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私はメッセージで七緒の事を教会に呼び出していた。
「ごめんね、呼び出して」
「それはいいけど、それで何?」
「さっき話してたことだけどさ。私は昨日の事もあるから、七緒ちゃんの言うこと信じるよ」
「……………………」
昨日の水瀬睦月の家で見た異常な光景。
それを共有しているからこそ、互いに互いの話が通じると感じているのだ。
「だから説明して、睦月ちゃんと、遥ちゃんのこと二人に何があったのかを」
「う、うん。じゃあ」
七緒は私に、睦月と遥、そして自分の体験した出来事を話した。
七緒の話によるとこういう事らしい。
まず水瀬睦月。
彼女はおとといの夕方、部活帰りに家の近くの公園で仁美を目撃した。
仁美は睦月を見ながら、赤ちゃんあやすオモチャのガラガラ振りながら睦月を見て笑ってたとのことだ。
この辺の事は京子からも聞かされたとおり。
そしてもう一つ、手のひらに何か不思議な黒いあざが浮かんだという。
それはまるでサソリを模したハート型のあざだった。
睦月は七緒の通話に応じた時、かなり混乱した様子だったという。
だが、通話をしている最中に、手の平のアザは急に消えたという。
そのため、アザについては何かの気のせいだったのではないかという話になり、そのまま電話は終わった。
そしてその夜以降、睦月とは連絡が一切取れなくなり、昨日の家での出来事に繋がる。
次に音無遥。
七緒は睦月の家でお分かれした後、七緒は遥に呼び出されたのだ。
七緒は遥に、睦月の家の出来事を説明。
家はもぬけの殻で、家の中には血のような赤い液体がべったりと塗りたくられていたことを説明した。
遥は睦月の件を知ったことで錯乱。
遥も昨日、学校の放課後、ショッピングモールで買い物に行ったらしいのだが、
その時に女子トイレにいた時に仁美が現れ、オモチャのガラガラを振りながら笑っていたという。
そして鏡を見たら、頬のあたりにサソリを模したハート型のアザが現れたというのだ。
ただそれも睦月の時と同じく、少ししたらすぐに消えたという。
だが睦月が謎の失踪を知った遥は錯乱した。
一人になりたくないと訴える遥に気圧されるかたちで、七緒は遥を自宅に一晩だけ泊めることにしたという。
そして深夜まで二人でテレビをみながら遊んでいたのだが、
七緒がうたたねをしている間に遥が突如失踪。
七緒が自宅のマンションから出て、近くを探し回っていたとき……、
「遥がマンションの屋上から飛び降りて、私の目の前で死んだんだ……」
「――――ッ!」
私はそれを聞いて、今日も見た悪夢を思い返す。
私が体験した悪夢は、全身をバラバラにされるような痛みが走ってて、もう数分も経たずに死ぬ間際の状態。
そんな私に駆け寄って、七緒が必死に遥の名前を呼んで泣き叫ぶ姿だった。
「それで私も見たよ。死んだ遥の頬のあたりに、サソリのモチーフみたいな、ハート型の黒いアザをさ」
「遥ちゃんの事は警察に伝えたの?」
「それが、遥の死体、どこにもないんだよ」
「え?」
「睦月の時と同じだよ。私が少し目を放したら、なぜか遥の死体が消えてたんだ。ただでさえ遥が目の前で死んでパニクってたのに、私、もう意味が分からなくて……」
それで今朝、仁美に食って掛かったという事か。
「はは、なんか勢い余って蓼原につかみかかっちゃったけど、なんか私、滅茶苦茶な事ばかり言ってる気がする。私、もしかしてなにか病気なのかなぁ。昨日今日と立て続けに友達がいなくなったせいで、私、頭おかしくなってたかも……」
頭をかきながらそう自嘲する七緒だったが、反対に私は血の気がざーっと引いて、顔色は真っ青になっていた。
私は七緒の話すことを全て信じていた。
「七緒ちゃん、今すぐ何とかしないとダメだよ! このままだとあなたも同じことになっちゃう!」
「え、な、なに?」
「このままだとあなたも仁美の呪いで、もしかしたら死んじゃうかも!」
「は、はぁ? 呪い?」
「あっ――」
慌てたせいで先走ってしまった。
口がすべって「呪い」なんていう言葉を口にしてしまったことを後悔する。
七緒は不審そうな目をこちらに向ける。
「なにそれ、仁美がなにか呪いの力か何かで私を呪い殺そうとしてるとでもいうつもり? さっきは私も気が動転してて、一年の時のことで仁美に報復されてると思ったけど、さすがに呪いの人形とかで祟られてるとかは……」
「え、えっと……」
言葉に詰まってしまう。
今度は私の気が動転してしまい、なにから説明すべきか、つじつまの合う言葉が思い浮かばなくなってしまった。
動揺する私を見て、七緒は不審げな眼差しを向けてきた。
「一花、アンタなにを知ってるの? 今のメチャクチャな話を鵜呑みにしたり、呪いって言ったり――。まさかアンタ、睦月と遥があんな目に遭ったこと、何か知ってるの?」
「それは、その……」
「知ってるの!? なら言ってよ! 内容によっては私、一花が相手でも許さない!」
「………………………………」
一度落ち着いた七緒だったが、再び彼女は興奮し始めた。
でもこの様子だと、彼女は納得のいく話を聞かされるまでは引くことはないだろう。
それにまた気が変わって仁美につかみかかったりしたら、今度は本当に七緒が危ない。
そう考えて、私は私が知っていることを話すことにした。