テラーノベル
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紆余曲折あって、周りを疲労困憊させつつ、勇斗と仁人がお付き合いを始めてから1ヶ月が経った。
中々交際を認めない令和のツンデレ男仁人VS俺のこと好きなんでしょ?あ、言質も取ったからの少女漫画の主人公兼悪徳業者勇斗のすったもんだがあったり、それに巻き込まれた太智がついに「黙れお前!!はよくっつけや!!」と仁人にブチ切れるという事件があったりしたが、2人の関係は意外と穏やかで順調なようだった。
「今日ゼミ終わったら勇斗んち行くわ。今日バイトだよな?冷蔵庫に何あったっけ?」
「えーと、昨日仁ちゃんが作ってくれた生姜焼きの残りと、ほうれん草とか人参とか」
「おけー、じゃあ特に買い物いらないね。なんか適当に作っとくわ」
「ありがとう仁人、お前マジでいい奥さんすぎる~」
「んははっ、きっしょ」
慣れとは恐ろしい。目の前で当たり前のように繰り広げられる半同棲ツンデレカップルの会話にも慣れきってしまった。
舜太に至っては、
「ええなあ、俺も結婚したい……。授業とバイトで疲れて帰ってきたら、料理上手な奥さんがご飯作って待っててくれる生活憧れるわぁ……」
などと言い出して「俺の奥さんだから!俺の!」と勇斗に怒られる始末。 前々から感じていたが、長男のくせに親としっかりした妹に甘やかされて育ち、甘えん坊で末っ子気質の舜太は、面倒見が良く口は悪いがおおらかで包容力のある仁人のことをお母さんかなにかだと思っている。なんならたまにゼロ距離で仁人に甘え倒しに行って、まんざらでもない仁人に甘やかされた側から勇斗に強めに牽制されている。
「しゅん落ち着いて、あの2人新婚夫婦じゃないから」
「まあそれで言うと元々10年連れ添った熟年夫婦みたいなもんやったからな。落ち着く所に落ち着いただけちゃう?」
さのじんを1番近距離で浴びてきた太智は、やっと収まるべきところに収まった2人を見て、やれやれと肩をすくめている。
2人が当然のように一緒に一限に現れても、5人で遊んだ帰りに、連れ立って2人で帰って「あれ?仁人の家ってこっち方面じゃなかったっけ?」と改札で思っても、4人で勇斗の家に遊びに行った時に、2人だけお揃いのマグカップだったり、玄関でなぜか家主の隣に立つ仁人と一緒に見送られても、――もう、誰も何も言わなくなった。それがあまりにも自然な光景になってしまったからだ。
だから、それは明らかな異常事態だった。
「あれ、今日ははやちゃんち行かんの?」
珍しく勇斗の家ではなく、自宅のある太智と舜太と同じ方向の電車に乗る仁人を見て、舜太がつい尋ねる。
「別に毎日行ってるわけじゃないだろ」
いやいや、バイトとかない限りほぼ毎日甲斐甲斐しくご飯作りに行ってましたよね?平然と言う仁人に、2人は内心で突っ込んだ。こういう時の仁人はポーカーフェイスを貫き、意地でも腹の中を明かそうとせず、淡々としている。仁人と一番気の置けない仲である柔太朗がいれば、彼も本音をこぼせるのかもしれないが、生憎ここには仁人にとって世話の焼ける弟分のような存在の太智と舜太しかいない。
だから、舜太は素直に今自分が1番したいことをしようと思った。
「じゃあ今日久々にタピオカ飲んでラーメン食べへん?」
大学入学したばかりの頃、中学から持ち上がりですでに顔見知りの生徒も多い中で、三重から上京してきたばかりで右も左もわからない舜太を、仁人が自分の好きなタピオカ屋やラーメン屋に連れていってくれたのだ。口も態度も不遜に見える彼のそのさり気ない優しさに触れてから、舜太はずっと人として仁人が好きで、懐いていた。
「俺最近ずっとはやちゃんがじんちゃん独り占めするから、寂しかってん。久々に行かへん?」
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白亜🐾🌙
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そうやって人懐こく笑う舜太の無邪気な笑みに釣られて、仁人の頑な心が解けていく。
「ふはっ、きしょいこと言うなって。全然いいよ、久々に行こうよ」
仁人が笑って頷くと、舜太の顔がぱっと明るくなる。
「やったー!だいちゃんも来るやんな?」
「ま、しゃーない。吉田さんの奢りなら付きおうたるわ!」
太智がすかさず便乗すると、仁人が呆れたように眉を寄せた。
「別に奢りとは言ってないだろ!」
その声に2人が笑い、仁人もつられるように口元を緩めた。
一方その頃。
「嫌われた……」
趣味のフットサルサークルで汗を流した後、勇斗に誘われてファストフード店に入った柔太朗の向かいには、マリアナ海溝くらい沈み込む勇斗がいた。
頬杖をつき、見るからに覇気のない顔でポテトを弄っている。その落ち込みように、柔太朗は苦笑しながら尋ねた。
「よっしーと何があったの?」
「やっぱりわかる?」
勇斗が顔を上げる。柔太朗は小さく頷いた。
「よっしーも今日なんか余所余所しかったじゃん。吉田さんって、なんかあるとそれを周りに見せないようにスンッてなるから、逆にわかりやすいんよ。はやちゃんは言わずもがな」
「柔太朗にはわかっちゃうよな。気使わせてたらごめんな~……」
申し訳なさそうに眉を下げる勇斗に、柔太朗は肩をすくめた。
「本当に今更だって」
谷岸さんと付き合ってた頃に比べれば……。そう心の中で付け加えながら、柔太朗は苦笑する。
「こんな話、友達にするには恥ずかしいんだけど……」
勇斗が少し言い淀む。
「もう大分恥ずかしいことしてるから、今更大丈夫だよ」
「え?そうか?」
本気で分かっていない顔をする勇斗に、柔太朗は思わずため息をついて、
ここに太智や舜太がいれば、自分たちが普段どんなにさのじんのイチャイチャに巻き込まれているかを声高に説明してくれるのに、と、ここにはいない友人たちを思った。
「俺たち、まだチューもしたことなくて。いや、おでことかほっぺにはしょっちゅうふざけてしてたんだけど、口は仁人が恥ずかしがるからできなくて」
「あー、そういう話ね。おっけーおっけー、ぜんっぜん問題ないよ」
柔太朗は天を仰いだ。今更とは言ったが、覚悟を決める時間が必要だ。
本当に、太智と舜太がこの場にいたら!しかし優しさの概念の擬人化こと山中柔太郎は、 どれほど聞くに堪えない惚気話であろうと、友人の恋愛相談を途中で投げ出すような男ではなかった。そんな柔太朗の覚悟など知る由もなく、勇斗は深刻な口調で続けた。
「この間やっと仁人が覚悟を決めてくれて、いざ!ってなったんだけど、そのキス待ち顔が可愛くて可愛くて……」
その時の仁人のことを思い出しているのか、勇斗の顔が緩む。
「そのまま襲っちゃったんだ」
柔太朗の問いに、勇斗はバツが悪そうに頷いた。
「ひゃあって言われて、平手打ちされた……」
「しずかちゃんなの?」
脳裏に、不意をつかれると仕草が乙女になるゲーム仲間が浮かぶ。あいつ、普段は王様くらい脚広げて座る癖に、びっくりすると急にハムスターくらいちまっとするんだよな。
「それから本気で謝って、でも、このまま一緒の空間にいたらまた襲っちゃうかもしれないって言ったら、その日からうちに来なくなった……」
「あーね」
力無く肩を落とす勇斗を見て、すべてを察した柔太朗はゆっくりと頷いた。そして、遠い目をして3人の友人に思いを馳せる。
―――しゅん、大ちゃん、助けてくれ。
吉田、お前は一発殴らせろ。
舜太は後悔していた。
目の前には、照れとかではなくガチ気まずそうな仁人と、その隣には虚空を見つめながらタピオカを啜る太智。
タピオカなんて飲んでJK気分になって、言い渋る仁人の口を無理やり割らせて『勇斗に押し倒されたのが怖くて避けている』なんて、聞かなきゃ良かった。両親の性事情をうっかり覗いてしまっているような気分だ。
「だから言いたくないって言ったのに……」
仁人が恨めしそうに呟く。
「っていうかあんだけ人前でイチャイチャチュッチュしといて、まだその段階やったん?」
「い、イチャイチャチュッチュなんてしてないだろ!!」
「確かに……」
キャンキャン吠える仁人はスルーするとして、太智の言葉を聞いて、舜太はいつだったか、勇斗が飲み会で仁人のおでこに熱烈なキスをかまして、仁人が「こいつチューした!!」と騒いでいたのを思い出した。交際前からその距離感だったのだから、キスなどおはようとおやすみの挨拶感覚でしているものだとなんとなく思っていた。
「むしろ、まだそこなんや」
「うるさい」
仁人が気まずそうに目を逸らす。
「そらもう、腹括るしかないんちゃうん?」
ストローを弄びながら、太智が面倒くさそうに言い放った。
「吉田さんがさっさと覚悟決めたらええねん。もうどうせ8割くらいは気持ち固めてるんやろ。さっさとはやちゃんち戻ってやることやってきいや」
「だいちゃんそれは……」
あまりにも身も蓋もない発言に、舜太が何とフォローすべきか考えあぐねていると、仁人は、一瞬ぽかんとして、それからふっ、と吹き出した。
「……ふははははっ、やることやって来いって……お前……あー笑ったわ……」
突然の仁人の爆笑に、舜太は呆気にとられる。その横では、太智が迷惑そうに眉を顰めていた。
「はよ仲直りして、二度と俺を巻き込まんでな。マジで興味ないねん」
「はいはい、塩さんほんとごめんって」
辛辣な太智の態度を気にもとめず、なぜか上機嫌になった仁人を見て、舜太は呟いた。
「塩レモン、わからんわー……」
―――さて、どうしたもんかな。
頭を抱える勇斗を前に、柔太朗は小さく息を吐いた。すると、タイミングを見計らったようにテーブルの隅に置いたスマホが通知を知らせる。その名前を見て、柔太朗はそっと画面を開いた。
『じゅう、はやちゃんから話聞けた?ようわからんけど、こっちはだいちゃんのおかげで大丈夫そうやで!今からはやちゃんち行くって言ってたから、早めに帰してや!』
メッセージを読み終えた柔太朗は、思わず口元を緩めた。スマホ画面を伏せて、目の前の勇斗に声をかける。
「はやちゃん、よっしーとちゃんと話した方がいいよ」
「そりゃそうだけど、仁人に避けられてるんだって……」
勇斗がお手上げ、というように乱暴に頭を搔くのを静かに見つめて、柔太朗は口を開いた。
「そうかな。とりあえず家に帰ってみたら?」
「だから、家に帰っても……」
そこまで言って、勇斗が何かに気づいたようにハッと顔を上げる。
「もしかして、太智と舜太も仁人の方で動いてくれてる?」
柔太朗は答える代わりに、悪戯っぽく笑った。
「さあね、でも俺たちは2人が大好きってことだよ」
「柔太朗!マジ愛してる!」
勢いよく立ち上がり、今にも抱きつかんばかりの勇斗を押しのけながら、柔太朗は脇に置いてあった荷物を手渡した。
「言う相手間違えてるよ!ほら、早く帰って!」
「おう!本当にありがとう!」
水を得た魚のように活き活きと元気を取り戻した勇斗が慌ただしく店を出ていく。その背中を見送りながら、柔太朗は小さく微笑んだ。
―――あとは2人次第だよ。
翌日。
「仁人大丈夫?本当にしんどくない?」
「うるさっ!大丈夫だって」
そこには、明らかに何かあった2人の姿があった。勇人は見るからに肌ツヤがよく、昨日までの憔悴ぶりが嘘のように活き活きとしているし、対照的に仁人は頻繁に腰を抑えて歩き方がぎこちない。まるで妊婦とそれに寄り添う旦那くらい甲斐甲斐しく寄り添っている。心配そうに腰をさする手が生々しいからやめて欲しい。
「ほら勇斗は別の授業だろ!早く行けって!」
「本当に具合悪くなったらすぐ言えよ!授業中でも迎えに行くから!」
「妊婦かよ俺は!!」
“さのじんヤった?”
“こいつら絶対ヤっただろ”
“さのじんはガチ”
周囲のひそひそ話す声と、先に教室にいた太智、柔太朗、舜太の生暖かい視線に気づいた仁人は、居たたまれずに勇斗の手を押しのけて、背中を押して教室の外へ追いやった。
「ちょ、仁人、なんで押すの!?」
「いいから出てけ!」
そうしてようやく勇斗を追い出すと、仁人は3人の視線を感じながら、気まずそうに口を開く。
「あー……3人とも昨日は悪かった。じゅうも勇斗の方に行ってくれたんだろ」
仁人が謝ると、3人の反応はそれぞれだった。
「ほんまやで。タピオカ1杯じゃ元取れんわ」
「ほんまやな!じゃあ今度はラーメンも行かんと!はやちゃんとじゅうとも一緒に!」
「お、ええなそれ。全部仁人に奢ってもらお」
呆れたように大袈裟に肩をすくめる太智と、2人が仲直りしたことがさぞ嬉しい、というように見えない尻尾をブンブンと振る舜太。
「ほんとダルかったわ〜。はやちゃんはいいけど、なんで俺が吉田さんのフォローしなきゃ行けないんだっつー話」
「わ、悪かったって」
「今度ゲーム付き合ってもらうから。朝まで」
「それはもう全然いくらでも」
仁人にだけ口と態度が大きくなる柔太朗は、わざと責めるような口調で言いながらもその口元には朗らかな笑みが浮かんでいた。
全員にいつもの笑顔が戻る。授業の後、勇斗が学生時代はいつもアンカーを任されていた俊足っぷりで廊下を駆け抜け、仁人大丈夫!?と教室に駆け込んで、仁人に叱られるまであと少し。それを呆れながらも笑いながら見守る彼らは、それから数ヶ月後、 仁人の誕生日に贈られたお揃いのハイブランドの指輪を巡って、「なんで柔太朗はよくて俺とはお揃いつけてくれないの」勇斗VS「指輪とか重いって!!いくらすんだよこれ!!」仁人の闘いに巻き込まれることになることをまだ知らない。
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痒いところに手が届く、いいストーリーでした…こういうの読みたかった! 恋愛感情以外、実話の方が多いのが凄いですよね…公式からの供給過多😂さのじんはもちろん、YJ・そのじん・塩レモンの関係性も最高でした!愛されリーダー…尊いです🤝

かわいいお話🥰最近フォローさせていただきました!これからも更新楽しみにしています!