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私と死神

1 - 第1話 出会い

2023年09月09日

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【1話 出会い】

「ほらほら、今日は?ヤラないの?」

またいつもの死神の声がする。変に明るくどこか懐かしさを覚える声。幼い子供のような声。聞いていて心地よいとさえ思う、鈴を転がしたような声。

そして、私の死を願う声。

何度目かわからなくなるほど、聞いたその質問に、

「ヤるよ、今日こそ。」

私も何度目かわからなくなるほど言った答えと同じ答えをする。

「あのねぇ、その答え聞き飽きたんだけど?死にたがりのイクジナシちゃん。」

この死神に始めて会ったのは私が中学一年生の頃…。


「上川小学校から来ました。梅野 あやね(うめの あやね)です。よろしくお願いします。」

私は中学受験をしてめでたく成功。家からスクールバスで一時間ほどの、ところにある進学校。私立新山中高一貫校に入学した。小学校の友達のほとんどは青山中学校という小学校から近くの公立の中学校に入学した。小学校の頃の友達が嫌いなわけではなかった。いや、好きだった。恋愛的に好きな人もいたし、仲のいい友達だっていた。でも、所詮、小学生や中学生の決定は親の決定も同じこと。私が小学五年生頃に一度口を滑らせて、言ってしまった言葉。

「中学受験してみたい。」

あんなこと言わなきゃ良かった。

そこから母は本気になった。元々私は塾に行って先生に自分から質問をする、なんてことはできる性格ではなかったため、家庭教師を雇っていた。母が中学受験をすることを家庭教師に告げ、本格的に受験勉強が始まった。辛かった。やめたくなった。そのことを母に伝えた。

「まま、あのね、中学受験、辞めたい。」

「あやね、いい?中学受験をして中高一貫校に入学すると、他の子と違って、楽に進学できるの。高校受験もないし、中学の時から勉強を頑張るから大学受験だってやりやすい。それに、あやねは他の子が高校受験の勉強を泣きながらしている時に笑っていられるの。6年間の勉強をやりなおす中学受験と、9年間の勉強をやりなおす高校受験。あやねはどっちをやりたいの?」

こんなことを言われ、私の意見は押さえ込まれた。

母は悪い人ではない。私のことを思ってくれている、考えてくれている。

それがたまに、いや、何度も何度も私にプレッシャーという名の重しになってのしかかる。

苦しい、辛い、辞めたい、ごめんなさい。そして、裏切らないようにするから、頑張るから、見捨てないで、ごめんなさい。

辞めたいけど、辞めて見捨てられるのが怖い。この二つの矛盾した感情が私を苦しめる。

なんとか受験に成功した。そして、そこで待っていたのは楽しい青春。

などではなかった。勉強漬けの毎日。それに伴い日に当たらず意に反して白くなっていく肌。嫌になってくる。家に帰るのが遅いから、一人の時間もなかなか作れない。一人で何かをするのが好きな私にとってそれが1番キツかった。

そんな中学校生活でも新しい友達ができた。

中学に入ってから最初に話しかけた友達、佐山雪子(さやま ゆきこ)。

彼女とは喧嘩もしたし大っ嫌いだと思う時もあった。絶交を考えた時だって。でも、私は親友を聞かれたらまず最初に彼女の名前を挙げるだろう。そう言えるほど、心を許せる友達いや、親友だった。

勉強は苦しい。でも、なんとかそんな友達や好きなアニメや漫画のおかげでやっていけてる。そんなギリギリの状態だった。

本当にギリギリだったんだと思う。

ある時私の精神は限界になった。アニメの影響で好きなった海外。そんな海外に絶対に行きたいという思い。あのアニメや漫画が終わるまで死ねないという思い。友達ともっと話したいという思い。そんなの全部捨ててもいいから楽になりたい。そう思った。一年生のちょうど中間あたり。勉強が辛かったのはもちろんあるがそれ以上に私を苦しめたのは他でもない。私の性格だ。いや、生き方と言ってもいいのかも知れない。私は〈敵〉を作りたくなかった。私をいじめてくる人。悪口を言う人。馬鹿にする人。私に害を与えてくる〈敵〉を絶対に作りたくなかった。

私は小学校の一、二年生のころいじめられていてその経験から絶対に敵を作らないようにした。心理学の本で読んだ【相手の好きなものより嫌いなもの、苦手なものに共感すると打ち解けやすい。それは、好きなものは変わりやすく、嫌いなもの、苦手なものは変わりにくいからである。】というのを頭に置いて、一人一人に対応を変えた。誰の悩み事にも相談にのった。嫌われないよう努めた。おかげで雪子からも、

「あやねのこと嫌いな人いなさそうだよね。悪口全然聞かないもん。」

と、言われるほどになった。もちろん私の性格、というか生き方については雪子には言っていない。

それで私は、疲れてしまったんだろう。全てがどうでも良くなった。

その時だ。

「ねぇ、それ、使わないの?」

あの変に明るくどこか懐かしさを覚える、幼い子供のようで、聞いていて心地よいとさえ思う、鈴を転がしたような声が聞こえた。

「え?誰?」

「んー、死神だよ。」

「死神?」

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