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動画◆◆◆動画
新郎新婦の後ろの壁にかかった大画面スクリーンには、リビングで光一と美香が激しくキスをしているシーンが流されていく。
「ぴちゃ、くちゃ、クチュ、チュウ」
何度も顔を傾けて、舌を絡めあい淫らな音を拾っていく。
光一「美香の肌はまるで赤ちゃんみたいだな」
美香「美香が、赤ちゃんかどうか、お風呂で確認してみたら?」
光一「風呂で?今、風呂を入れてくるからな。待ってろよ」
光一は美香を残して、風呂場へ消えた。
美香「本当にキモい男。あの女の夫じゃなければ、触られたくもない」
美香は汚いものを拭うように、唇を袖で拭いている。
動画◆◆◆動画
「何だよ、これ。編集だろ。何で美香が、こんなこと、絶対に嘘だ」
光一は信じられないものでも見たと言うように、何度も目を拭っている。
「私も教えて欲しいんだけど、光一はキモくて、触られたくないのよね?誰も頼んでないのに、何で姉の夫と浮気なんてしたのよ」
清香が、友美と一緒にこの動画を見た時から、ずっと疑問に思っていたことを口にした。
「アハハハハっ、はは。あんたが傷付いたなら、まあいいや」
美香の目は花嫁とは思えないほど、すさんで見える。今にも何かしでかしそうな危険なものをはらんでいた。
「何言って」
ここまで、美香に恨まれる覚えはない。むしろ、旦那を奪われた清香こそ美香を恨んで当然ではないか。
「言っとくけど、私はあんたに恨まれる覚えなんてない。いつも人の物を欲しがって、泣き真似して奪ったのは、あんたでしょ」
「そう、優しくて、何でも出来て、あたしの面倒も見て、そんなあんたが、大嫌いだったのよ」
美香は長年抱えてきた恨みをやっと口に出来たと言わんばかりに、腹の内をぶちまけている。
「本気で言ってるの?」
「ああ、あんたは知らないのか。あたしが本当の妹じゃないって」
「何、バカなこと言って」
「何でお母さんがあたしに優しくて、お姉ちゃんに厳しかったかって?あたしが他人だからに決まってるでしょ」
バシン
「いい加減にしなさい。お母さんは、私よりも何倍もあんたを大切にしてきたじゃない」
清香が、美香の頬を手の平で叩く。
「他人だからよ」
美香は、ウエディングドレスの広がるフリル部分を両手で握りしめて叫んだ。
一息ついたように息を吹き出し、ヨロヨロと招待客のテーブルに歩いていく。
「あんたは私の妹よ」
清香は、美香を目で追う。
「あんたのそう言うところが、たまらなく嫌いなのよ」
テーブルの上のナイフをつかみ取り、美香は清香めがけてウエディングドレス姿で走ってくる。
グサリ
ナイフが肉に刺さる感触が、美香の手に伝わってくる。
ガクン
膝をついたのは、清香ではなくて、新郎の高塚だった。
「どうして高塚さんが、この女をかばうのよ」
美香はその場に座り込み手にした血まみれのナイフを床に置いて、泣き叫ぶ。
「高塚さん、高塚さん、しっかりして」
清香は、高塚に抱きついて揺すり起こそうとする。高塚の脇腹からは血が吹き出ている。
「清香さんは無事ですよね」
高塚の口からは、清香の無事を確認する言葉だけがこぼれた。
「いやぁー高塚さん」
清香は高塚にしがみつき、嗚咽をもらす。
「あんた、高塚を動かすな。もしもし、救急車をお願いします。友人が刺されました。住所は┅┅」
高塚の友人である小野が、素早く救急車を手配している。
ガシャン、ガシャ
清香が一気にテーブルクロスを引っ張ると、上に乗っていた物が音を立てて、床に落ちる。
テーブルクロスにナイフを突き刺して、その穴に指を入れて引き裂いていく。
「ぐすん、高塚さん、死なないで」
清香は何枚もテーブルクロスを引き裂くと、今度はその生地を高塚の腹にキツく巻き付けていく。
その時、まさにこのタイミングに合わせたように動画が流れる。
動画◆◆◆動画
美香「高塚さんは高塚物産の三代目でお金持ちなんだよ。もしも死んだら、財産は美香とお義兄さん2人の物だよ」
光一「お前、まさか、結婚してすぐに殺す気じゃないよな」
美香「ちょっと声が大きい」
光一と美香は辺りを見回して、誰もいないことを確認している。
その後は2人の長いキスシーンが映し出される。
動画◆◆◆動画
動画を見た母は、口を押さえて涙を拭くのも忘れて、その場に座り込んでしまった。
「なんだ、これは?夢でも見てるのか」
その時、急に椅子から立ち上がった父親が、首の後ろを押さえるようにして倒れてしまう。
「きゃあ、あなた」
しゃがみこんでいた母が、父が倒れて大慌てで駆け寄った。
ピーポーピーポー、式場に使った小野の別宅前に救急車が停まる音が聞こえた。数分もしない内に救急隊員が担架を待って現れる。
「救急車が来たわ、この人と、そこに倒れている私の父も一緒に乗せてください」
清香も高塚にしがみつきながら、高塚と父親を運ぶように、救急隊員に声をかける。
「分かりました。症状を確認します」
「清香さん、お父さんを┅┅担架に乗せて」
高塚は、自分がナイフで刺されて呼んだ救急車の担架に、気を失っている清香の父を乗せていけと言う。
「では、意識を失われている男性を担架で運びます。ナイフで刺された方も、ナイフは抜かずにそのままで救急車に乗ってください」