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「そういえば、あいつらに“おもちゃ”をひとつ送ってやってなかったな」スイートルームのバルコニーで夜風に吹かれながら、俺はふと思いついて右手をかざした。
地球でのマジックショーの演出として使うには、雷の権能は少々ド派手すぎる。だが、あいつらのいる異世界での暇つぶし(観賞用)としては格好のアクセントになるだろう。
【対象:空間内の元素・理】
【象徴:太古の雷霆を宿す一振りの大剣『雷神の系譜(雷剣)』の生成】
【制約:真に心から改心した者のみが真価を発揮できる】
「森羅万象——『物質錬成』」
俺の手に、紫電を纏う一振りの重厚な大剣が姿を現す。
刃からはバチバチと青白い火花が散り、触れるだけで並の魔獣なら一瞬で蒸発させるほどの威圧感を放っていた。
『あら、司様。そのような業物を錬成なさって……あの方々に授けるのですか?』
ワイングラスを手にしたヘカーティアが、楽しそうに瞳を輝かせて隣に並ぶ。
「ああ。たった一本だけな。……向こうの『クラスグループ』に届くように、空間転送してやる」
俺は指先を鳴らし、雷剣を異世界の防衛拠点の中央へ送り込んだ。
◇
【異世界・防衛拠点】
『異世界観測アプリ』の画面を覗き込むと、防衛拠点の中央に突如として出現した紫電の剣に、32人が騒然となっていた。
ドゴォォォンッ!!
地面に深々と突き刺さった雷剣から放たれる圧倒的な雷光。
「な、なんだこれ……!? 剣か!?」
「雷を纏ってる……! すごい魔力だぞこれ!!」
真っ先に飛びついたのは、やはり神条だった。
「ハ、ハハハ! 近衛のやつ、ついに俺に最強の武器を寄こしやがった! これがあればこんな異世界、俺一人で無双できるぜ!!」
神条は狂喜乱舞しながら、両手で雷剣の柄を固く握りしめた。
「抜けろぉぉぉッ! 俺がこの世界の主役だ——ッ!?」
バリバリバリガシャーンッ!!
「ぎゃああああああああああっ!??!?」
剣を引き抜こうとした瞬間、神条の身体に容赦ない苛烈な電撃が駆け巡った。
髪の毛は逆立ち、白目を剥いて煙を上げながら、神条は無様に地面へ転がり落ちる。
「神条!? 大丈夫か神条!?」
「くそっ、今度は俺の番だ! 俺の筋力なら——グアアアアアッ!?」
次に挑んだ鬼塚も、同じように豪快に感電して泡を吹いて倒れた。
姫宮も、黒岩担任も、柄に触れた瞬間に容赦ない雷撃で弾き飛ばされ、悲鳴を上げて転がっていく。
「な、なんでだよ……! なんで俺たちじゃ抜けないんだよ……っ!」
焦燥と痛みに悶絶する神条たちを余所に、俺はグループチャットに一言だけメッセージを投下した。
近衛 司: 『言ったろ? その剣は“心から過去の罪を認め、改心した者”にしか従わない。お前たちみたいな浅ましい欲望丸出しのゴミが触れれば、ただの人間黒こげマシーンだ』
神条 蓮:*『ふざけるな近衛ぇぇぇ!! 誰がゴミだ!!』
咆哮する神条たちをよそに、ゆっくりと剣に近づく者がいた。
白石葵だ。
「……私の罪も、これで払えるわけじゃない。でも、みんなを護るために……この力を貸して」
白石が静かに祈りを込め、雷剣の柄にそっと手を伸ばす。
次の瞬間——
暴れていた紫電が嘘のように静まり返り、柔らかな黄金と蒼藍の雷光へと変化した。
ズバァンッ!!
白石の手によって、雷剣が軽々と地表から引き抜かれる。
彼女の身に纏う『絶対防御』の光と、剣から溢れ出す雷撃のオーラが完璧に調和し、神々しいまでの「聖騎士」の姿へと変貌を遂げた。
「す、すごい……! 白石さん、雷の威力が盾と完全に同調してる!」
佐藤が解析の瞳を輝かせて声を上げる。
「な……なんで白石なんだよ……っ! 俺の剣だぞ! 返せよ白石ぃぃいッ!」
地べたで煙を上げながら、悔しさと惨めさで泣き叫ぶ神条。
自分の弱さと罪から逃げず、戦う覚悟を決めた者だけに『力』が集まり、保身と嫉妬に狂う主犯格たちは、ただ雷に打たれて惨めにのたうち回る。
『うふふ、一本の剣でここまで完璧な格差と絶望を作り出すなんて……流石は司様ですわ』
ヘカーティアが俺の腰に手を回し、うっとりと頬を寄せてくる。
「まあな。あいつらが指を咥えて白石の無双劇を眺める姿は、最高のマジックの引き立て役だ」
俺はスマホの画面を閉じ、部屋の明かりを落とした。
地球では世界を魅了する大イリュージョニスト。
そして異世界では、愚者たちに絶望と希望を振りまく「気まぐれな神」。
夜風に揺れるカーテンの向こうで、俺とヘカーティアの静かな笑い声が、どこまでも甘く響いていた。
コメント
1件
おお、第19話読了! これはもう、勧善懲悪の見本みたいな展開だわ🔥 「心から改心した者しか扱えない雷剣」って設定、神条たちが次々に黒こげになって転がる光景が目に浮かぶ…痛快すぎて笑ったわ。 しかも白石さんが静かに覚悟決めて、聖騎士みたいに変貌するシーンは痺れたね。格差と絶望を一本の剣で演出する司様、流石だわ。次回も楽しみ!