テラーノベル
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世界が、静かすぎた。
焚き火の跡。
砕けた地面。
切れた鎖の破片。
――ノアだけが、いない。
レイヴンは、その場に立ち尽くしていた。
「……くそ……」
地面に拳を叩きつける。
「……守るって……言っただろ……」
喉の奥が、ひどく熱い。
視界が、少し滲む。
「……泣いてる場合じゃねえ……」
歯を食いしばり、立ち上がる。
そのとき――
「……レイヴン」
背後から、アイリスの声。
彼女は、すでに治療を終えていた。
顔色は悪いけど、目ははっきりしてる。
「……行くんでしょ」
レイヴンは、頷いた。
「……当たり前だ」
「……止めないよ」
アイリスは、ノアの落とした指輪を拾い上げる。
「……これ、置いてった」
レイヴンの胸が、ぎゅっと締まる。
「……必ず……連れて帰る」
「……うん」
アイリスは、小さく微笑んだ。
「……死ぬ気でね」
⸻
町への道。
レイヴンは、無言で歩いていた。
ノアの足跡。
黒い魔力の残滓。
「……黄昏の徒……」
歯を食いしばる。
あの仮面の男の声が、頭から離れない。
――“完成品にしよう”。
「……ふざけるな……」
そのとき。
道の脇に、倒れてる人影。
若い男。
息はある。
「……おい」
揺さぶると、男が目を開ける。
「……あ……」
「……ここ、誰か通らなかったか」
男は、震えながら言う。
「……黒いローブの連中……
女の子を……縛って……」
レイヴンの心臓が跳ねる。
「……どっち行った」
「……東の……廃都……」
レイヴンは、男に水を渡す。
「……ありがとう」
そして、全力で走り出した。
⸻
――廃都・グラディオス。
崩れた塔。
割れた道。
死んだ街。
不気味なほど、静かだった。
「……いるな……」
レイヴンは、剣を構える。
その瞬間。
背後から、声。
「……久しぶりだな」
振り向く。
そこにいたのは――
第3話で出てきた“観測者”の男。
「……お前……」
「……彼女、取り返しに来たんだろ」
男は、肩をすくめる。
「……忠告しとく」
「……何だ」
「……今の君じゃ、死ぬ」
レイヴンは、剣先を向ける。
「……どこにいる」
男は、少しだけ真剣な顔になる。
「……ノアは……
“核心部”に連れてかれた」
「……核心部……?」
「……黄昏の徒の本拠地だ」
レイヴンの喉が鳴る。
「……教えろ」
「……条件がある」
「……何だ」
「……君も……
“覚悟”を見せろ」
その瞬間。
男の魔法が発動する。
黒い魔法陣が、足元に広がる。
「……試験だ」
⸻
レイヴンは、全力で剣を振るう。
だが、全く当たらない。
男の分身。
幻覚。
時間ずらし。
「……っ……」
レイヴンの腕が、切り裂かれる。
血が、地面に落ちる。
「……彼女のためなら……
どこまで行ける?」
レイヴンは、歯を食いしばる。
「……死ぬまでだ……!!」
その瞬間。
剣が、光る。
今までと違う。
レイヴン自身の魔力が、初めて“覚醒”する。
次の一撃。
幻覚をまとめて切り裂いた。
男は、少し驚いた顔をする。
「……へえ……」
そして、笑う。
「……合格だ」
⸻
男は、地図を投げる。
「……この地下遺跡。
そこが入り口だ」
「……なんで教える」
「……面白いから」
男は、背を向ける。
「……それと……」
振り返らずに言う。
「……彼女、
まだ“壊れてない”」
レイヴンの胸が、ぎゅっとする。
「……必ず……連れて帰る」
男は、くすっと笑った。
「……期待してるよ、騎士くん」
⸻
夜。
地下遺跡の前。
レイヴンとアイリス。
「……行くよ」
アイリスが言う。
「……私も行く」
レイヴンは、少し迷う。
「……危ない」
「……それでも」
アイリスは、強く言った。
「……あの子、
もう“妹”みたいなもんだから」
レイヴンは、頷いた。
「……分かった」
二人は、暗闇に足を踏み入れる。
⸻
その頃――
薄暗い部屋。
ノアは、鎖に繋がれたまま座っていた。
目は虚ろ。
「……私……
生きてて……いいのかな……」
そのとき。
壁の向こうから、声。
「……実験、始めるぞ」
ノアの指が、震える。
「……レイヴン……」
小さく、名前を呼ぶ。
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