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「じゃあ一番手、誰行く?」
会議室という名に相応しい形で座る上層部5人全員。
お誕生日席には総統ならぬ青色が某アニメの父親のように手を組みながら運営全員の顔を見渡す。
黄色い彼が手を挙げる。
「じゃんけんで決めようぜ」
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「やっぱこういうのって提案した人が負けるのが定番だよね〜」
紫色の彼がニコニコと笑顔を浮かべながらマイクを渡す。
それに賛同するように赤色と緑色の彼が首を縦に振り、泣く演技をする黄色い彼。
というのも、”過去の話をするのであれば[ら民限定ラジオ]で急遽配信をしようじゃないか”という紫色からの提案で公開処刑が始まったのである。
「ちなみに同接1000人ね」
「「すっっっっっくな!」w」
画面を見ながら作業をしている紫色の一言に、赤色と黄色の声が重なる。
午前1時弱。
時間も時間なようで、様子を見ていた青色は大きなあくびを零す。
それに気がついた黄色は「ったく、」と、心做しかマイクに口を近づけた。
「これは俺がまだ若かった頃の話。」
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天界の後宮水路。いつも通り煙草を吸っていた彼は同じ時間帯に吸いに来る同僚を待っていた。
天界には天界のルールが存在し、”悪”が付くモノ全てを禁じられている。
黄色の彼は、業務時間中サボっていた時に出逢った男に信頼を預け、他の同僚の悪口、自らの愚行の数々を打ち明けてみせたのだった。
真面目で気のいい奴だと一目置いていた男が、今日はいつもの時間にやって来ない。
思い返してみれば自分のことばかりで、ここへ来る彼のことは何も知らない。
どこの部署に配属しているのか、どんな仕事を担当しているのか、どんな仲間と普段過ごしているのか、なんて聞いては重いだろうかと葛藤したことばかりが頭に浮かんでくる。
水の音以外に、大勢の足音。
「お」
やっと来たかと声を出そうとした瞬間、視線を向けた方には直属の上司が立っていた。
黄色い彼の口から「え」と声が漏れ、水路に響き渡る。
「お前を天界から通報する」
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上位のモノが集う”天使処籍道会”。
格上のものが罪人を中心に、ドーム状に見下ろす形になっている。
当時、下界に存在していた”コンサートホール”を凝縮した円形だと言えば想像がつくだろうか。
黄色い彼が手錠を繋がれた状態で入場する。
『情報処理部担当、天使”ハルパス”申告、”シーレ”の天使処籍道会を開催する』
この天使処籍道会では、申告者が全ての進行権を得ることが出来る。
ただ進行役が申告側ではないことだけが、変貌した彼には気に食わなかったらしい。
『彼は他の同僚の悪口を言っていました』
淡々と話す彼。
その沈んだ瞳の中心には、”シーレ”の姿があった。
『彼は禁じられる”薬物”を吸っていました』
あながち間違えではない。
『彼は私に暴力を振るいました』
間違っている。
『彼は__』
そこからは嘘の供述が飛び交っていた。
”暴言を吐かれた”や、”同僚をいじめているところを見た”など。
黄色い彼は俯くばかり。
『”シーレ”、貴方は本当にこれらの愚行を行ったのですか?』
違う。
彼にとっての愚行は、仕事をサボる、煙草を吸う程度のものだった。
けれど__
「…先程の供述に間違いはありません」
彼はすべてを肯定した。
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雨降る湿った草原に足音が響く。
本来なら気持ちのいい音を鳴らすであろうそれは、空気中に放り出される前に雨の音に飲み込まれていってしまう。
力のない、重く、沈んだ足音。
白く綺麗な羽は酷く汚れ、醜い姿になった。
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「そして、下界に放り出された彼は宛もなく彷徨い、やがて1本の大きな桜の木の下で■人鬼と化したらっだぁに出逢いましたとさ。めでたしめでたし」
「全然めでたくねぇ!w」
赤色が放つ言葉に、紫、緑が静かに笑う。
青色が「は〜い」と手を挙げると、黄色は準備ができていたかのように「どうぞ?」と当てた。
「しーら?しーれ?って何?」
質問する青色に、赤、紫、緑が「それ俺も思ってた」とでも言うように耳を澄ませる。
想定していた質問とは違ったのか、答えを用意していなかった黄色は「う〜ん…」と少しの間、唸りを上げながら天井を見ていた。
「天界では下界とは違って”固有名”っていうのが無いから…あだ名?的な感じかな」
「へぇ〜」
納得したのかしていないのかよく分からない返事をする青色。
質問が終了すると同時に、今度は紫色が手を挙げる。
「はいコンちゃんどうぞ」
「実質、きょーさんは堕天使になったってこと?」
突然の刺し言葉に「うぐっ」と撃たれる仕草をする黄色。
一方、純粋無垢な瞳をした紫色は「ありゃ?」とその仕草の意味が上手く理解出来ていないらしい。
他は笑っていた。
「まぁ…うん、wその解釈で合ってるよ、w」
ぎこちなく答える彼。
満足したのか「あざした〜」と陽気な声で礼を言う紫色に「コンちゃんやるねぇ」と青色が褒め言葉を贈る。
「さて、次は誰が処刑される?」
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コメント
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きょーさんのあだ名「シーレ」って調べてみたらなんか堕天使的な意味出てきた、(特に深い意図なかったらすみません💦)。次は誰になるのかな、らっだぁおはやっぱ1番最後にちゃんと言うのかな?、次も楽しみにしています!毎回のりしおさんの語彙力には尊敬しかありません(´・ω・`)