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「ここからあっちに、飛ばすだけのはずなんですがねぇ。上手くいかねぇもんで」
このレモンドの言い方だと、空間を繋いだのではなくて、向こうの空間に飛ばすようなイメージで作ったのだろう。
なら、やっぱり転移のイメージとは全然違う。
飛ばすのではなくて、繋がったからそこに入るとか行くとか、そういうものだから。
「……ごめんなさい。分からないわ」
仮にヒントが分かったとしても、教えられない。
今はこんなに大がかりな装置が必要だけど、もしも転移を自在に扱えるようになったら……。
転移で空間を繋いで、街に爆弾を空から落とす。なんてことが出来てしまうから。
「そうですか……。でもまぁ、気長に挑戦し続けますよ! こんなとこまで足運んでもらったってのに、すんませんです」
戦争に使えるものを、人に作らせる訳にはいかない。
レモンドには悪いけれど、何も教えない方がいいと思ったから。
「……お姉様。やっぱり尾行されています」
「え?」
シェナが睨みつける方を見上げると、横手の空に、あの球体ドローンが遠巻きに滞空していた。
「……レモンドさん。あれは物覚えが悪いんでしょうか」
私たちが工場に入った後、出てくるのを見逃しにくいように、ああやって遠くに居るんだ。
「ありゃあ……ほんと、珍しいこともあるもんだ」
彼は本当に、何も知らないらしい。
でも、やっぱり何か、面倒なことになりそうな予感がする。
「私、そろそろ、帰りたいかなぁ」
「あ、や、でも。他の連中も聖女様に会いたがってるんで、もうちょっとだけ町を回って……」
この人は、悪気なく人と繋げようとするきらいがある。
彼は気さくだし、きっと他の人もいい人たちだろうし、単純に私に会いたいと思ってくれてるだけなのは分かるんだけど。
「うん、でも……。アレが何か、不気味で」
会うなら、王都で会えばいい。
「そうですか……。あまり、お引き留めしてはならんと、ウレインにも言われとりますから……わかりました」
分かってくれて良かった。
本当なら、このまま転移して帰りたいところだけど。
「それじゃ、また車でお送り致しますんで。戻りましょう」
「うん。ごめんなさい」
そして、また工場の中を通って車の方に出てくると――。
何とも物々しい感じの機械たちが、工場の出入り口に並んでいた。
ひとつは、リムジンタイプの飛べる車。
そしてその他は、球体ドローン数体と、円盤型のひときわ大きなドローンが二体、浮かんでいる。
「何ですか、あれ」
「さ、さぁ……。車は、会長のもんですけども。えらく物騒な」
物騒だということは、あの円盤の大きなドローンは、攻撃型だろう。
――絶対、私を狙ってるんじゃん。
「はぁ。シェナ、攻撃準備」
「はい。すでに」
私は不意打ちを避けるために、自分とシェナに結界を張っておいた。
どちらにしても、こっちから攻撃を仕掛けるわけにはいかないのだし。
「ちょ、ちょちょちょまっ! 待った! なんだ会長! なんで聖女様にこんな物騒なもん向けんだ!」