昔、友人から勧められた本に書いてあった。
「人を殺すとは、どこからが人を殺したことになるのだろうか」
…これを勧めてきた友人の頭のネジはきっと外れているだろう。
ただ、この一文だけ、何故か頭に残るのだ。
簡単なこと、人の息の根を止めればそれは「人を殺した」と言えるだろう。
私はこの本を友人に返した。
その三日後、友人は死んだ。
近くのビルからの転落死、遺書があったから多分自殺。
遺書の内容は要約すると
「私は人を殺す。だから、私が死んでも何も言わないでくれ」
それだけだった。
あいつが人を殺すとは思えなかったし、友人の家の付近でも殺人事件なんて起きやしなかった。
私は、何故あいつか死んだのかが気になった。
あの本のせいかもしれない、そう思い私は友人宅に行き本だけ貰って家を後にした。
…なんとなく、あいつが死んだ理由がわかった気がした。
本の内容はこうだった。
人を殺す。と聞いてみなが思い浮かべるのはきっと「銃で人を撃つ」や「ナイフで人を刺す」などだろう。
だが、考えて見てほしい、「人が死ぬ」とは色々な状況が考えられる。
例えば病死、病死は誰のせいで死ぬのだろうか、簡単な話、誰のせいでもない、病原菌や不治の病なら誰も悪くは無いだろう。ただ、この病死でも人は死んでいる。この時人を殺したのは「病原菌」と言えるだろう。
では、自殺は?自殺はどうだろうか、自殺は誰が人を殺したのだろうか、答えは「自分」だ、
自ら飛び降り、首を吊り、溺れ、死んだとて、自分を殺したのは間違いなく自分だ、でなければ、自らを死に追いやるなんてしないだろう。
世の中、誰かが死ぬのことは結局誰かが殺しているからだろう。少なくとも私は、そう思う。
(中略)
ただ、ここまで言っておいてだが、一つだけ、誰も殺さず人が死ぬことがある。
それは「寿命」だ、寿命は誰も伸ばせない、止められない、寿命で死ぬのは別に自殺な訳では無い。誰も殺していないのに、死ぬのだ。
だから私は誰にも殺されず、誰も殺したくない、寿命で、死にたい。
そんな本だった。
なんとなく、言いたいことは分かる。「世の中のほぼ全ての死は、誰かが殺しているからだ」とでも言いたいのだろう。
あいつはきっと、この本の内容に感化されすぎたのかもしれない、あいつは自殺とか興味なさそうだったし。
そんな私も、もう少しで人を1人殺す。
ただ安心して欲しい。私が殺すのは、1人だけ、これで終わりだ。
※この物語はフィクションです。実在の団体、人物などとは一切関係ありません。※
コメント
5件
いや、なんか…こう……めっちゃ好き(語彙力低下) 感想が作文みたいなんだけど、文章だけでしかも短いのに満足感がすごい
意味深な感じがあるなぁ... こういうの好き
小話 寝る前くらいに思いついたので馬鹿みたいに設定が固まってないです。文章力なくてごめんなさい。