[若井の推測]
若井side
涼架が、コンロの火を怖がって縮こまっていた
俺は、涼架の背中を優しく撫でながら、彼の様子を注意深く観察した。
心臓が早鐘をうっているかのように、涼架の呼吸は浅く速い。
俺は、その光景を見てふと思い出した。
涼架が初めて家にやってきたとき、彼は身寄りがいないこと、どこからきたのか覚えていないことを。
その時は、涼架を助けることに精一杯で深くは考えていなかった。
しかし、今日の涼架の反応はただの「火が苦手」というレベルではなかった。
まるで、心に深い傷を負っているかのように体が拒絶している。
「…もしかして、昔、火事に遭ったことあんのかな…」
若井は、涼架に聞こえないように、小さい声で呟いた。
記憶を失うほどの強烈な出来事。
それが火に関するものだったとしたら。
涼架の今の怯えようにも納得がいった。
俺は、涼架の背中を撫でる手を止め、そっと涼架の顔を覗き込んだ。
「なぁ、もし嫌じゃなかったらでいいんだけどさ…」
俺は、言葉を選ぶようにゆっくりと続けた。
「…なんか、昔あったのかな?」
涼架は、俺の言葉にビクッと体を震わせた。
若井は、涼架の秘密に迫るような鋭い観察力を持っている。
人間になったばかりの涼架には、その質問に答えるだけの心の準備ができていなかった。
涼架は、首を横に振ることでしか自分の意思を伝えられなかった。
「…ごめん。無理に聞くことじゃなかったな」
俺は、それ以上は何も聞かなかった。いや、聞けなかった。
涼架の意思を尊重するように、優しく頭を撫で続けた。
「大丈夫。俺は、お前が話せるようになるまでずっと待ってるから。…もし、俺に話したくなったら、いつでも言ってくれ」
涼架side
若井の温かい言葉に、僕は安心した。
それと同時に、少しだけ罪悪感を感じた。
自分は、若井にたくさんの嘘をついている。
若井が、自分のことを本当に心配してくれているのに、その気持ちに応えられていない。
しかし、若井の優しい手が僕の頭を撫でる。
僕は、この暖かさを失いたくないと強く願った
いつか、自分の秘密を全て若井に話せる日が来るのだろうか。
僕は、再び若井の顔を見た。
彼の瞳は、火を恐れる僕の恐怖を全て受け止めてくれるような深い優しさに満ちていた。
次回予告
[青いバンダナ]
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コメント
2件
火のこと話してもその時は猫だからなぁ……。
青いバンダナ!ついにきた!