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ATTENTION⚠

██は菊の友達です(女子)

高校生ifです

原作みたいな健気なアーサー君は居ません(ちょっとメンヘラ寄り)

誤字脱字がありましたら、コメント等でお教えください

ただの自己満です




窓辺に立つ少年3





「・・・・アーサー」




多分、その声を聞いたのは、そばに立っていた私だけだった。



「あの、どうかしたんですか?」

「ううん」

と笑ったけれど、私は気になり、先輩が出て行った後を追った。

「あの、すみません。さっき、██が描いていた絵を見て、びっくりしてましたよね」

「貴方は?」

「私は、あの絵を描いている██の親友の、、いいえ、、親友だった本田菊です。」

寂しそうに笑うと、先輩はまた眉を寄せた。

「あの絵の人、知ってるの?」

「多分アーサーという人だと、、、██がそう言っていましたので」

「やっぱり、、、」

「あの、誰なんですか、アーサーって。██はあの人に夢中みたいなんです」

「私もよく知らない」

先輩は一度言葉を切ってから、意を決したように口を開いた。

「あの絵の人、私が高校一年生の時の友達が描いていた人と、そっくりなの」

「えっ?」

「1人、美術室に残って、なにかに取りつかれたように夢中になって描いてた。それがアーサー」

その言葉を聞いたとたん、背中がゾワッとした。██と同じだ。

「誰なんですか、アーサーって」

「部室に飾ってある『窓辺に立つ少年』っていう絵、知ってる?」

「はい、いい絵ですよね」

「あれがアーサーって人らしいの。作者の彼氏で、外国人のイケメンだったんですって」

そう言われても、後ろ姿では、イケメンかどうかなんて、分かるはずない。

「でも、どうしてその人の絵を?」

「あたしは、そん時3年だった先輩から聞いただけだから。友達が夢中になって描いてるのは、あの絵の人だって」

「まさか、そのアーサーって人、死んでるとか」

「幽霊とか?そんなこと有り得るわけないでしょ。ただ、入選した後、絵の作者とは喧嘩別れしたんですって。だから、描いた人もあの絵を美術室に置いていったらしい」

私は、ふっと息を吐いた。幽霊なんて。でも何年も前に先輩の友達が描いてた人と、██が描いている人が同じなのだろう。またゾクッと悪寒が走った。

アーサーは確かに居る。姿を見たし、声も聞いた。██と会話していた。██のうっとりした声がよみがえる。耳を塞ぎたくなった。

「その友達はどうなったんですか」

「転校した。絵にのめり込んで、他のことが何も出来なくなったの。それで病気になって。絵は完成しなかったけれどね。あの絵書くのやめた方がいいんじゃないかな。完成させてはいけない気がする」


██が風邪で学校を休んだ。私はチャンスだと思った。あの絵をどうにかしてしまおうと思ったのだ。

その日、私は一人で美術室に一人残った。

そして、██が描いている絵を正面から見つめる。キャンバスの中で、かすかに微笑む少年は確かに美形だった。じっと見つめていると、魅入られそうになる。慌てて視線を逸らして、絵に向かって呟いた。

「██を返してください」

筆に黒い絵の具を染み込ませて、真っ直ぐ絵に向ける。黒く塗りつぶしてしまえばいい。そうすれば絵は完成しない。██は私のところに戻ってくる。


「やめろよ!!」


声に驚いて振り返る。鋭い目で睨みつけているのは、アーサーだった。

「もう少しで、この絵が完成するのに。素晴らしい絵、素晴らしい俺」

アーサーはうっとりと絵を見つめていた。

「、、、貴方、何者ですか?██のことはどうするおつもりで?」

██はこのままでは先輩の友達みたいに、、あんなふうになってしまう。

アーサーがニヤッと笑った。

「もしかしてお前、妬いてるのか?」

「違います!私は██の事が心配で「はははっ!」っ、、」

「親友?██はお前のことなんて、忘れてる。だって俺の事しか見えてないからな。当たり前だが。女なんか誰だって、俺を好きにならないはずない。」

なんて自惚れている人だろう。けれど確かに、アーサーはとても美しい少年で、正面から見つめられると、胸がドキドキしてくる。

はねているけど、柔らかそうな髪。すっきりと澄んだ瞳、キリッとした唇。眉毛は少し厚い。クラスのむさ苦しい男子とは全然違う。こんな人に、██は愛されている?

「それなのに、あいつ、後ろ姿なんか描きやがって。俺は顔を描くと思ったから、モデルを引き受けたのに。許せない」

アーサーは呟いた。私は目を逸らした。見てはいけない。そんな気がしたのだ。

けれど、吸い寄せられるように、また見てしまう。男でも惚れてしまいそうだ。私は、あえて冷ややかな声で聞いた。

「それで、喧嘩したんですか。描いた人と」

アーサーは眉をひそめた。

「当たり前だろ。顔を描かない後ろ姿の絵が入選するなんて、許せる訳が無い。あいつとは絶交した。」

「顔を描いてくれって頼めば良かったのでは?」

「頼む?そんなこと、分からなくちゃ駄目だ。誰だって美しいものを描くべきなんだ。そして、みんなが俺に夢中になる。」

「私は貴方なんか好きじゃないです」

アーサーは、私の言葉なんか意に介さないというふうに、魅惑の笑顔で私を見る。

「お前は、男のくせに██に嫉妬しているだけだよな。俺の為に可愛くなった██に」

「ち、ちがいます」

前ほどきっぱり否定できなかった。

██に置いて行かれるような気持ちになったのだ。それに、私だって本当は、恋人がいる人がとても羨ましかった。

「正直に言えよ。██の為だなんて、嘘だって。友情なんてその程度だ。」

「そんなことありません!!!」

たとえ私が██を羨ましいと思ったことが事実でも、やっぱり私達は親友なのだから、██を心配する気持ちに、嘘はない。

「なぁ、お前、男だけど外見は女っぽいし、、、どうだ?俺と付き合わねぇか?お前も俺みたいな奴と付き合えるし、死ぬまで一生愛してやるから」

目を開く。アーサーの方を見ないようにして、私は絵筆を振り上げた。

「待てよ!この絵をめちゃくちゃにしても、友達でいられると思ってるのか?!」

ドキッとした。もしも私がこの絵を駄目にしたと分かったら、██はどう思うだろう。

「お前は██を失う。孤独だ。」

██に嫌われたくなかった。やっぱり絵を傷付けるなんて、やめた方がいいのだ。

筆を降ろしてアーサーに背を向ける。このまま美術室を出ていけば、██と友達で居られる。今までみたいに仲良くできなくたって嫌われるよりは、いい、、、

でも、本当にそれでいいの?

今の██はぼんやりしてアーサーの絵を描くことにしか興味が無い。そんなの本当の██じゃない。

私はまた振り向いた。そして、再び、絵筆を振り上げた。

「やめろ!!」

アーサーが叫んだ。けれど、キャンバスに向かって私は大きく‪✕‬を描いた。

「よせ、、、」

アーサーは顔を覆った。指の隙間から、怖い顔で睨んでくる。私は逃げるように美術室から走り出た。




次の日、私は学校を休んだ。夕方、██から電話がかかってきた。私を疑って、怒って電話してきたに違いない。恐る恐る電話に出る。ところが██は心配するような声で言った。

「風邪引いたって?わたし、うつしちゃったのかな。大丈夫?明日は来られるよね」

██は絵のことを一言も言わなかった。


その次の日、美術室に行くと、██は、キャンバスに花の絵を描いていた。

「██、あの少年の絵はどうしたんですか?」

「つまらないから、やめちゃったよ」

「そしたら、絵はどうしたのですか?」

「捨てたよ。なんであの絵を描くことに夢中になってたか、よく分かんないんだよね」

██はスッキリとした笑顔で言った。

以前の██が帰ってきた。そんな気がした。

絵を完成させなくて本当に良かった。


その日、私は一人、美術室に戻った。なにか忘れ物をしたような気がしたのだ。

『窓辺に立つ少年』の絵を見る。素敵な絵だ。だけど、この少年アーサーは、顔をかいて欲しかったのだ。自惚れの強い人。けれど男の私でも魅入ってしまうほど、美しい人だった。

その時背後で何か気配があった。

振り返ると、私が今、頭の中で思い描いたその人が立っていた。2日前のことなんか忘れたように、笑顔で私を見つめている。

なんて、素敵な人なんだろう。この人に愛されたらどんなにいいだろう、、、


「なぁ、菊。俺の顔、描いてくれるよな」

私よりずっと背の高いアーサーにふいに引っ張られる。引き寄せられて、アーサーの胸に頰があたった。腕が背中に回り、強く抱きしめてくる。白い綿シャツを通して私の頰にアーサーの体温と鼓動が伝わる。同性同士なのに不思議と不快感がない。それに、声が心地よい。いつまでも聞いていたいような声。

夢心地のまま、こくりと頷き、クロッキーブックを開き、鉛筆を走らせる。

アーサーが、私だけを見つめてくれている。

「菊。前髪をあげた方が、可愛い」

私は頷く。この人の為だったら、なんだってする。

「やっぱり可愛いな。俺だけの、世界一の菊。誰にも渡さない。さぁ、早く、俺の絵を描いてくれ。そして絵を必ず完成させるんだぞ」

私の体を優しく包み込む暖かい腕に、私は嬉しくなり、頬を染めて頷いた。







END

この作品はいかがでしたか?

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コメント

3

ユーザー

なんでこんなメンヘラって、てぇてぇなんだろう、、幸せぇ😇

ユーザー

一気に読んじゃいました😭💕好きです🫶

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