テラーノベル
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一方、クラスメイト達は__
赤い空と、血の匂いが混じる重苦しい風。地球(もとの世界)なら、そろそろ放課後で部活のやつらがグラウンドを走っている時間だろうか。
「白石さん、右から三体来る! 速度は速いが、攻撃パターンは直線的だ!」
「了解……! 『絶対防御(イージス)』!」
佐藤くんの叫び声と同時に、目の前に黄金の光の壁が展開する。
ドゴォォォンッ!!と地響きのような衝撃が腕を伝わり、私は思わず歯を喰いしばった。
「くっ……! 大丈夫、抑え込めてる!」
「よし、僕が核を解析する!……そこだッ!」
佐藤くんが指示した箇所に吉川さんの放つ治癒の光——今や『浄化・回復』へと昇華された能力——が直撃し、巨大な魔獣が咆哮を上げて崩れ去った。
「……はぁ、はぁ……撃破、完了……!」
「白石さん、吉川さん、大丈夫か!?」
遠藤くんが『広範囲探知』の能力で周囲の警戒を続けながら、駆け寄ってくる。
私たちは互いに顔を見合わせ、安堵の息を吐いた。
あの日、近衛くんに「森羅万象」の力でこの異世界へ突き落とされた時、世界は終わったと思った。
でも、違った。終わっていたのは、自分のずるさや弱さから目を背けていた、私たちの「あの頃の生き方」だったんだ。
一度だけ許された24時間の地球への帰還。
家族の温かさに触れ、温かいご飯を食べた時、私は自分の犯した罪の重さに涙が止まらなかった。
目の前で近衛くんが傷つけられ、追い詰められていたのに、「自分に火の粉が飛ばないように」と黙っていた私。助けを求める彼の目を見ようともしなかった私。
「私は……近衛くんを見捨てた加害者だ」
そう心から認め、泥に頭を擦り付けて謝罪した瞬間、この『絶対防御』の力が目覚めた。
これは許された証じゃない。
自分の罪を背負い、この地獄で戦い抜くための「覚醒」だ。
「……おい! 白石! 佐藤!!」
後ろの岩かげから、ドロドロに汚れた神条くんたちが這い出てくる。
かつてスクールカーストの頂点で威張り散らしていた面影は、もうどこにもない。
「肉だ……肉をくれよ……! 吉川、お前その能力で肉とか出せないのかよ!?」
「出せるわけないでしょ! 神条くん、吉川さんは回復担当だよ!?」
鬼塚くんは涙目で鼻毛を気にし、姫宮さんはボロボロの服を抱えて「寒いのよ、温かい風出しなさいよ!」と神条くんに殴りかかっている。黒岩先生は泥の中から拾った1円玉を握りしめて、虚ろな目をつぶやいていた。
「なんでだよ……なんで俺たちの能力は変わらねぇんだよ……! 俺だって『ごめんなさい』って言っただろ……っ!」
神条くんが血走った目で地面を叩く。
佐藤くんが、冷ややかな、でもどこか哀れむような目で見下ろした。
「神条くん。近衛くんのスマホ(チャット)に書いてあったろ。……君たちの言ってる謝罪は、ただ『自分が助かりたいから』吐いてる口先だけの言葉だ。そんな浅ましい心が、あのシステムに通じるわけがない」
「うるさい! うるさいウルサイ!! 俺が主犯なわけねぇだろ! みんなで近衛をいじってたんだ! なんで俺だけこんな目に逢わなきゃいけないんだ!!」
自分の罪からどこまでも逃げ、他人を呪い続ける神条くんたち。
彼らは気づいていない。
自らの醜い心を改めない限り、永遠に『0.1度の微風』のまま、この地獄で取り残され続けるということに。
ピコン。
静まり返った荒野に、電子音が響いた。
拠点の中央に置いてある、近衛くんの『観測用スマホ』の通知音だ。
全員の視線が集中する。
画面を開くと、そこには華やかなスポットライトを浴び、最高級のタキシードを着こなした近衛くんと、隣で可憐に微笑む銀髪の女神・ヘカーティア様の画像が添付されていた。
『近衛 司:テレビの特番収録が終わったところだ。今日の夕飯は星付きレストランのフルコースだが、お前たちは今日の分の薪拾いと水汲みは終わったか?』
「あ……あああ……近衛ぇぇぇっ!!」
神条くんが泡を吹かんばかりに狂乱し、姫宮さんがその場に崩れて泣き叫ぶ。
画面の中の近衛くんの瞳は、昔の弱々しかった面影なんて微塵もない。
まるで雲の上から、羽虫の蠢きを眺めるような……圧倒的で、冷徹な「神」の目だった。
「……行こう、佐藤くん。夜の魔獣が来る前に、拠点の補強を終わらせないと」
「そうだね、白石さん。神条たちの分も、僕たちが動くしかない」
私たちは叫び続ける神条たちを背に、再び武器を構えた。
近衛くんに許してもらえるなんて思っていない。
地球に戻れる日が来るのかも分からない。
でも、自分が犯した罪から逃げずに、この地獄で生き抜いてみせる。
はるか上空、次元の壁の向こう側にいる「かつて見捨てたクラスメイト」の冷ややかな視線を、肌に感じながら。
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コメント
1件
いやあ、第18話、読み終えたところです。クラスメイトたちの視点で描かれる贖罪の形がすごく胸に響きました。特に白石さんの「これは許された証じゃない」っていう覚醒の瞬間、重かったなあ。罪を認めてから力が目覚めるっていう流れが、この作品のテーマをよく表してる。神条くんたちがまだ口先だけの謝罪で止まってるのと対照的で、まさに「心の在り方」が能力の質を決める世界観がしっかり生きてる。それにしても、最後の近衛くんからのスマホ通知……あの「神の目」の描写、ゾクッとしました。次の話が待ち遠しいです。