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そして1週間後。

また小鳥に変身してシンデレラの部屋へとお邪魔すると、わたしの羽ばたきの音で気づいたのか、シンデレラがパァッと表情を明るくさせて小走りで近づいてきた。


「小鳥さん、こんにちは。また来てくれたの?」


「ピチチチ!(こんにちは)」


軽く羽を上げて挨拶すると、シンデレラが楽しそうに微笑む。


「ふふ、可愛い」


(可愛いのはあなたのほうよ……)


可憐な笑顔に見惚れていると、シンデレラが「ちょっと待ってて」と言って、棚から何やらお皿のようなものを二つ取り出して、パンくずと水を入れてくれた。


「さあ、召し上がれ」


もしかしなくても、小鳥のわたしのために用意してくれていたようだ。


(なんていい子なの……! もう舞踏会の日は思いっきり綺麗に着飾らせてあげるからね!)


あとで王都一のブティックに行って、最新の流行をチェックしてこなくちゃと思いながら、パンくずをもりもりと食べる。


すると、シンデレラがわたしと目線を合わせるようにしゃがみ込んできた。


「この間、あなたがいなくなったあと、なぜかお部屋が綺麗になってて……。もしかして、絵本のお話みたいに小人さんがやって来てお掃除してくれたのかな?」


「ピチ、ピチチチ(ふふ、いい線ついてるわね)」


「それか、実はあなたが魔法使いさんだったりして」


「ピッ、ピチチ……!?(バ、バレた……!?)」


シンデレラの鋭い推理に焦っていると、シンデレラがクスッと笑った。


「なんて、そんなはずないか。でも、なんだかあなたは私にとって特別な鳥さんのように思えて……。だから、お名前をつけてもいい?」


(名前……そういえば、今のわたしってちゃんとした名前がなかったかも)


原作での魔法使いはたしか「妖精のおばあさん」みたいなざっくりとした呼び名しかなかったような気がする。


前世のわたしはキョウコという名前だったけれど、今の見た目に日本人ネームは合わなさそうだし、新しい名前で心機一転したい気もする。


「ピチピチチチ!(ぜひお願いします!)」


片手を上げてお願いすれば、わたしの意思が伝わったのか、シンデレラはほっとしたように頬を緩めた。


「よかった、そうしたら……リュシーっていう名前はどう? 《光》っていう意味なんだけど、あなたの羽が銀色で月の光みたいに綺麗だと思って考えてみたんだ」


(リュシー……なんて可愛い名前!)


たった一度会っただけのちっぽけな野良小鳥のために、こんなに素敵な名前を考えてくれていたなんて、嬉しくて泣いてしまいそうだ。


とっても気に入ったことを伝えたくて喜びの舞を踊っていると、また突然部屋のドアが開いた。嫌な予感がする。


「シンデレラ! ちょっとこっちにいらっしゃい!」


「あたしたちが身だしなみを整えてあげる!」


案の定、性悪義姉たちの登場だ。

今日も意地悪そうな笑みを浮かべて、何を企んでいるのだろう……と思っていたら、ぽっちゃり次女が椅子を持ち出してシンデレラを座らせた。


「お、お姉様、一体なにを……?」


「いいからアンタは大人しくしてなさい」


そして、怯えた様子で椅子に座るシンデレラの後ろから、長女が楽しそうな声を上げる。


「ほーらシンデレラ、これでアンタはもう可愛いお姫様じゃなくなるわ」


次の瞬間、「ジョキンッ!」とはさみで何かを切る音が聞こえた。そして、床にばさりと黄金色の髪の毛の束が落ちる。


(シ、シンデレラの髪が……!)


なんと、長女は鋏でシンデレラの髪を切り落としてしまった。長くて綺麗だった黄金色の髪は、今は肩よりも短い。


シンデレラは頭が追いつかないのか、口元を押さえて黙ったままだ。


そんなシンデレラの様子を見た次女が、満足そうに頬を染めてきゃっきゃとはしゃぎだした。


「いやーんシンデレラ、こっちのほうが似合ってるわよ〜!」


「本当ね、私ったらヘアカットの才能があるんじゃない? もっと短くしちゃおうかしら」


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