彼
…本屋行きてえな…。
ふとそう呟きベッドに預けていた身体を起こし硬くなった肩甲骨を軽く動かす。
今はもう昼だった。朝食すら食べずベッドで寝転がり電子漫画を読んでいたのである。当然、腹も減っていた。
ちょっと食ってから行くか…
面倒と食欲。どちらが勝つかと言えば其れは当然食欲。のそのそと布団から出てぺたぺたと床を歩く。
えぇと…何食おうか…
朝食、否、昼食には悩んだ。最近は特に 一般的なちゃんとした食事 をしていなかった為冷蔵庫を開けるとほぼ空だったからだ。
しかし、昨日半額で買った食パンが残っていた。トースターに食パンを入れ、冷蔵庫を再び開けて苺のジャムとバターを取り出す。トーストを焼いているその暇な時間、本屋に行く為の支度を済ませる事にした彼は台所から去り洗面所へと歩いた。
ぴちゃぴちゃと水音を立て顔を軽く洗う。ぼさぼさの蓬髪を簡単に整え、鏡で確認するとトースターが焼けたと音を立てる。急ぎ足で台所へ向かった。
やっば…焦がした…
少し黒くなったトーストを見て呟いた。しょうがないと思い焦げたトーストを2等分にしてからバターと苺ジャムを塗った。
…いただきます。
サクサクと音を立てて咀嚼する。
ふと台所で立ったままは良くないなと思ったのかトーストを持ちダイニングへ向かった。
椅子に座った。目の前にあったもう1つの椅子を見てトーストの半分にした1切れを目の前の椅子の傍に置いた。
目の前の席は今も彼奴がいた筈だった。まぁ、もうきっと戻ってくることは無いので未練はない。そう思いつつ彼の席の傍にあったトーストも咥える。
ご馳走様でした。
食べ終わりそう呟く様に言うとお皿をシンクに置きベッドの方へ向かう。
スマホを取ろうとしたら突然通知が鳴った。驚きのあまり肩を震わせた。
ねえ、遊園地行かない?
彼奴からの連絡だった。
あはは…幻覚だよね…。
目を擦った。頬を叩き、スマホを持ち、通知欄を確認した。
確かに彼奴からの連絡だった。
……予定変更だな。
スマホの画面から目を離し彼奴の席を見てそう呟いた。
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