救世主
やっと1週間が経ち木兎さんたち2年は無事帰ってきた。
1週間ぶりに恋人である木兎さんと昼飯を食べていた。
付き合う前も含めほぼ毎日一緒に食べていたから気づかなかったが木兎さんと食べる昼飯は最高に美味しかった。
ピコンッ… スマホからメールの受信音が鳴り響く。嫌な予感がする。
確認すると「北校舎1階の男子トイレで待ってる。」予感は的中してしまった。
送り主はもちろん先輩だった。
木兎さんには「委員会ので集まらないといけないらしくて…」と言い北校舎へ向かった。
北校舎1階の男子トイレは人が少ない。
なぜなら隣の校舎は去年建て替えられたばかりで綺麗だからそう遠くないためそっちに行く生徒が多いのだろう。
立て付けの悪い戸を開けて中に入ると先輩が待っていた。
「おっせーな、走ってこいよ」
「すみません。屋上で飯食ってたんで」
明らかに不機嫌な先輩を刺激しないように謝罪する。
「そっか。お前はサンドバッグなんだからさっさと来いよ。まぁ次から気をつけてくれればいいから。」
先輩は笑顔でそう言い俺を殴った。
「…し …かあし」
「赤葦!大丈夫か!?」
ここは…あぁ俺殴られて気絶してたのか何発殴られたんだろうか。5発目辺りから記憶が曖昧だ。
「大丈夫です。木葉さん。」
心配そうに覗き込む木葉さんにそう告げたが正直自力で立ち上がれそうにない…
「お前ッ絶対大丈夫じゃないだろ!」
「それより木葉さんはなぜここに?」
「ここのトイレ窓ガラス透明だから西校舎の廊下から見えるんだよ」
あぁ確かに気にしてなかったが言われてみると見えるかもしれない。
それもあって人が来ないのか。
「たまたま歩いてたら赤葦が殴られてるの見えて 急いできたんだ。」
(木葉 回想)
「先輩!?何やってるんすか!」
俺は勢いよく戸を開けて入った。
「…2年のやつだっけ なんの用?」
先輩は一瞬焦ったような顔をしたがすぐに笑顔になる。
っていうか俺の名前しらないのかよ!
「赤葦に何してるんですか!」
「何 お前、コイツの味方なの?あぁ、赤葦クン木兎だけじゃなくて色んな男に手出してたんだ~」
赤葦の胸ぐらを掴んでいた手を離し俺の方に近づいてきた。
「なんの話…」
そのまま俺を軽く突き飛ばし先輩は男子トイレから出ていった。
「っていうかなんで!いつから!」
「木葉さん落ち着いてください。」
「お前は落ち着きすぎなんだよ!!」
少し躊躇ったが俺一人でこの状況を抱え込む余裕はなかったので全てを木葉さんに話すことにした。
木兎さんには付き合ってることは誰にも言うなって言っておきながら俺から木葉さんに話すのは少し心が痛むが緊急事態だ。仕方ない、今度謝ろう。
「なるほど…状況はわかったけど情報量多すぎて理解が追いつかないわ」
「すみません」
木葉さんは木兎さんとのことについて特に驚く様子もなく状況を整理していた。
「えっと、つまりお前と木兎が付き合ってるのがバレてそれをネタにサンドバッグにされてるってこと…?」「その通りです。」
「まじかよ…」
やはり男同士で気持ち悪いと思われたのだろうか…
「あの、木兎さんは関係ないので全部俺が悪いんです。気持ち悪いのは俺だけで木兎さんは…!」
「お前何言ってんの?」
木葉さんはなぜこのタイミングで驚いた顔をしているのだろう。
「だッだって、男同士だって引きませんか?」
「いやまぁちょっとは驚くけどそこは個人の自由じゃん」
それに…と木葉さんは続けた
「お前だけってことないだろ。お前といる時の木兎の様子見てりゃわかるよ。」
自分たち以外に初めて2人の関係を認めてもらえたことの嬉しさで俺は気づけば泣いていた。
「大丈夫、大丈夫!この俺、木葉先輩が何とかしてやるからな!泣きやめって!」
木葉さんは俺が落ち着くまで待ってくれてその後怪我の手当をしてくれた。
昼放課の終わりを告げるチャイムがなってしまったので「作戦会議はまた後で!」と言い木葉さんは自分の教室へ帰って行った。
……To be continued