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そんなある日、弟が生まれた。
俺が生まれた時と同じ、辺り一面白銀の雪に覆われた世界で、そいつは生まれた。
「お、生まれたのか」
兄さんは嬉しそうに、愉しそうに笑っている。
俺が生まれた時とは全く違った。
「みたいだな。初めての弟……」
白銀の雪の上に座り込んでいる弟を見下げると、俺の口から声が漏れ出た。
「俺は炎主帝。お前の兄だ。兄さんと呼んでくれ。俺の主は、此処ロシア帝国の化身だ。よろしくな」
ニコニコと嬉しそうに笑いながら兄さんは簡単な自己紹介をする。
「俺は主炎。お前の兄だ。俺は、ロシア帝国の次の国、ソビエト社会主義共和国連邦の化身……ソ連様に仕えるドールだ」
俺は今、上手く笑えているだろうか。
そんな事を考えながら口元に手を当てると、微かにだが、確かに俺は笑っていた。
兄さんは弟の頭をクシャクシャにしながら撫でている。
「兄さん、兄貴、よろしく!」
弟は、兄さんに負けず劣らずの、眩しい程の満面の笑みを見せた。
「お前の名前は?」
兄さんが、優しくも不器用さの感じれる声で尋ねる。
「俺は、炎露だ。その筈」
少し不安になったのか、弟は、炎露は苦笑した。
こいつは、俺と同じだ。
昔の俺と全く同じ事を言っている。
「ハッハッなんだよその筈ってはっきりしろよな」
そんな事を考えていると、不意に笑みが漏れ出て、気が付けば腹を抱えて笑っていた。
俺は、感情を抑え込む事にこの時初めて、一切の後悔をしなかった。
兄さんが目を丸くして驚いていると思えば、少し嬉しそうに頬を緩めた。
兄さんと炎露は愉しそうに、しみじみとした風に、嬉しそうにしていた。
あぁ、この時間が愛おしいな。