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今からX年前。俺たちは、もう使われていない古びたビルで出会った。
お互い、限界だった。
「……何してる?」
背後から声が聞こえた
桃は落ち着いた声で訊いた。
その目には、迷いも怒りもなく、ただ真剣さだけがあった。
そこには学生らしき子が、ビルから飛び降りようとしていた。
俺――紫は思わず振り返り桃を睨みつけた。
「……じゃまするな!」
怒りと焦りが混ざった声だった。
でも、桃は一歩も引かない。
「……死んじゃだめだ」
必死に俺を止めるその姿に、俺は——なぜか、惹かれてしまった。
理由なんてわからない。
桃は何故か分からないが止めたくなった。
その必死さが、なぜか紫の心に引っかかった。
理由は分からない。
でも、目が離せなかった。
腕を離さない桃を見て諦めた紫は、その場に座り込んだ。
それと同時に桃も紫に寄り添うように座り込んで話しかけた。
どうしてここに来たのか。
桃は会社での理不尽な扱い。
紫は学校での孤立。
なぜここまで自分のことを包み隠さず言えるのか不思議に思った。
だが、わかることは、
どちらも、もう疲れきっていた。
生きるのも、死ぬのも、どうでもよくなるくらいに——。
「お前はまだ若いだろ?。生きろ」
桃はそう言った。
その目は、逃げ場のないほど真剣で。
紫は普段こんな綺麗事は大嫌いだったのに
なぜか心が揺れた。
「じゃあ、お前も死ぬなよ」
俺は思わず口に出した。
なぜ、そう返したのか自分でも分からなかったが。
桃は少しだけ笑った。