これは空想のお友達が忘れられちゃうまでの
ただの日記。
__ザァーッ
あの日は空気がひんやりしていて、
灰色のわたにおおわれたそらがないていた。
「__ぐすっ…、…」
そして、きみもないていた。
公園の芝生にそらときみの涙が零れ落ちたと同時に、
おれの足はきみの前へと進んでいた。
「だいじょうぶ?」
「…、ダレ…?」
「おれはらっだぁだよ。きみは?」
「…ミド、リ…ミドリイロ。」
きみの瞳はとてもキレイで、まるで小さな水たまりみたいに潤んでいた。
なぜそんなにもキレイなのかはおれにも分からないけど、
きっときみのこころがキレイだから瞳もキレイなんだと思えた。
「……ネェ、ラダオくん」
「…オレ…ヒトリボッチナノ」
「ダカラ、ソノ……。」
そのさきのコトバを言うのがこわいのか、
みどりくんはモゴモゴと口ごもってしまった。
…緊張をすこしでも解きほぐしてあげられたらいいな、
そう思って、おれは微笑みながら口を開いた。
「__ねぇみどり、おれと友達になろうよ。」
「………イイノ、?」
「もちろぉ〜ん!」
ほんとはきづいてた。
透き通るような白い肌、
あめに打たれ、しっとりと濡れている茶色の髪の毛、
そしてなにより、吸い込まれるように綺麗な瞳。
全てがおれが思う“理想の友達”そのものだったから。
……だからきっと、
きっときみはおれがつくりだした存在なんだろうって。
でもおれはしらないフリをした。
気がついちゃったら、きみと会えなくなる気がしたから。
__少しでも長く、きみといっしょにいたいから。
「帰ろっか、みどり。」
「ア、ウン…!」
それからおれの日常はぐるりと変わった。
どんな時もおれらは一緒にいて、
苦しい気持ちも怖い気持ちも、
全部全部分け合って。
次第におれの笑顔は増えていって、
きみの笑顔もふわりと咲いた。
___おれらが一緒なら、どんなことがあっても乗り越えられる気がした。
おれは本気でそう思って、
そう信じて疑わなかった。
「おれら、一緒にいればサイキョーだね。」
そんな小っ恥ずかしいセリフを口にすると、
きみはクスクスと笑った。
そして、「ソウダネ」と小声で答えた。
おれらはよく公園に行った。
あの日とは違って公園はいつも晴れていて、
おれらのような家だけじゃ遊び足りない子供にはうってつけだ。
「ネェラダオクン、次ハ滑リ台滑ロ」
「え、またぁ〜…?笑」
おれらは決まって5時きっかり__夕方のチャイムが鳴るまで遊んだ。
滑り台、ブランコ、ジャングルジム、鉄棒。
砂場でお城も作ったり。
大人がこの遊びの内容をみたら、
質素でつまらない物だと思うかもしれない。
けどおれらには十分すぎるほど、
この遊びは楽しくって。
「…ア、5時ダ」
「え、もう…?」
楽しい時間はあっという間に過ぎていって、
いつも、気がつけば帰る時間になっていた。
「__ン…数学ナンモ分カラン、、コノママダト赤点回避デキネェ…!!」
「ふは笑…そこはねぇ〜、…俺にも分からん。」
「………ハァ???」
___楽しい時間はあっという間に過ぎていくのだろう、
俺らはあっという間に立派な学生になった。
今ではもうあの公園も懐かしいものだ…。
そうやって昔の思い出の中に浸っていると、
ふいに誰もいない教室のドアが開く。
「…ア、先生」
『はぁ…まだ残ってたのか。』
「仕方ないでしょ〜、このままだと俺ら赤点回避できないんですから!」
先生は呆れた顔でため息をついたあと、
カラカラと音を立てながらカーテンを閉めた。
すると一気に教室の中は薄暗くなって、
ほんの少しだけ心細くなった。
「…みどり、?」
「ドシタノ?」
「……ちょっと暗いから、見えなくて」
「ソッカ。」
俺らが話す様子を見て、
先生はポツリと呟いた。
『………お前は1人遊びが上手なんだな』
その言葉に少し悲しくなりながらも、
先生が去ってからみどりに話しかける。
「……なんにも俺らのこと分かってないんだね。」
「仕方ナイヨ、分カリッコナイシ。」
そう言ってみどりは寂しげに笑った。
そんな顔は見たくなくて、
俺は素っ気なく目を逸らしてしまった。
___そして俺らはあまり話さなくなった。
いや、俺が話さなくなった。
みどりの寂しそうな笑顔を見たくなくて、
目を逸らして、逸らし続けた。
なんでこんなことしちゃうんだろうなぁ、
とため息混じりに呟いても、反応してくれるきみはいない
「……みどり」
久しぶりに名前を呼んだ。
けど、けどもう、
わすれてしまっていた
__いいや、忘れられてしまっていた。
作り物なのは俺だった。
でも、みどりは笑っていたんだ。
“俺”はいつかいなくなるって分かっていても、
最後の最後まで俺に心配かけないように。
「___俺は……」
『イマジナリーフレンドだったんだ。』
end.
コメント
3件
はゎ…好きです……イマジナリーフレンドはらっだぁさんの方だったんですねっ………