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確かにこの先、いつかは結婚しないと両親に心配をかけ続けることになる。1人息子だから孫の顔を見せることが親孝行の1つだと理解はしながら、いつになればそれを実現できるのか……
きっと、それは難しい。
なぜなら俺は、もう何年もずっと……彼女だけを想い続けているから――
「桜木 琴音」
彼女をただ一途に想うことは、単なる義務ではない。自然に湧き上がるこの想いを消すことなんて、絶対にできない。
仕事に集中している時でさえ、ホテルのお客様の後ろ姿を琴音だと勘違いしたり、時には琴音の声が聞こえたような気がしたり……
もはや俺は「琴音」に取り憑かれているのか?
あまりにも長い間この想いを隠し続けていた結果、俺の中ではもうそんなレベルまで達しているのかも知れない。
これは、かなりの重症と言えるのか……
もし恋愛の名医がいるのなら診察してもらいたいくらいだ。この先どうすればいいのか「名薬」があればいいのに。
あの日のホテルでの一夜のこと。
ずっと好きだった人と2人きりになるタイミングをわざと作った。
そこまでは良かったけれど、やはり慣れないことをするもんじゃない。
「最後の思い出」を作ろうなんてキザなことを言ってしまい、しかも、クールを気取った裏では胸の鼓動が激しくて……なかなか治まらなくて困った。
ずっと友達として接してきた琴音のあんな姿を見て、しかも色気に満ちた甘い声を聞いたら、理性なんて最初から無かったみたいにどこかに吹き飛んでしまった。どうしようもなく体が熱くなり、そこからはもう自分の大胆な行動に驚くばかりだった。
気がづけば、好きな女性を抱く……その喜びに深く浸っていた。
まさか、あそこまで体の相性が良いとは――
今でもあの時の「快感」をはっきりと覚えている。
この体に刻まれた琴音の肌の温もり、愛しい人の顔、声、体の感触。その全てを俺は一生忘れることはないだろう。
夢中になって彼女を抱き、俺達はその瞬間だけ……互いに壊れるほど愛し合った。