〜side葛葉〜
今日は朝から小柳は体調が優れないらしい
朝イチで用意したミネストローネとクロワッサンと薬
スープとパンは半分残してあったが、薬は飲んだようだな
枕元に腰掛け小柳のおでこに手を添える
「‥‥ロウ。‥‥‥‥ロウ?」
「‥‥‥‥‥‥」
スヤスヤと眠るロウを起こさない様に静かに立ち上がり部屋を出る
ポケットから取り出したスマホで個人医へ電話をかけた
「もしもし、今お願い出来ますか?‥‥はい。‥‥‥‥はい。じゃあお願いします」
すぐに主治医はやってきてロウの身体を見てもらう
手際よく全てを終わらせ帰っていく姿を見て安堵する
「‥‥‥‥ん‥‥」
「起きた?」
「ん‥‥何時?」
「お昼すぎ」
目を擦りながらロウが起き上がる
俺もロウの側まで行き、腰を掛けて顔を覗き込む
朝に比べて顔色も良くなっている
サイドテーブルに置いてあったお茶のペットボトルを渡す
ロウはそれを受け取るとゴクゴクと飲み干していった
「お腹減ってない?どうする、食べるか?」
「‥‥‥‥ん、お腹はあんまり‥‥」
「そう?‥‥‥‥ちょっと待ってて」
俺は既に用意していた果物をキッチンから運んでくる
目の前に出されたオレンジやグレープフルーツに最初は興味を持ってなかった様だが、一口食べ始めると持ってきた全てを平らげた
「ちょっと寝過ぎたかも。それで体が怠いのかな?」
「少し散歩でも行く?近所の公園とか」
「‥‥なんかあんまり‥‥外出るのは違うかも。俺って外出嫌いなのかな?」
「まぁ、あまり好きではなかったかもな」
「根本的には変わらないんだな」
「変わっても変わらなくてもロウはロウなんだから。それよりもう少し寝てたら?」
「え?今はあんまり眠く無いですけど‥‥」
「それでも横になってなよ。体の為に」
俺に促されて仕方なさそうに毛布の中に入っていく
食器を片付け、俺はまた小柳の側に腰を掛ける
「‥‥眠れない?」
「あれだけ眠ればね」
毛布から出ている手を握る
その手をマッサージする様に撫でた
「いいよ。俺はここにいるから眠くなったら寝て」
「‥‥‥‥」
クイクイと握った手を引っ張られる
「‥‥ん?」
「ずっといるなら一緒に寝る?」
「いや、俺は‥‥‥‥」
小柳は自分の体を奥にずらして毛布をめくった
「お昼寝するにはちょうど良い時間でしょ?」
「‥‥‥‥」
ロウに言われるがまま隣に横になった
手を繋いだまま‥‥
一言、二言‥‥
会話をしていたかと思えば寝息が聞こえてきた
人差し指で下唇をなぞる
そして首を伸ばしキスをする
「‥‥俺はずっとお前といるから」
.