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〜side小柳〜
ここに来て一カ月以上が過ぎた
あれから俺の身体は調子が悪く、なんだかとても不安になる
ここ数日は吐き戻しが続き、頭が痛い
多分せっかく葛葉さんからもらった薬もトイレに消えていったに違いない
昨日の夜からベッドとトイレの往復で、体が完全に疲れてしまった
「‥‥大丈夫?」
「‥‥いや、ちょっと無理かも」
葛葉さんは背中をささってくれたり、水を持ってきてくれたり、俺とずっと一緒に起きていてくれてる
寝かせてあげたいのに俺の具合の悪さのせいで心配でずっとついてくれていた
俺‥‥なんか大病とかじゃ無いよな?
「ロウ、先生呼んだから。午前中にここに来てくれるらしいから、もうちょっとだけ辛抱して」
「え?俺が行くんじゃなくて?」
「そう。うちで使ってる医者だから気にしないで。どんな病気でも診てくれるから」
そんな事を言ってる間に先生がやってきて体を診てもらった
小さな機械で何かを診ている
そして結果がわかった
「小柳ロウさん。おめでとうございます。妊娠してますよ」
「‥‥‥‥え?」
先生達が帰り静まり返った部屋
俺と葛葉さんは並んでベッドに腰を掛ける
妊娠5週目
あの時の‥‥‥‥
俺は葛葉さんに顔を向ける
葛葉さんはずっと俺を見ていた
その表情は柔らかく微笑んでいる
「‥‥葛葉さん‥‥俺‥‥」
「おめでとう。俺は嬉しいよ」
まだペタンコなお腹に手を触れる
この中に生命が宿ってる
俺と葛葉さんの子が‥‥
「‥‥産んでも良いの?」
「なんでダメなんだよ。おかしいだろ?」
笑いながら俺のお腹を撫でてくれる
俺なんかが産んでも良いのだろうか
でもこの子は絶対産みたい
そんな感情が混ざって気付くと涙が溢れていた
「どうしたんだよ。お前が泣いたら腹の子がビックリしちゃうだろ?」
「だって‥‥俺が一番ビックリしてる‥‥」
「そりゃそうか」
「俺なんかが産んでも‥‥」
「俺なんかなんて言うなよ。ロウの事が良くて選んで来てくれたんだから」
葛葉さんが優しく抱きしめてくれる
「俺、産みます。良いですか?」
「良いに決まってる。ロウ、ありがとう」
「俺の方こそありがとうございます」
抱きしめられた体を一度離され、葛葉さんが俺を見つめてくる
「‥‥‥‥?」
「‥‥‥‥俺と‥‥結婚してくれる?」
「‥‥!」
「‥‥‥‥してくれる?」
「良いんですか?‥‥不束者ですが」
「不束者でも良いです」
「フフッ‥‥よろしくお願いします」
また抱き寄せられギュッと抱き締められる
「葛葉さん!苦しっ‥‥」
「あぁ!ごめん‥‥ごめんな?おチビ」
記憶がなくなって世界にたった1人ぼっちになったように感じてた
そんな俺の側にはいつも葛葉さんがいて、今また新たな生命を授かった
俺に初めて居場所が与えてもらった感じがした
これからずっと過ごしていける『家族』と言う居場所を‥‥
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