こんにちはミラ🍬です。
本当に私が書くとつくづく話が進まないんですよね。なんでだろう。
純白の天使
「うぅ゛…んぁ?」
見慣れない洒落た間接照明の回る天井。ブラウンウッドの落ち着いた雰囲気が目に優しい。
「おー、三途。起きたか?」
寝ぼけ眼を擦る三途の視界にひょこっと現れたのは、シンプルなエプロンに身を包んだ、反社とは思えないほど家庭的な格好をした九井だった。
「お前何そのカッコ。」
当然の疑問が思わず三途の口をついて出る。
「何って…今てめぇの朝ごはんを作ってやってんだよ。無駄口叩いてる暇あったらさっさと顔洗ってこい。」
「うーっす。んんーーー。」
大きく伸びをして息を吸い込むと、確かに美味しそうなハムだか玉子だかの香りが鼻をくすぐる。九井は普段過労死寸前まで働く故料理をしている時間などなく、更に金だけは有り余っているのでいつも出前や外食で済ませているが料理を作らせると意外と上手いのである。滅多に作ってくれないが。
「九井ママー、今日の朝ごはん何ー?」
「ママいうな莫迦、特に大層なもんは作ってない。普通に味噌汁と、玉子焼きと、ベーコンとほうれん草のバター炒め。」
「え、美味そうじゃん。」
「シンプルイズベスト。」
「たしかに。」
ほかほかと温かい布団に未練を感じながらも三途がもぞもぞと布団を這い出る。
「三途、お前髪が大爆発してるんだけど。」
「るっせ。朝は毎回こんなんなんだよ。」
「マジか…。」
九井の言う通り、三途の薄桃色の髪は信じられない方向に跳ね散らかり、重量を無視して逆立ち、兎に角そのまま美術館にでも飾れそうな勢いであった。まぁ三途自身神の傑作のような顔をしているため本当に飾れるかも知れない。
「九井、洗面所どこだっけ。」
「トイレの横のドア。」
「りょーかい。」
三途がもう一度背伸びをすると、昨日九井に貸してもらった薄いtシャツの裾の下から割れた腹筋がちらりと覗く。がしがしと頭を掻いて大きく欠伸をするとまだ眠たいのかふらふらと洗面所へ向かっていった。
「これうめぇ、え、小松菜うめぇ。九井お前意外と料理できんのな。」
「ありがと…ん、え?いや、それほうれん草。」
「ほうれん草と小松菜って一緒じゃないのか?」
「もっかい義務教育受け直してこい莫迦。」
「何が違うんだよ。一緒じゃん。」
「そもそも根本的に小松菜とほうれん草は別物なんだよ。葉っぱの形だって違うし、茎だってほうれん草の方が細い。わかりやすいのは根元だな、小松菜は薄緑、ほうれん草は赤い。」
「・・・マジか。ほうれん草と小松菜って別物だったんだ。」
「俺はお前のアホさ加減に驚嘆してるよ。」
そんな会話をダラダラと続ける二人の間には九井の作った美味しそうな朝ごはんたちが行儀良く並べられていた。いつもこだわりの華服に身を包んでいる九井だが、どうやら美的センスもピカイチらしい。きゅうりの柴漬けは小さな小鉢に彩りよく盛られ、星形に切られた人参の沈むお味噌は漆塗りの品のある汁椀に湛えられている。黄金の玉子焼きはふっくらと焼き上げられ、狐色の焼き目を見せつけながら桜の趣向が施された平皿に鎮座している。先程話題に登っていたベーコンとほうれん草のバター炒めは玉子焼きの横に そっと盛られて、特別な輝きを放つ艶やかな白米は美しい陶器のお茶碗にこんもりと盛られていた。
「ん、この味噌汁もうめぇ。あんま食べたことない味がする。なんか隠し味とか入ってんの?」
「いや別に。あー、赤味噌だからじゃないか?三途んちでは米味噌使ってただろ。」
「あ、そうなの?俺が使ってたの米味噌って言うんだ。」
「おま…食に対しての関心なさすぎだろ。人間の3大欲求じゃん。」
「俺睡眠欲が8割だから。」
「朝のお前みてそんな気はしてた。」
「おう…え、九井、今何時?」
「12時。」
「やっっっっっっっっっっっっっっっば。死んだ。なんで起こしてくれなかったんだよ⁈」
「いや、だって三途お前耳元でフライパンにオタマ打ちつけても起きなかったんだぞ⁈てか逆にお前いつもどうやって起きてんだよ!!」
「いつも…いつもは笹川がモーニングコールで超爆音デスメタル聴かせてくるから。」
「あ、あの冷徹無口の笹川にそんな趣味が…」
「だろ?最初は普通モーニングコールだったんだけど、だんだん過激になっていってしまいにはデスメタルに…」
「あーうん。デスメタルは多分お前の所為だわ。ごめんな笹川、変な勘違いをしそうになって、上司がこんなクズで。」
「しょうがねぇだろ、朝は苦手なんだよ。あぁ、それで、何がやばいって今日鶴蝶に話があるから朝はできるだけ早くこいって言われてて。しかもかなり真剣な雰囲気で。」
「え、それやばくね?」
「・・・やばい。どうしよう九井。」
「やめろ、俺に縋るな、俺を巻き込もうとするな。」
わぁわぁと騒ぐ三途と九井、二人の頭に同じ回想が広がる。鶴蝶は怒らせたらダメだ。これは幹部内の常識である、普段温厚な奴ほど怒ると怖い、この世の理でもある。
「三途、取り敢えず謝罪の連絡を入れろ。今すぐ。」
「えぇ、でも…」
「いいか、お前の言動に俺たち幹部の命がかかっている。もう誠意を尽くして謝罪するしかない!」
「うぅ…」
鬼気迫る勢いの九井に追い詰められ逃げ場がなくなった三途が眉根を寄せて、怯えた目をしながらも、震える手で自身の携帯電話に指をかけた…
♡3000で続きます。
コメントは作者のモチベーションに直結していますので、是非コメント残していって頂けたらとっても嬉しいです!
Special Thanks. 明司-三途-千 さん
コメント
4件
ココと春千代の会話が平和でとても暖かい気持ちになりました。いつも怒らない人を怒らすと怖いというのはとても分かります。
ココ春地雷だったんですね。でも書いてくださりありがとうございます。 鶴蝶は怒らせたら駄目。これ常識ですよね。 笹川の起こし方が独特過ぎて面白かったです。
ココ春大好きなのに少ないからこうやって地雷だったのにも関わらず書いてくださったのに感謝しかない😭