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「いただきまーす」
「はぁい、どうぞ」
朝からニコニコとお箸を持った7歳の娘、千愛と、その隣に座る夫、宗人の前に麦茶を置いてから、私、秋山風子も手を合わせた。
「いただきます」
「どーぞ。ママの玉子焼き、好き、美味しい」
「ありがと、千愛。もう一切れ、ママのも食べる?」
「うーん…半分ちょうだいっ!」
少し伸びた前髪をお気に入りのピンでとめた千愛のお皿に、お箸で半分に切った玉子焼きを乗せると、千愛はすぐにパクリと美味しそうに食べた。
「朝からたくさん食べてえらいな、千愛」
ウンウンと頷きながら言う夫は、右手にお箸を持ったまま左手はお茶碗から汁椀に持ち替えた。
「今日はパパの好きなお味噌汁よ」
「千愛も好きだよな。キャベツたっぷりの味噌汁」
………… 会話の向き
「春休みだから、朝食はパンでもいいんだけど、パパはご飯の方が腹持ちいいって言うから今日もご飯」
「千愛の身体づくりを考えたら、ワンパターンじゃないほうがいいに決まってる」
「…………」
私は千愛が小学校に入学してからずっと、千愛の学校給食に合わせた朝食をつくる。
パン給食の水曜の朝はご飯、水曜以外は米飯給食だからパンの朝食を準備する。
それは、千愛のことを大事に大事に…何よりも大事にする夫が私に課したこと。
決して間違ったことではないし、素直に応じられたことだけど、当たり前のように食べるだけでなく、向かいに座る私の言葉まで隣の千愛に返す夫へ、朝からもやっとする。
……はぁ……こんなのは日常的で気にしていられない。
「行ってくるな」
「「いってらっしゃい!」」
千愛より先に家を出る夫を、玄関で千愛と見送るのも日課。
「いってきます。千愛も気をつけてな」
とか
「いってきます。千愛も頑張って来いよ」
と、必ず娘へ一言伝える夫。
これも毎朝で、玄関で目の合わない私は時折、自分の“いってらっしゃい”に応えてもらえてないのかと思ってしまう。
…… 娘に嫉妬することはないけれど…もやっとはする。
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