テラーノベル
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「……ふふ。全く、童殿は。朱雀様が目をかけられる理由が、少し分かった気がします。……分かりました。その無茶な賭け、私が乗らせていただきましょう」
そう言って顎を引いた燕花だが、その切れ長の瞳が急に真剣な色を帯びる。
「……ただし、囮役は多大な危険を伴います。朱雀様には絶対に内密に進めなければなりませんが、よろしいですね?」
「あぁ。あいつに知られたら、またややこしいことになるからな。からかわれて邪魔されるのがオチだ」
昨夜のあの甘い言葉や、首筋に残る熱を思い出し、煌は少し顔をそむけて吐き捨てた。
そう、あの神様を巻き込んだら、作戦以前に自分の心臓と理性がもたない。
「何が、ややこしい事になると?」
「!?」
突如、部屋のどこからでもなく、低く深く、鼓膜を心地よく揺らすような美声が響いた。
直後、煌の首筋の「痕」が、まるで主の気配に呼応したかのようにドクンと熱くなる。
「す、朱雀様……!」
燕花が瞬時にいつもの澄ました顔に戻り、深々と一礼する。
見れば、部屋の入り口にいつの間にか、豪奢な衣をだらしなく着崩した南の神――朱雀が佇んでいた。
陽光を浴びてきらめく、燃えるような緋色の髪。そして、すべてを見透かすような黄金の双眸が、いたずらっぽく細められる。
「わしに隠れて、二人して何やら楽しそうな謀をしておる。しかも、わしを仲間外れにして『ややこしい』とは。……冷たいではないか、煌」
朱雀は音もなく煌の背後に音もなく歩み寄ると、その長い指先で、煌の肩を後ろからそっとなぞった。
「っ~~~! どこから聞いてやがった、クソジジイ!」
昨夜のフラッシュバックと、今まさに鼻腔をくすぐる濃厚な「沈香の香り」に、煌の脳内は一瞬で大パニックに陥った。顔が沸騰しそうなほど真っ赤になるのを隠すように、大声で怒鳴り散らしながら朱雀から飛び退く。
完璧な隠密である燕花にさえ気配を悟らせずに現れたこの神様は、煌の過剰な反応が楽しくて仕方がないといった様子で、くつくつと喉を鳴らして笑った。
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コメント
1件
うわ、朱雀さんいつの間に……!? 完全に盗み聞きされてて笑ったけど、煌がパニックになるのも分かるよ、あの“痕”まで反応しちゃうのずるいなあ(笑)。燕花さんが真剣に賭けに乗ってくれたところに、あの神様が割り込んでくるテンポが本当に鮮やかで、次の展開が気になって仕方ないです。