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怖い……怖い、怖い怖い怖いなんでなんでどうして。
怒ってるんだ、僕らがしてきたことを怒ってるんだ。
じゃなきゃあんなことしない、できない、やれるはずない。
そんなに嫌だったんだ、見掛けたら止めに入ってたけどそれでもカバーしきれてなかったんだ。
あとは僕だけ、僕だけが1人で残ってしまった。
みんなで解いた君のこと、今更知った君のこと。
もっとちゃんと向き合っておけばよかった、そうしたらこんなことにはなってなかったかもしれないのに。
ごめん、ごめんごめんごめんごめんなさいごめんなさい。
咄嗟に彼の部屋に駆け込んで扉の鍵をかけて、完全なるアウェイに陥った。ここは君のテリトリー。何をするにも困らない、神出鬼没の悪霊となった君に僕ができる最期。兄弟の血でじっとりと濡れた服を脱ぐ。勝手だが、クローゼットを漁って彼の服を着た。震える体を抱きしめてベッドにダイブをする。彼の頭を支えていた枕を抱きしめて祈る。
「天にまします我らの父よ。願わくは彼の日用の糧を今日も与えたまえ。我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく、 彼の罪をも赦したまえ。彼を試みにあわせず、悪より救いいだしたまえ。アーメン。」
本当は守りきれてなかったんだ、守ったつもりになってただけなんだ。
神様みたいに上手くはいかない。神様は願いを聞いてくれるけど彼に僕の言葉は聞こえないかもしれない。それでも彼が本来の魂になることを願ってる。
「祈りか、君は神を信じていたんだね」
勢いよく体を起こした、彼の声だ、あのころと変わりない声。いや、もっと邪悪な何かが交じってる。耳から痺れて体から力を奪われるような声だ。窓から?いない。まだ明るい、いや、暗い。知らないうちに夜が来た、夜を呼ばれてしまった。彼の時間が来てしまった。水色の綺麗だったカーテンは闇を吸って重たくなる。勉強机の上のパソコンが通知を鳴らし、驚かされる。開かれているのは文章入力用のソフト。
「君は信者なんだね、でも僕は死んだけど神様の元へは行けなかったし、神様がいるだなんて聞いたこともない。救世主についてもない。わかってるでしょう、彼らが居ないことだなんて。あれは作り物だよ、僕が証明してあげたでしょう?書物には魂を所持している訳では無い、魂こそが我々で死人は知らないし感じないと書いてある。だけど僕は列記とした霊体なんだ。意識のある霊など存在しないというのならいったい僕はなんなんだい?信者なら教えてよ、僕は何、僕らは何?
答えてよ」
早々と打ち込まれる文字に震えが止まらなくなる。まくし立てるようにエンターキーがカチリ、カチリと押される。ただただ流れていく画面を見ているしかできなかった。カラスが何度か鳴く声は、まるで彼を援助しているみたいだった。しかし徐々に近づいてきていることに気がついた。何か言わなければ、みんなは何になったんだ?僕が信じてきた今までは偽物だったのか、確かに救われていた感覚があったのに。ああ、分からない。信じてたい、だけど信じてたら答えられない。何かが勢いよく落ちるような風の音と悲鳴のようなカラスの声、ガラスの碎ける音が襲ってきた。鳴いていたカラスだ、くちばしが曲がり血だらけになってパソコンの液晶をかすって濡らした。取り替えた服に血が滲む、また命が消えてしまった。
「もう……なんだっていい、神様がいなくてもいいから。もうやめてよ……っ」
パソコンの横に転がったカラスの頭を撫でながら涙を拭ったために目の周りが赤に染った。涙と混ざって頬をすべっていく。暫くはそうしていたが、落ち着きが戻ってきた。パソコンには
「ありがとう、新しいことを知ることが出来た。でも、君のことを諦めたわけではないからね」
と。
一体僕は何を彼に教えてしまったんだ。また彼に大切ものを奪われてしまうのか。
キミの幸せを願っているのは本当なんだ、だから早く救われて欲しいよ。