テラーノベル
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暗闇。まぶたの裏側に、まだ浴室の寒さが残っていた。
「……っ、は……」
私は、少しずつ意識を取り戻した。
頭がズキズキと痛む。
手を動かそうとした瞬間……
ジャラッ。
金属の冷たさが手首に触れた。
目が一気に覚める。
手……足……動かない……?
恐怖に突き動かされるように視線を上げる。
自分の部屋ではないが見覚えのある場所、そう大晴くんの部屋だった
ただし……
ベッドの四隅に固定された手錠に、私の手足が繋がれていた。
{……おはよう。如月ちゃん。目、覚めたんやな。
ホンマ、買っといて良かったわ。これ。}
落ち着いた声で笑う大晴くんが、椅子に座りこちらを見ていた。
「……大晴くん……なんで……こんなこと……?」
声が震えて、言葉にならない。
大晴くんは、ゆっくり立ち上がり、何かを楽しむかのようにベッドへ近づいてきた。
{なんでって……如月ちゃんが悪いんやで。俺のこと、なんも見てくれへんから……。ずっと誠也くんと晶哉とばっか仲良くして……俺、もう我慢できひんかった。}
その言葉は優しい調子なのに、温度がまったくなかった。
大晴くんの手が、私の頬に触れる。
優しいようで、逃げられない状況が恐ろしさを増幅させる。
{俺、如月ちゃんのこと……好きすぎるんよ。好きすぎて……どうしたらええかわからんようになった。}
彼の指が、喉元へゆっくり滑っていく。
やだ……
その先はだめ……!
「……っ、や……」
弱々しい声しか出せなかった。
しかし大晴くんは、私の怯えた反応を見て、ふっと歪んだ笑みを浮かべた。
{あはは……その顔。如月ちゃん、そんなふうに震えるんや……。可愛いなぁ……ホンマ。}
呼吸が苦しい。
涙が勝手に滲む。
怖い……
助けて……
誰か……!
その頃……
〈如月ちゃん、遅いな……〉
晶哉はソファから立ち上がり、リビングを見渡した。
いない。
どこにもいない。
〈お風呂……?でも、えらい時間かかってるな……〉
不安が胸をよぎる。
その時、階段を降りてきた誠也が声をかけた。
【どうしたん、佐野?】
〈如月ちゃん見てへん?〉
【夜ご飯の後から見てへんで。部屋にもおらんように感じたし……】
2人は顔を見合わせる。
嫌な予感が、同時に背筋を走った。
そして……
キャァァァァァッ!!!!!!
家中に響き渡った甲高い悲鳴。
明らかに、如月の声。
【今の……!】
〈如月ちゃん!!〉
誠也と晶哉は同時に駆け出した。
二階へ。
その“影”が潜む場所へ。
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