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〜side小柳〜
今日は天気が良い
早めに起きたんだからこのまま洗濯でもしてしまおう
洗濯機のスイッチを押し、回った事を確認する
リビングに行くと葛葉さんがもう起きてソファーでスマホをいじっていた
「もしかして起こしちゃった?」
「オハヨ。起こされちゃった」
「あははっ、それはごめんなさい」
「眠れなかった?」
「ん?天気が良くてね。つい起きちゃった」
葛葉さんに買ってあるヨーグルトドリンクを持って行こうと冷蔵庫に向かおうとする
振り向き歩き出そうとした瞬間
パチン‥‥‥‥
お腹の奥で音がした
何か弾けるような音‥‥
「‥‥どうした?なんかあった?」
立ち止まり動かない俺を心配して葛葉さんが近づいてくる
「葛葉さん‥‥もしかして破水したかも‥‥」
「え?!」
急いでトイレに確認しに行く
間違いない
破水してる‥‥
トイレから出てくると葛葉さんは入院用のカバンを玄関に出し、スマホで病院へ連絡している
「‥‥まだ先なのに」
「ん?なんか言った?」
「まだ9ヶ月なのに‥‥大丈夫かな‥‥」
大きいお腹をさする
昨日は胎動あったのに今日はまだ確認していなかった
「9ヶ月なら生まれて来たって大丈夫な時期じゃん。狭いところが飽きたんだよきっと」
「でも‥‥せっかち過ぎじゃない?うちの子」
「誰に似たんだか?」
「‥‥俺ではないです」
「どうだか?」
「まさか狼だから妊娠期間短いとか?」
「そんな事ないって。先生だって予定日言ってただろ?大丈夫だよ。長い間ここで育ててたんだから」
葛葉さんがお腹を撫でる
そうだよな?
早く出たがってるなら出してあげないと
病院に着くと陣痛促進剤を渡された
早速飲み、出産に備える
分娩室に入ると葛葉さんが手を握ったり腰をさすったりしてくれた
だが初産のせいなのか俺の産道が狭いのか、とても長く時間がかかっている
数時間が過ぎ、ようやくその時が訪れる
「‥‥んぎゃぁ‥‥んぎゃぁ‥‥」
「‥‥産まれたよ、ロウ」
元気な声と葛葉さんの声
「ありがとう」
葛葉さんが俺の手にキスをする
産まれた赤ちゃんを看護師さん達が色々世話してくれてる
そしておくるみに包まれた我が子が俺の胸元に置かれた
「俺の血が濃かったのかな」
「そうだな。でも途中で牙生えてくる事だってあるかもよ?」
「フフッ、そうですね」
「産まれて来てくれてありがとう」
そう言って葛葉さんは赤ちゃんの手を親指と人差し指で握った
おくるみの中でピョコピョコ動く白い耳
髪の毛は綺麗な明るいベージュ
小さな瞳はブルーグレー
本当に生まれて来てくれてありがとう
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