――ドンッ。
夜空に大輪の花火が咲いた。
鮮やかな光が池の水面に揺れ、二人の顔を照らす。
「きれい……」
華は目を細め、夜空を見上げた。
律は隣で静かにその横顔を見つめる。
真剣な想いが、胸の奥からこみ上げてくる。
「……桜坂さん」
華が振り返ると、律はまっすぐに彼女を見ていた。
「俺は……もう、あなたの教育係じゃなくていい。
ひとりの男として、あなたを大切にしたい」
花火の音に混じりそうな声だったが、華の耳にははっきりと届いた。
「桜坂華さん。俺と、付き合ってください」
華の目が大きく潤む。
「……はい」
その一言に、笑みと涙が同時にこぼれた。
律はそっと手を伸ばし、華を抱き寄せる。
夜空にまた大輪の花が咲いた瞬間、二人の唇は静かに重なった。
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