 大型のろ過装置を作るっていってもそもそも材料も設計図もねえぞ。俺だって全ての作り方を知っているわけじゃねぇ。材料を無駄にしないために設計図くらいは欲しい。」
そうラグナが言うと街長は目をギラつかせながら数枚の紙を提示してきた。
「ここに我々が調べた水に関係する機械を作っていたであろう工場跡地の位置が載っている。そこに行けば設計図と使える材料は得られるだろう。こちらの紙には水が名産の街ナグスタルの場所が載っている。そこに行けば水質浄化のヒントが得られると思う。」
資料を提示した街長の顔は自信に満ち溢れていた。
「これだから仕事ができるやつは嫌いなんだ…。」
ラグナが渋い顔をしている…。
「もちろん報酬も用意する。前金で2万キアル。達成した暁には5万キアルを贈呈しよう。」
「……わかった。引き受けよう。これから色々必要になるだろうし、金はいくらあっても困んねぇからな。」
「助かる。」
「これが前金の2万キアルだ。」
「ん。確認した。」
「では頼んだぞ。私は建設予定地でも決めておく。」
「どんだけでかいの作らせる気だよ。」
「お前の頑張り次第だな。」
「やる気なくなるな。」
「金が欲しいなら愚痴をこぼすな。さっさと準備に移れ。去れ。」
「へいへい。」
街長と別れ街役場から出ると。
「割に合わなすぎだろぉ。」
とラグナが愚痴をこぼした。
「なんでですか?聞いた限り2万キアルも5万キアルも相当な大金でしょう?」
「お前はわかってないな。」
「えっ。」
「さっき貰った2万キアル。これで交通費、医薬品、食料、宿代その他諸々合わせて手元に残るのは大体3千キアルくらいだぞ。しかも工場跡地はサジェスにある。地方を跨ぐから検問所で通行許可書を発行してもらわないといけない。その手数料でさらに減る。サジェスには強力な魔獣や機兵もいるからな。簡単な仕事じゃない。それを達成しないと5万キアルは手に入らない。な?割に合わなすぎだろ? 」
なんて仕事だ。
「まあ引き受けちまったもんはしょうがねぇさ。…ろ過装置作るだけで5万キアル。簡単簡単。」
その割に目に生気がないですが?
「さて。愚痴を言っててもしょうがねぇ。必要な物色々買って旅の支度をしないとな。」