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「どうした? 何か慌ててる?」
「ね、寝惚けてて……さっくんのお家に泊まった事、忘れてて」
「ふーん? でもまあ、よく眠れたみたいで良かったよ」
「う、うん……。あ、あの、さっくんは結構前から、起きてた?」
「まあ、うん」
「わ、私……寝言言ったりしてなかった?」
「言ってたよ」
「え!? 嘘!? 何て言ってたの!?」
「俺の名前、呼んでた」
「……ご、ごめんね」
「何だよ、何で謝んの?」
「だ、だって、寝言で名前呼ぶとか……気持ち悪いよね……」
ただでさえ寝ているところを見られただけでも恥ずかしい咲結。
それなのに寝言まで聞かれていると知り、恥ずかしさよりもどう思われたのかが気になった。
しかも寝言で名前を呼んだというのだから、気持ち悪がられていないか不安になった咲結は元気を無くし、ごめんねと謝った。
謝った理由を聞いた朔太郎は、
「何言ってんだよ? 気持ち悪いとか思う訳ねぇじゃん。寧ろ、すげぇ嬉しいんだけど?」
「え?」
「だってさ、寝てても俺の事考えてくれてるって事じゃん? 最高過ぎるっつーの」
気持ち悪いどころか嬉しいという思いを伝え、気落ちしている咲結を抱き締めた。
「咲結はさ、色々気にし過ぎ」
「だって……」
「多分さ、お前が思ってる以上に好きだよ、俺は」
「……本当?」
「決まってんだろ? 好きだし、大切だから命張って助けたんだ。俺が怪我するくらいで咲結を助けられるなら、こんな怪我だってどうって事ねぇんだ」
「さっくん……」
「何かさ、こうして寝起きから一緒に居られるのっていいな。大好きな奴に、一番に『おはよう』を言えるって、幸せだな」
「……うん」
「……まあ、咲結は高二だし、まだ先にはなるけどさ……お前が卒業したら、一緒に住みてぇな」
「え!?」
「俺の気持ちは変わらねぇから。俺らに終わりが来るとしたら、それはお前の気持ちが離れた時だけだよ」
突然の朔太郎の告白に驚いた咲結は何も言えなくなる。
まさか朔太郎がそんな風に考えていたとは思わなかった咲結は嬉しいのに驚き過ぎてすぐに言葉に出来なかった。
「――って、急にそんな事言われても困るか。悪い! 先走ったな! 今のは忘れてくれ」
何も答えない咲結を気遣い、今の話は無かった事にしようとおどけて見せる朔太郎。
そんな彼に咲結は、
「やだ、無かった事になんてしないで! 私、嬉しい! さっくんがそんな風に思ってくれて、嬉しいよ。私も、一緒に住みたい! 絶対住む! それに、私の気持ちが離れるなんて有り得ないから、私たち、ずっと一緒に居られるね! 嬉しいよ、すっごく!」
凄く嬉しい事と、自分の素直な気持ちを朔太郎に伝えた。
勿論、そんなに簡単な事じゃないと分かっている。
それでも、お互いの気持ちが同じである事と、未来への希望が持てるだけで、今の二人には充分なのだ。
「朔太郎くん、起きてる?」
部屋の外から真彩が声を掛けてきた事で、咲結は慌てて身体を起こすと朔太郎の布団から出て隣に敷いた布団へ移る。
「あ、はい! どうかしましたか?」
そして朔太郎も身体を起こして真彩へ返事をした。
「入るわね」
朔太郎の返事を聞いた真彩は一言断って扉を開けると、
「朔太郎くん、咲結ちゃんおはよう。ごめんなさいね、朝から騒がしくて」
二人に挨拶をしつつ、何やら機嫌が悪いのかぐずり気味の幼女をあやしながら真彩は言葉を続けていく。
「悪いけどちょっとの間、理真の事見ててくれるかな?」
「それは良いッスけど、悠真、居ないんスか?」
「悠真は朝からお友達と遊びに出掛けてるのよ。理仁さんも翔太郎くんも急ぎの仕事があるって早くに出掛けてて、他の人に頼むにしても、理真の人見知りが激しくて迷惑掛けちゃうし……ごめんね、怪我してるのに」
「こんなの掠り傷みたいなもんなんで平気ッスよ。姐さんは気にせず家事してください」
「ありがとう。咲結ちゃんも、ごめんね。少しの間、よろしくね」
「あ、はい」
朔太郎に託した真彩は部屋を出て行くと、母親の姿が見えなくなった事で不安になったらしい理真の表情が更に険しくなる。
「さっくん、理真ちゃんが泣いちゃいそう……」
今にも泣き出しそうな理真を前に焦る咲結だけど朔太郎は、「理真〜」と笑顔で名前を呼びながら焦る事なくあやしていく。
すると、泣きそうだった理真の表情が徐々に穏やかなものになり、少しすると笑顔を見せるようになっていた。