テラーノベル
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去年よりあっという間に過ぎた夏休みを惜しみながら俺たちの気持ちは修学旅行へと盛り上がっていた。
「沖縄かぁ···楽しみすぎる」
パンフレットを眺めながら若井がわくわくしている。
沖縄はまだ海にも入れるし、若井と一緒に行動出来て部屋まで4人部屋だけど一緒、ということもあって俺もめちゃくちゃ楽しみだった。
「忙しかった夏休みの分取り戻せるくらい楽しもうっと」
そして、そう宣言した俺と完全に同意してくれた若井は気付けばまだまだ夏を感じる沖縄の空の下で海に観光にはしゃぎまわっていた。
「沖縄最高〜!お土産いっぱい買っちゃった」
夜、ホテルの部屋でまだ明日もあるのに若井はたくさん買ったお土産をスーツケースに詰め込んでいる。
「食べ物多すぎるよ、ぎゅうぎゅうだし! 」
「入らなくなったら元貴のに入れてもらおうと思って」
ひひっと悪びれず笑う若井に仕方ないなぁと返してそろそろ寝る?と聞くと若井が部屋を見回した。
「なぁ元貴、4人部屋なのにどうして今、俺たち2人だけなんだと思う?」
「···それ、本気で言ってる?2人とも彼女のところに行くって言ってた」
「マジで?!」
沖縄での修学旅行の夜、高校生ならそんなこともちょっとくらい仕方ないんじゃないんだろうか。
おかげでラッキーなことに俺は若井と2人きりなのでむしろ感謝している。
「じゃ、朝まで俺たち2人きりってことか」
「···えっ」
若井がそっと俺に近づく。
なに、なんでそんな顔で俺を見つめるの?
心臓が煩い。
目をぎゅっと瞑ったその時···。
「一緒に寝よう?」
「んぇっ」
思わずヘンな声が出た。
若井、どうしちゃったの?
「な、な、なんでっ···」
「1人だと寝れないだろ?だって元貴自分のベッドと枕がないとだめじゃん」
そう言って若井のベッドに俺の分の枕を移動させてポンポンと叩く。
···思わずヘンなことを期待しちゃったのが恥ずかしい。
「そうだけど···狭いし、悪いよ」
そう言ったものの、若井の言う通りで俺は自分のベッドや枕でないとどこか落ち着かない、だから若井に泊まりに来てもらうことが多いわけで···けど若井と一緒だとよく眠れるといつか言ったことを覚えてくれてたんだろう。
「眠れないと明日キツイよ、なにいまさら遠慮なんかしてんの」
若井がベッドに入り端にずれて俺の入る場所を空けてくれる。
遠慮しながらもそこに入り横になると子供にするみたいにそっと布団が掛けられ頭を撫でられる。
「子供じゃ、ないんだけど」
恥ずかしいのと嬉しいのがバレないようにそう言うと若井が笑う。
「子供扱いじゃないよ」
じゃあこれはナニ扱いなの?
友達?若井は仲の良い友達なら誰でもこうしてあげるんだろうか。
それとも俺がちょっとでも若井の特別だから?
···もしそうならすごく嬉しい。
2人で入るベッドはふかふかで昼間たくさん遊んで疲れた俺たちに心地よくすぐに眠りに誘ってくれる。
「···もときだけだから···」
小さく聞こえた声の方を見るともう若井はすやすやと眠りについている。
好き、大好き。
俺のことを分かってくれてて気遣ってくれて優しくしてくれて、大事にしてくれる若井のことが大好き。
そっと腕を伸ばして温かい身体を抱きしめる。同じシャンプーの匂いがして、それにも幸せを感じる。
ちょっとでも俺の好きが若井に移りますように。
もう一度大きく、くん、と若井の匂いを嗅いで俺も隣で眠りについた。
若井を離さないように抱き締めながら。
コメント
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ナニ扱いと来たか。伝わらなさがもどかしい。