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フロントの隅で書類を抱え直した華の姿を、律は横目でとらえていた。
肩は落ちていない。うつむくのではなく、まっすぐ前を見ている。
――昨日までとは違う。
律は胸の奥でそう感じた。
失敗は相変わらずだが、何度でも立ち上がろうとする気配があった。
「桜坂さん」
呼びかけると、華が慌てて振り向く。
「は、はい!」
「……書類の扱いは悪くありません。そのまま続けてください」
短くそう告げると、彼女の瞳がぱっと明るくなった。
律はすぐに視線を戻したが、その反応が妙に印象に残った。