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再びフロントに立つと、緊張で手が強張るのを感じた。
けれど、さっきの律の声が耳に残っている。
――「……そうですか」
いつもより少し柔らかかった響き。
それを思い出すだけで、胸の奥がほんのり熱を帯びる。
「桜坂さん、お客様が来ます。笑顔を忘れないでください」
横から律の声が飛ぶ。振り返ると、彼は淡々と視線を前に向けていた。
「……はい」
返事をしながらも、華は小さく唇を噛む。
厳しいだけの人だと思っていた教育係。そのわずかな優しさを意識してしまう自分に、戸惑いが広がっていた。