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「ん?あー……まあ色々だよ」
「……もしかして私に合わせてくれた?」
「俺が見たかっただけだっての」
「そう?ならいいけど」
そんなやり取りをしながら、受付を済ませてポップコーンと飲み物を買ってから、席に着く。
「意外と人いるね」
「んーまぁ公開最終日だしなー」
やっぱり男女のカップルが多く、2人で来ている私たちも周りから見たらそう見えているのかもしれない。
そう考えると、なんだか嬉しさもあった。
暫くして映画館から出て、感想を言い合っていた。
「いや面白かったねー!」
「おー、意外と楽しめた気ぃするわ」
「五木が青春映画マジマジと見てるのは驚いたけどね」
「お前は俺を何だと思ってんだよ」
「いや、だってさ」
「ったく……」
「ねえ五木、この後はどうする?ポップコーン食べたら更にお腹すいてきちゃった」
「……昼飯食うか。なんか食いたいもんあるか?」
「うーん、ハンバーガーは?」
「んじゃあそこでいいか」
そんなやりとりをして向かったのは、マクドナルド。
「五木、私チーズバーガー食べたい」
「あー、おけ。んじゃお前席取っとけ」
「え?いいの?」
「おう。で?飲み物は?」
「んー、アイスカフェラテにしようかな」
そう言うと
「ん、わかった。買ってくっわ」
「ありがとー頼んだ!」
「おう」
そんなやりとりをして五木はレジへ向かった。
言った後に気づいたけど、あれ?これって五木が奢ってくれるパターン?って思って
戻ってきたらお金渡せばいっかって片付けた。
私は言われた通りに席を取り、五木を待つことにした。
「ありがと、いくらだった?」
「いい、こんぐらい奢られとけ」
五木はそう言うと、私の前にダブルチーズバーガーとアイスカフェラテの乗ったプレート
自分の方にてりやきマックバーガーとアイスコーヒーの乗ったプレートをテーブルに置いて
それから五木が席につくと、それぞれ胸の前で手を合わせ、いただきますを言ってからバーガーを手に取った。
「なんか、こういうのって新鮮だね」
「あ?」
「だって、あの五木とマックでお昼食べる日が来るなんて思わなかったし」
「今更言うか?」
「あは、確かに」
二人で小さく笑い合う。
付き合う前なら、こんな風に笑うことも少なかった気がする。
いつも口喧嘩が日常茶飯事で
なのに今は、本当に変わった気がする。
軽口をたたき合いながらも、なんだか和やかな空気が流れている。
「あ、あとお前が好きそうかなーって思って、追加でこれも買っといた」
そう言って五木が差し出したのは、ビーフシチューパイ。
「え、これ前から食べたかったやつ!!え?いいの?」
「おう、食え食え」
食事を終えて店を出た後、私たちは商店街をぶらぶらと歩いていた。
12月上旬ということで、すでに街はクリスマス一色で、いつもより人通りが多い。
華やかな飾り付けがされていて、店先からは呼び込みの声も聞こえてくる。
「……クリスマスって感じだね」
商店街のキラキラとしたイルミネーションを見上げながら、ぽつりと呟いた。
「まあな。どこ行ってもクリスマスムード全開って感じだし、こーいうの悪くねぇな」
五木は手をポケットに突っ込みながら、ちらりと横目でイルミネーションを眺める。
何気ないやり取りに、少し笑みがこぼれる。
私たちは並んで歩いているけれど、手を繋ぐでもなく、ただ自然に同じペースで歩くその距離感が心地よい。
「五木って意外とロマンチスト?」
「別にそんなんじゃねえって。俺だって綺麗なもんには惹かれるわ」
「ふーん?」
「あ、見て五木。あの店、すごい人が並んでる!」
ふと目に入ったのは、人気のスイーツショップらしい店先に長蛇の列ができている光景だった。
「…さっきハンバーガー食ったばっかじゃねえか」
「いいじゃん!デザートは別腹って言うでしょ?」
五木は呆れたようにため息をつきながらも、店の前で足を止めた。
「並ぶならとっとと行くぞ」
なんだかんだ言いながらも、文句を言わず一緒に並んでくれる五木に、思わず口元が緩む。
並んでいる間も、あれこれどうでもいい話をしているうちに時間は過ぎ、ようやく順番が回ってきた。
「どれにする?」
「うーん……このクリスマス限定の苺タルトにしようかな」
「じゃあそれと……俺はチョコレートケーキにすっか」
店が満席だったので、お持ち帰りにしてもらい
近くのベンチに腰掛けて、タルトとケーキを取り出し、お互いに手に取る。
「……これ、思った以上に金粉とか豪華だね」
苺がぎっしり盛られたタルトは、見た目も鮮やかで食欲をそそる。
五木も自分のケーキを一口食べると、頬を綻ばせた。
「うめーな…」
「うーんおいし~!」
「お前、ほんと甘いもん好きだよな」
「五木って甘党じゃなかったっけ?」
「チョコは好きだけどよ……こういうのはたまに食うぐらいがうめぇんだよ」
そんなやり取りをしながらも、五木はしっかりとケーキを平らげていた。
かくいう私もタルトを食べ終え、ベンチから立ち上がった時だった。
ふと、冷たい風が吹き抜け、私は思わず肩を震わせた。