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「次の店長会議で言ってみるよ。だからお願いだよ。こんなことはもうやめるんだ…!!」
深々と頭を下げてくる店長。私は、唖然と見下ろして呆気にとられていた。
よく分からないが、大きな勘違いをしているらしい。
「ちょっ…」
「えー?ちょっとあれ…」
その時、ボソッと近くで声がした。私と店長は、同時に周りを見渡す。
すると、私達を遠巻きに見ながらひそひそ話しては通り過ぎていくカップルの姿があった。
そこでやっと、今の状況を理解する。
若い女性の前で必死に頭を下げる中年男性。
そして、ここはラブホ街。ヤらせてくれ、と頼み込んでいるシチュエーションに見えなくも…ない。
羞恥心で、頭から湯気が出そうになる。
店長も、同じ気持ちだったらしく、アワアワと体勢を整える。
「ご、ごめん。なんか、誤解されちゃったね…場所、変えようか。俺、車で来ているんだ。ついでに送るよ。」
「…別に構いませんけど。」
もう、私から話すことは何もなかったが、送ってくれるというので着いていった。電車代を浮かせる為だ。
店長の、1歩後ろを歩く私。大人の貫禄など微塵も感じない情けない背中。
さっきの観察力はどこからきたのか、ずっと考えていた。