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「李化は立派なヒーローになってね」
十二年前、父親から言われた言葉。
言われた経緯は覚えていないが
それでも今現在まで 鮮明に覚えている。
今思えば、その時のお父さんは
儚くて、どこか 苦しそうな表情で
私を見つめていた。
ねぇ、お父さん。
今どこで何してるの?
また、会えたらいいな。
✧••┈┈┈┈┈┈••✧
「……ん。」
まだ日の昇らない午前5時。
私はひとり、ベッドの上で目覚める。
私の名前は質理李化。
化学の“個性”を持つ中学3年生だ。
今日も
同じように学校に行って、
同じように授業を受けて、
同じように家に帰って……。
そんないつもと 何も変わらない
そのままの日常を 過ごすと思っていた。
しかし、神様というのは
時に無慈悲なものらしい。
私が家に帰ると、
いつもは何も入っていないポストに
一通の手紙が入っていた。
初めは“誰かのイタズラ”だと思って
封を開ける事を躊躇っていた。
しかし、それに勝った好奇心で
私は手紙の封を開けた。
手紙には
所々油性ペンで書かれた
一見、訳の分からない文字 が書かれていた。
「この文字配置……“蛍光物質”かな」
私はすぐにブラックライトを 取り出して
手紙に当てる。
すると、隠れていた文字が浮き出てきた。
久しぶりです。お元気ですか?
お父さんは元気です。
李化とまた会えることを
楽しみにしています。
誕生日おめでとう
「……まだ覚えてたんだ、お父さん。」
ツー、と涙が頬をつたう。
“李化は立派なヒーローになってね”
その時、父親から
言われた言葉を思い出した。
私は、何がなんでも
父親との約束を果たすつもりだ。
そしてこれが、私の原点だ。