コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
私
の名前は、マリア=セレシア。
誇り高き天空の一族の末裔である。
私は、地上の民を見守り導くために、この地へ遣わされたのだ。
私が使命を果たすためには、常に気高くあらねばならない。
たとえどんなことがあっても、弱さを見せてはならない。
それは、天空の民の品格に関わる問題なのだから――。……ああ、もう! こんな堅苦しい挨拶なんて、やってられないわ!! 今の私はただの一市民にすぎないのだから、 どうか寛大な態度で見守ってほしいものだわね。
私は、とある大学に通う平凡な学生だったはずなのに……
どうしてこうなったの!? ある日突然、目の前に現れた光に包まれて……
気づいたら見知らぬ土地にいたのよね。
しかも言葉まで通じなくなっていて、本当に大変だったのよ。
おまけに空からは見たこともない怪物に襲われるし……
もう散々な目に遭ったわ。
だけど、なんとか生き延びることができたのは奇跡に近いと思う。
きっと私を助けてくれたあの少年のおかげに違いない。
彼のおかげで命拾いできたと言っても過言ではないはずだもの。
ただ一つだけ問題があるとすれば……
それは、彼の名前すらわからないということ。
だって仕方がないじゃない。
あんな状況の中で名前を聞く余裕なんてなかったんだから。
それに彼は、どんなふうにも答えられるんです! なぜなら彼は、「私自身がそうであるように」という定義づけから成り立っているのですから。
彼はあらゆる存在に対する責任を引き受けることで、自分自身を定義しています。
だからこそ、彼の言葉は常に力強い。
彼の存在は、決して揺るがないのでしょうね。
もし、私が彼と出会っていたら……きっと、こんなふうになっていたかもしれません。
私にとって彼は、とても身近な存在なのです。
私自身の在り方に気づかせてくれた、大切な友人のひとりですもの。
彼は私のために言葉を紡ぎ続けてくれる。私が望んでいることを、私が欲していることを理解してくれて、私の願い通りにしてくれようとする。それはとても心地よくて安心できて嬉しいことではあるのだけれど、私は少しだけ物足りなく感じてしまう時もあるのです。だって彼は言葉しかくれないから。私には何も与えてくれないから。だから私は彼に対して不満を覚えてしまう。どうしてもっと具体的な方法で愛してくれないのですか? もっと情熱的なやり方で、あなたの気持ちを示してください。私はいつも待っているのですよ。あなたがいつか私の元に来てくださることを。いつになったら私のところへ来て下さるのでしょうか? もうずっと待っておりますのに……。
彼は私にとって大切な存在だった。彼のおかげで私は生きていられた。彼と出会わなければきっと死んでしまっていただろうと思う。それほどまでに彼は私の中で大きな存在であった。
でも今は違う。彼は変わってしまった。昔のような優しい笑みを浮かべることも少なくなって、どこか冷たい表情をしていることが多くなったように思う。それに、彼が口に出すのは常に私への好意の言葉ばかりではなく、別の女性の名前を出すことも多くなった。
それでも私は彼を信じていたのだけれど……。
彼の部屋から出てくるあの女を見たとき、私の心に芽生えた感情は憎しみだった。あんなにも愛していたはずなのにどうしてこんな気持ちになるのか分からなかったけど、気がついたら私は彼を殴っていた。
殴られて倒れた彼を見て我に帰ったときにはもう遅かった。私の拳は彼の頬を打ち抜いていて、私は涙目になりながらその場を走り去った。
私が去ってしばらくしてからも彼は起き上がることもせずにその場に横になったままだった。きっと私に対して怒っているに違いない。
だけどそれで良いと思った。彼にはもっと怒って欲しいと思う。だって私はそれだけのことをしてしまったのだから